家族が再び罪を犯してしまったら? 逮捕されるケースやその後の流れについて
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- 再逮捕とは
令和元年8月9日夜、横浜市南区で男性2名が相次いで切りつけられる事件が発生しました。このうち1人の男性への殺人未遂容疑で近所に住む男が同月10日に逮捕されましたが、同月30日にもう1人の男性に対する殺人未遂容疑で再逮捕されました。
このように、一度罪を犯すと場合によっては再逮捕される可能性も十分考えられます。本記事では、再逮捕されたらどうなるのか、どんなタイミングで再逮捕されるのかについて見ていきたいと思います。
1、再逮捕とは
テレビのニュースなどで、アナウンサーが「○○容疑者が××の疑いで再逮捕されました」と言っているのを見聞きされたことのある方も多いのではないでしょうか。そもそも再逮捕とは、どんなときに行われるものなのでしょうか。
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(1)ひとつの事件につき逮捕・拘留は原則1回のみ
基本的に、一度罪を犯して逮捕されたら、同じ犯罪事実で再び逮捕されたり勾留されることはありません。原則として1つの事件につき、逮捕や勾留は1回のみと決まっているからです。これを「一罪一逮捕一勾留の原則」(または「逮捕・勾留の一回性の原則」)と言います。
現行の刑事訴訟法では、被疑者が逮捕されると48時間以内に警察署で取り調べを受け、その後検察庁に送致され24時間以内に勾留延長が決定され、最大20日間勾留されます。人権保護の観点から、捜査機関が起訴前に被疑者を身柄拘束できるのは最大23日間と定められています。
同一事件で何度も逮捕・勾留が認められてしまうと、こうした勾留期間に制限を設けているのが無意味となってしまうため、ひとつの事件につき逮捕・勾留が1回のみと定められているのです。 -
(2)余罪があれば再逮捕がありうる
ただし、逮捕理由となった犯罪以外に別の罪を犯している場合には、再逮捕されることがあり得ます。たとえば、通行人のカバンをひったくり(窃盗罪)、その後銀行強盗(強盗罪)を行った場合、窃盗罪でまず逮捕・勾留されたのちに、強盗罪で再逮捕・勾留される可能性があります。
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(3)再逮捕されると身柄拘束期間が延びる可能性
先述の通り、逮捕後送検されると最大23日間身柄が拘束されますが、再逮捕されるとこの期間が延びる可能性があります。たとえば、A罪で20日間勾留され、その後B罪で再逮捕されて送検後20日間勾留されると、最大46日間も身柄が拘束されたままになってしまうのです。
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(4)再逮捕されたら刑期はどうなる?
2回3回と逮捕が重なり、その後起訴されて懲役刑を受けることになった場合、刑期もその分2倍3倍に延びるのではないかと考える方も多いでしょう。しかし、再逮捕されても、刑期が単純に2倍3倍となるわけではありません。再逮捕されて複数の罪で起訴されて懲役刑となった場合、刑期の長さが1.5倍になります。
たとえば、窃盗罪の懲役刑は「10年以下の懲役」となりますが、3つの窃盗罪で起訴された場合は、最大15年以下の懲役となる可能性があります。 -
(5)再逮捕は何回までできる?
再逮捕の回数に法律上の制限はありません。したがって、再逮捕は理論上何回でもできるようになっています。しかし、たとえばある人物が10回窃盗を繰り返したとしても、警察がその人物を10回逮捕することは実務上まずありません。再逮捕されるのは多くても3回前後です。それ以上の回数罪を犯している場合は、余罪を考慮の上、量刑が決定されることになります。
2、再逮捕されるケースとは
再逮捕されるかどうかは、犯した罪の種類によってある程度予測することができます。具体的に、どのようなケースで再逮捕が行われるのでしょうか。
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(1)余罪の疑いがある場合
まず、余罪の疑いがある場合です。たとえば、振り込め詐欺は被害者が多数いる可能性があるので、一度被疑者が逮捕されると、再逮捕となる可能性が高くなります。また、大麻や覚せい剤などの薬物犯罪でも、「所持」として逮捕され、その後「使用」で再逮捕されることもあります。
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(2)重大な事件の場合
次に、重大な事件の場合も、再逮捕となる可能性が高いでしょう。たとえば殺人の場合は、まず死体遺棄事件として立件して容疑者を逮捕し、その後、同容疑者を殺人罪で再逮捕するケースが多くあります。これは、事件の重大性から捜査に時間がかかることが予想され、捜査の時間を確保するためだと考えられています。
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(3)被疑者が黙秘・否認している場合
また、被疑者が黙秘したり犯罪行為を否認したりしているときも、再逮捕となる可能性があります。被疑者が黙秘・否認を続けていて、証拠がそろわず勾留期間終了までに捜査が終わらないと捜査機関が判断した場合は、他の罪で再逮捕して、引き続き捜査をすることがあるのです。
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(4)例外的に同一の罪で再逮捕される場合がある
原則として1つの事件では1回しか逮捕・勾留ができませんが、例外的に同じ事件で再逮捕される場合があります。たとえば、最初の事件で十分に証拠がそろわなかったので一度釈放し、その後やはり嫌疑が強まったため、同じ事件で再逮捕されたという事例があります。
この事件で、裁判所は「同一被疑事件では単なる事情変更を理由に再び逮捕・勾留することは人権保障の見地から許されない」としながらも、「刑事訴訟法199条3項は、再度の逮捕が許されることを前提としていることが明らかであり、同一被疑事実につき再度の勾留も許しているのが相当である」と判断し、同一事件での再逮捕・再勾留が例外的に許容されると判断しました。(東京地裁昭和47年決定)
3、再逮捕されるタイミング
再逮捕されるタイミングとしては、勾留期間終了の直後・前の事件で起訴された当日もしくはその数日後・保釈の直後・公判開始直後のいずれかになります。それはなぜなのでしょうか。
