チケット転売で逮捕? 違法となる基準から罰則、適切な対応方法とは
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令和6年12月、ミュージカルのチケットを不正に高値で転売した容疑で横浜市に住む女性2人が書類送検されたという報道がありました。ミュージカルに限らず、コンサートやライブ、スポーツ観戦の入場券など、興行主の同意なくチケット転売すると罪に問われる可能性があります。
本コラムでは、チケット不正転売禁止法の詳細をはじめ、チケット転売で問われる罪や科せられる可能性がある罰則、逮捕されるなど罪に問われうるケースや違法にならないケースの違いや判断基準について、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。


1、チケット不正転売禁止法とは
平成30年12月、チケット転売を規制する「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(通称 チケット不正転売禁止法)」が公布され、令和元年6月から施行されました。
法律名にある興行入場券とは、紙媒体のチケットだけでなく電子チケットなども指します。日本国内で開催される興行において、興行主の同意を得ずに販売価格を超える有償譲渡を行うことと、営利目的の仕入れが主に禁止されています。
違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科せられる可能性があります。
2、チケット転売で逮捕されうるケースされないケース
チケット転売といっても、たまたま行けなくなったコンサートのチケットを誰かに譲りたい場合など、悪意がないケースもあります。では、違法となり、逮捕されたり警察の取り調べの対象となったりする可能性があるのはどのようなケースでしょうか。チケット不正転売禁止法で定められた主な基準を解説します。
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(1)法規制の対象となるチケットかどうか
チケット不正転売禁止法で規制されているのは、映画や演劇、音楽、スポーツなど日本国内で催される興行の入場券(チケット)が対象とされています。列車の乗車券や限定販売されるゲーム機の整理券、もともと無料で配布されているチケットなどは対象外です。また、対象となるチケットには次のような条件が規定されています。
- 券面に興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が記載されている
- 入場者の氏名や連絡先が確認できる
- 興行の日時や場所、座席などが指定されている
ただし、対象外のチケットであっても、運営側の判断によってファンクラブ退会やコンサート会場からの退場を命じられる、転売規制法以外の法律・条令で罰せられるおそれがあるので注意が必要です。
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(2)利益を得るために転売していたかどうか
チケット不正転売禁止法における不正転売は「業としておこなう有償譲渡」を指しており、反復継続の意志をもっておこなわれる必要があります。すなわち、営利目的のチケット転売が対象です。
たとえば、次のようなケースでは営利目的であるとはみなされません。- 自身が行く予定だったコンサートに急きょ行けなくなり、販売価格で転売した
- 当選確率を上げるために家族名義で複数枚分応募し、余ったチケットを販売価格で転売した
- 販売価格に送料分などの実費の額を明示し、その価格を上乗せして転売した
反対に、次のようなケースでは営利目的とみなされるおそれが高いといえます。
- 何十枚もチケットを購入して、販売価格より明らかに高い価格で転売した
- 何種類ものチケットを同様の方法で転売した
何十枚も購入して高値で転売した者が、仮に「少しでもよい席をとりたかったからすべて自分用に購入した」と言い訳をしても、販売価格を超える値で転売している以上、営利目的とみなされる可能性があります。実際に違法であるかは、購入枚数や販売価格、転売の頻度などから総合的に判断されます。
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3、チケット転売で逮捕された事案
チケット転売行為によって逮捕されたケースを、罪名ごとに解説します。もしも逮捕され有罪となれば、チケット不正転売禁止法以外にも次のような罪に該当するおそれがあります。
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(1)迷惑行為防止条例違反のケース
平成29年5月、人気ダンスグループが出演するコンサートのチケットを転売目的で購入した男が東京都の迷惑行為防止条例違反で逮捕されました。男はインターネットの仲介サイトを利用して98枚のチケットを高額で転売、総額1000万円以上の利益を得たとされています。
また、平成30年6月には人気アイドルグループのチケットを転売したとして、埼玉県の迷惑行為防止条例違反(ダフ屋行為)の容疑で大学生が逮捕されました。コンサート入場の際に必要となる身分証を偽造し、チケットとセットで、定価の2~5倍の価格で販売していたようです。
なお、横浜市で転売行為をして条例違反となった場合、神奈川県の迷惑行為防止条例によって6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。なお常習犯の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と、さらに重い刑罰が科せられる可能性があります。 -
(2)詐欺罪のケース
平成30年1月、コンサートチケットを転売目的で購入し、転売仲介サイトに出品した運営会社と転売業者グループが京都府警に摘発されました。運営会社前社長と業者グループの男らは共謀してコンサートチケットを他人名義で購入した詐欺容疑で書類送検されています。府警の調べによれば、業者らは架空名義を用いてファンクラブに会員登録し、チケットの買い占めを続けており、約2年半で30億円を超える売り上げがあったと報道されています。
また、平成29年9月には神戸地裁において、人気ロックバンドの電子チケットを転売目的で購入して詐欺罪に問われていた男に対して、懲役2年6月、執行猶予4年の判決が言い渡されました。
さらに、令和6年には、そもそもチケット不正転売禁止法違反容疑で逮捕されていた女性2人が、アイドルグループのチケットを購入する権利を得るために100名義以上のアカウントを不正に取得していたことが発覚し、電子計算機詐欺容疑などで再逮捕されたという報道もあります。
なお、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となっており罰金刑がありません。金銭では罪を償えない重い罪であるといえるでしょう。 -
(3)古物営業法違反のケース
平成28年9月、人気アイドルグループのコンサートチケットをインターネット上で転売したとして、20代の女性が古物営業法違反の容疑で北海道警に逮捕されました。女は2年間でチケット約300枚を転売し、およそ1000万円を売り上げていたようです。
一度人の手に渡ったものは、たとえ未使用であっても古物として扱われ、営利目的の売買には古物商の許可が必要となります。古物営業法違反(無許可営業)に問われると3年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が下ります。
4、チケット転売で逮捕されたら早期に弁護士に相談を
もしチケット転売で逮捕されると、起訴・不起訴の決定までに最長で23日もの間身柄を拘束されるおそれがあります。
また、逮捕後72時間はたとえ家族であっても本人と面会できません。逮捕直後の取り調べは、精神的な負担が大きく意図せぬ発言が調書にとられかねません。また、いたずらに容疑を否認したり、反抗的な態度をとってしまうことで、長期間の拘束におよぶことも考えられ、会社や学校など日常生活への影響が大きくなる可能性もあります。
逮捕直後から面会できるのは、唯一弁護士だけです。弁護士が早期に面会することで、受け答えに対する適切なアドバイスをしたり、家族からの伝言を伝えて励ましたりすることができるでしょう。
チケット転売は、多くのアーティストから反対声明が出され、またファンからも厳しい視線を向けられており、社会的な関心が高い行為です。逮捕後の影響を少しでも軽減するためにも、速やかに弁護士に相談して適切なサポートを受けることが肝要です。もし起訴されてしまっても、弁護士に依頼することで早期身柄釈放や減刑のために積極的な弁護活動が期待できるでしょう。
5、まとめ
チケット転売は、「チケット不正転売禁止法」だけでなく、行為やその内容などにより「詐欺罪」などの罪に問われる可能性があります。より良い席で見る目的であったとしても大量のチケットを購入して低下以上の価格で転売した場合は、逮捕されてしまう可能性があり、場合によっては実名報道されてしまうこともあるでしょう。そうなれば、刑事罰に問われるだけでなく、日常にも大きな影響を残してしまいかねません。
チケットを転売したのち警察から問い合わせがきた、出頭を求められている、家族が逮捕されたなどの状況に陥っており、悩んでいるのであれば、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士がお悩みの解決に向けてスピーディーかつ真摯に対応します。
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