覚せい剤で息子が逮捕! 罰則や量刑の判断基準について横浜の弁護士が解説
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「覚せい剤所持で息子が逮捕されてしまった」
普段は覚せい剤や大麻などの薬物を使用している雰囲気がなかったにもかかわらず、ちょっとした気のゆるみから薬物に手を染めてしまうケースも少なくありません。
覚せい剤においては、使用だけではなく、所持していただけでも逮捕されます。
先日も外国籍の夫婦が横浜港に覚せい剤50kgを密輸したとして、覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されました。
覚せい剤取締法は「使用」「所持」「密輸」など、使用状況や目的により刑罰が異なります。
今回は、覚せい剤取締法の罰則や量刑の判断基準などを解説していきます。
1、覚せい剤取締法の罰則について
「覚せい剤」を所持、使用したり、輸入、輸出、製造したりすると、覚せい剤取締法違反という法律で罰則を受けることになります。
覚せい剤取締法では、使用している場合や、所持している場合などでそれぞれ罰則が異なります。
ここではケースごとに覚せい剤取締法の罰則の違いを見ていきましょう。
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(1)使用・所持していた場合
覚せい剤を売買目的ではなく自身が使用・所持していた場合には、10年以下の懲役となります(41条の2第1項、41条の3第1項1号)。
覚せい剤の使用確認については、主に「尿検査」や「頭髪検査」にて行います。
所持確認については、主に「家宅捜索」や「現行犯逮捕」が多く、覚せい剤であることを知らずに所持していた場合には、原則として覚せい剤取締法違反には問われません。 -
(2)輸入・輸出・製造していた場合
覚せい剤の輸入や輸出、製造に関しては、売買目的ではない場合、1年以上の有期懲役となっています(41条1項)。
この1年以上の有期懲役とは、1年以上20年以下であり、場合によっては使用・所持より重い罪に問われる可能性があります。 -
(3)売買目的の場合
では、覚せい剤を売買目的で扱っていた場合にはどうでしょうか。
●使用、所持
1年以上の有期懲役となり、最長で20年の懲役となります。情状により500万円以下の罰金が科せられる可能性もあります(41条の2第2項、41条の3第2項)。
●輸入・輸出・製造
無期または3年以上20年以下の懲役となります。こちらも情状により、1000万円以下の罰金が科せられる可能性があります(42条2項)。
覚せい剤取締法違反において、売買目的であるかどうかが大きなポイントです。
使用・所持している場合よりも輸出・輸入・製造など、より覚せい剤に深く関わっているとされるケースではより重い刑罰が科される傾向にあります。
2、覚せい剤取締法での量刑の判断基準
こちらでは、覚せい剤取締法における量刑の判断基準についてみていきます。
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(1)過去に薬物での逮捕歴があるか
過去に同様の罪を犯したことがあるかどうかは、量刑の判断材料のひとつです。
初犯の場合は、執行猶予がつくケースも少なくありませんが、覚せい剤で2度、3度と逮捕されてしまうと、悪質と判断されて重い刑罰が科される可能性もあります。
ちなみに、2回目以降の逮捕であったとしても、前回の逮捕から10年以上経過している、または刑を執行するにあたり猶予すべき事情がある場合には、執行猶予がつくケースもあります。 -
(2)使用頻度や使用期間
友人などから勧められて一度試してしまった場合と、毎日のように覚せい剤を使用している場合とでは、当然ですが使用頻度が異なりますので、後者の方がより重い刑罰を科される可能性があります。
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(3)再犯の可能性
覚せい剤は非常に依存度の高い薬物であり、再犯を繰り返してしまう方も少なくありません。
再犯については、刑法第56条、第57条で下記の通りに規定されています。
●刑法第56条
「懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。」
●刑法第57条
「再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。」