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(1)勾留期間終了の直後
再逮捕されるタイミングのひとつは、勾留期間終了の直後です。先述のように、証拠が十分にそろわない、捜査に時間がかかるなどの場合、捜査機関は捜査の時間を確保するために再逮捕する可能性があるのです。最初の事件で勾留期間が終了して被疑者が留置場から出てきたところを再逮捕するケースがあります。
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(2)前の事件で起訴された当日もしくはその数日後
ある事件で被疑者を逮捕すると、警察や検察は起訴することを目的に最大23日間かけて捜査を行います。起訴が決定すると、1ヶ月後には公判があります。公判の直前期に再逮捕をすると、公判の準備と取り調べを行う時期が重なり、十分な捜査ができなくなる可能性があります。そのため、起訴された当日およびその直後のタイミングで再逮捕を行うのです。
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(3)保釈の直後
被疑者が起訴された後、公判までの間に保釈請求ができます。保釈が認められるかどうかは証拠隠滅や逃亡のおそれがないかどうかで判断されますが、保釈請求が通った場合は、保釈金を支払えば身柄が解放されることになります。しかし、余罪の疑いがある場合は、保釈の直後に再逮捕される可能性があるのです。この場合、支払った保釈金は没収されるわけではありませんが、最初の罪で判決が言い渡された後まで返却されません。
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(4)公判開始直後
また、最初に犯した罪に関する公判が始まった直後にも、再逮捕される可能性があります。公判と公判の間は約1ヶ月開いていますが、次の公判が始まる直前に被疑者を再逮捕してしまうと、捜査に十分な時間がかけられません。そのため、公判の開始直後に再逮捕となることがあるのです。
4、再逮捕の流れ
ここでは、最初に逮捕されてから再逮捕され、その後起訴・不起訴の決定を経て裁判に至るまでの流れについて解説します。大まかな流れは以下のようになります。
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(1)最初の罪で逮捕・捜査
まず、最初の罪で逮捕されます。逮捕後は48時間以内に警察署で取り調べを受け、その後検察庁に身柄を送致(送検)されて再び取り調べを受けます。その結果を踏まえて検察官が送検後24時間以内に勾留するかどうかを決定します。
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(2)最初の罪で釈放もしくは起訴
捜査終了後、検察官が被疑者の起訴・不起訴を決定します。容疑が固まれば被疑者は起訴されます。勾留期間のうちに捜査が終わらない場合は、いったん釈放されることもあり得ますが、余罪の疑いがある場合はその間に次の罪に関する逮捕状が作成・発行されます。
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(3)他の罪で再逮捕・捜査
余罪がある場合、釈放後や起訴直後などのタイミングで再逮捕されます。再逮捕された後の流れは、最初の罪で逮捕されたときと同じで、被疑者は最初の48時間で再び警察署で取り調べを受けることになります。
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(4)送検・勾留の決定
その後、再び身柄が検察庁に送られ、24時間以内に取り調べを受けた上で、勾留が決定されます。勾留の期間は最初の逮捕時と同じで、最大20日間です。
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(5)起訴・不起訴処分の決定、裁判へ
検察官が起訴・不起訴処分を決定します。最初の罪と再逮捕後の罪の両方とも起訴する場合、最初の起訴を「本起訴」、あとの起訴を「追起訴」と言います。起訴が決定すると裁判となり、裁判所で判決を受けることになります。
5、再逮捕を回避するには
せっかく身柄が解放されると思っていたのに、留置場から出た直後に警察から逮捕令状を突きつけられて再逮捕されたら、誰でも動揺してしまうでしょう。再逮捕を回避するにはどうすればよいのでしょうか。
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(1)罪を犯した場合は正直に認める
正当な理由なく黙秘や否認を続けていると再逮捕されるおそれがあるので、罪を本当に犯してしまったのであれば、素直に罪を認めて自白するほうがよいでしょう。そのほうが、早く捜査が終了することがあるからです。ただし、無実である場合はその旨をきちんと主張しましょう。
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(2)被害者との示談交渉を成立させる
また、余罪について被害者との間で示談交渉を行い、示談が成立すれば、被害弁償が済んでいるとして再逮捕を免れられる可能性があります。この場合は、最初の罪で逮捕された後、いち早く弁護士に相談の上、被害者と示談を開始すべきでしょう。
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(3)余罪がある場合は捜査機関と交渉する
そもそも逮捕・勾留は、犯人が住所不定の場合や逃亡・証拠隠滅のおそれがあるときになされるものです。もし、最初の事件で釈放された後に余罪が発覚して再逮捕されそうになった場合は、逮捕・勾留理由が存在しないことを主張することで再逮捕を免れられる可能性があります。
6、まとめ
家族が逮捕されただけでもショックなのに、再逮捕となるとさらに居ても立っても居られなくなるでしょう。被疑者本人も、一度釈放されたところを再逮捕されると、動揺のあまり取り調べで不利な証言をさせられてしまう可能性もゼロではありません。
家族が再逮捕されそうになったときは、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスまですみやかにご連絡ください。刑事事件の経験豊富な弁護士が、再逮捕の回避に尽力いたします。仮に被疑者本人が再逮捕されてしまったとしても、早期に釈放されるようご本人をサポートしてまいります。ささいなことでも構いませんので、ご不安なことがあればお気軽にご相談ください。
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