つまり、懲役刑に科された者が刑の執行を終えた、もしくは執行の免除を得た日から5年以内に同じ罪を犯すと、懲役の長期を2倍以下とされる可能性があるということです。 -
(4)使用目的か営利目的かどうか
営利目的かどうかの判断は、所持している覚せい剤の量や継続的な仕入れの事実、生活状況など、さまざまな証拠から判断されます。
売買目的だと疑われている場合でも、証拠がなければ売買ではなく自己使用目的で立件される可能性もあります。
3、逮捕された後の流れ
覚せい剤で逮捕されてしまった場合の流れをご紹介します。
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(1)逮捕
一般的には、覚せい剤取締法違反の疑いがある場合、即逮捕される可能性が高いです。
これは容疑者の逃走や証拠隠滅、共犯者との連絡を防ぐためです。
まず「所持」の容疑で現行犯逮捕され、その後に「使用」の容疑がかけられます。
使用しているのかどうかは「尿検査」で行われますが、使用から2週間が経過すると、陽性反応がでない可能性もあります。陽性反応が出れば、その場で逮捕となります。逮捕されると、警察で最大48時間身柄の拘束を受けることになります。 -
(2)送致
逮捕後、警察官から検察官に事件が送致されると、送致後24時間以内に、引き続き被疑者の身柄を拘束して捜査を行う「勾留」の請求をするか、釈放するかなどを検察官が判断します。
引き続き捜査の必要があると判断された場合には、裁判所へ「勾留請求」をします。 -
(3)勾留
検察官による勾留請求後は、裁判所へ行きます。
裁判官が引き続き勾留の必要がありと判断すると、「勾留決定」となります。
勾留が認められれば、原則10日間身柄を拘束されます。さらに捜査の必要があると判断されれば、検察官が勾留延長の請求を行い、最長20日間の身柄拘束が続きます。 -
(4)起訴
勾留請求から原則10日後、最長で20日後に検察官は起訴・不起訴の判断を行います。
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(5)刑事裁判
起訴されると裁判となり、判決まで勾留されることもありますが、保釈請求が認められれば釈放される可能性もあります。
裁判にて有罪判決が下されれば、そのまま刑が科されて前科がつくことになります。
執行猶予がついた場合には、その期間中に犯罪を起こすことなく過ごせば、刑の執行が免除されます。
しかしながら、執行猶予中に新たに犯罪を起こした場合には、与えられた執行猶予は取り消されてしまい、新たに刑が科され刑期もその分伸びます。
4、覚せい剤で逮捕されたら弁護士に依頼すべき?
もし、ご自身やご家族が逮捕された場合、弁護士に依頼すべきでしょうか。
こちらでは、弁護士に依頼すべきメリットをいくつかご紹介します。
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(1)逮捕後すぐに被疑者と面会できる
逮捕後72時間以内は、原則としてご家族であっても被疑者とは面会できません。
しかし、弁護士であればいつでも被疑者と面会することが可能です。
逮捕後すぐに弁護士が面会することで、警察や検察での取り調べについてのアドバイスを行います。
取り調べで精神的に疲弊してしまい、実際にはやっていないことまでやっていると喋ってしまうこともありますので、弁護士のアドバイスを受けることで冷静に取り調べを受けることができます。 -
(2)早期釈放の可能性が高まる
逮捕直後、弁護士に依頼すると、検察に送致しないように働きかけたり、勾留請求されないように検察官に働きかけたりすることが期待できます。送致や勾留請求がされなければ、身柄の早期釈放へと繋がります。
また勾留後に起訴されても、保釈申請を行ったり、なるべく早期に社会に復帰し更正できるように、早期釈放に向けて働きかけます。
5、まとめ
今回は、覚せい剤取締法違反でご自身やご家族が逮捕されてしまった場合、その罰則や量刑の判断基準などを解説してきました。
覚せい剤に関するトラブルは、薬物問題に詳しい弁護士に相談するのが最良の手段です。
ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が、あなたの悩みを早期解決に導きます。
覚せい剤取締法に関して疑問・不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています