身元引受人の条件や責任を知りたい! 横浜オフィスの弁護士が解説

2020年05月29日
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身元引受人の条件や責任を知りたい! 横浜オフィスの弁護士が解説

神奈川県警察の犯罪統計資料によると、神奈川県では平成30年の1年間に3万3487件の窃盗事件が発生しており、うち1万2093件が横浜市において発生しています。

ひとくちに窃盗事件といっても、万引きから空き巣、事務所荒らし、自転車盗難など、その手口や被害額はさまざまです。しかし、いずれも犯罪行為であることにかわりありません。警察に逮捕され、厳しく取り調べを受けた後、裁判で実刑判決を受けて刑務所に入るケースもあります。その一方で、初犯で被害が軽微であれば被害者との示談で和解が成立し、身元引受人に引き渡されて帰宅できる場合もあるでしょう。

もしあなたの知人や部下が事件を起こして、身元引受人を依頼されたとすればどうしますか? 引き受けていいものか、どの範囲で責任を負うのか、悩まれる方は少なくないようです。本コラムでは、身元引受人の意味や役割について、横浜オフィスの弁護士が解説します。

1、身元引受人とは?

刑事ドラマなどで、警察に身柄を確保された後に家族や友人などが呼ばれて身柄が引き渡されるシーンを目にしたことがある方も多いかと思います。しかし、身元引受人の意味を正確に知っている方は少ないでしょう。

ここでは、身元引受人の意味と、身元引受人が必要なケースを紹介します。

  1. (1)身元引受人の意味

    身元引受人とは、事件を起こした被疑者・被告人の身柄を引き受け、釈放後の生活や行動を監視する人物をいいます。

    事件を起こしたと考えられる者は、証拠隠滅・逃亡の恐れがある場合は刑事施設に逮捕・勾留されます。しかし、身元引受人がいることでそれらの可能性が低くなると考えられ、身体拘束が解かれるのです。

  2. (2)身元引受人が必要なケース

    逮捕されたのち、以下のようなケースに該当するとき、身元引受人が求められることがあります。

    • 微罪処分や事件化せずに厳重注意で終わるなど、事件当日にすべての処理が終了して身柄が解放される場合
    • 逮捕後、警察から検察官に送致せずに釈放する場合
    • 在宅事件扱い(任意捜査事件)として身柄を釈放する場合
    • 勾留の要否・可否を検討している場合
    • 保釈請求の可否を検討している場合


    いずれのケースでも、被疑者または被告人の身柄解放を左右する局面に身元引受人が必要となります。逮捕された本人の日常に悪影響を及ぼさないためにも、重要な役割を担っているといえるでしょう。

2、身元引受人が負う役割と責任

身元引受人が担う役割について、具体的に紹介します。

  1. (1)身元引受人が負う役割

    身元引受人は、以下の役割を担うと考えられています。ただし、法的な強制力がある義務を課されるわけではありません。

    • 取り調べなど必要な捜査がある場合には、被疑者または被告人を必ず警察署に出頭させること
    • 公判期日に出頭するように監督すること
    • 再犯に至らないように日ごろから指導、監督すること
  2. (2)身元引受人の責任

    前述のとおり、身元引受人には実は具体的に法的な拘束力はありません。したがって、もし、上記の役割を果たせなくても責任を問われることはありません。たとえば、被疑者や被告人が任意の取り調べについて指定された日時に出頭しなかったからといって、身元引受人が責任を問われるようなことは一切ないのです。

    しかし、身元引受人は犯人の逃亡や証拠隠滅を防止することを前提として任させている役割ですから、被疑者が逃亡してしまった場合などは、今後は身元引受人として不適任としてその任務を任されない可能性があります。また、被疑者もしくは被告人が逃亡・証拠隠滅をして身元引受人がそれに手を貸した場合、逮捕・勾留などの身体拘束を受ける可能性があることは知っておきましょう。

3、身元引受人になる条件

繰り返しになりますが、身元引受人には法律上の条件や決まり、資格などはありません。しかし、被疑者または被告人を必要に応じて出頭させ、生活を指導・監督する必要があることから、身元引受人は身近な人物が選ばれる傾向にあります。具体的には、下記のような方々です。

●親、配偶者、兄弟姉妹などの親族
もっとも適任なのは同居の親族などです。しかし、独身者で実家が遠方であったり、親が高齢で警察署まで出向けなかったりする場合もあるでしょう。その場合は、次に説明する勤務先の方などを検討することになります。身元引受人になれる方が近くにいない状況であってもあきらめず、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

●勤務先の会社の社長、上司、同僚など
次に適任となるのが勤務先などでも被疑者を指導・監督する立場にある人物です。しかし、勤務先によっては事件のことを知られると、解雇や懲戒処分を受けるなどの不利益を被り、不都合がある場合も多いでしょう。依頼する際は日ごろの関係性などを考慮する必要があるかもしれません。

●友人、知人、恋人など
友人や知人などでも身元引受人にはなれますが、身柄解放を判断する重要な局面ではやや評価が弱い感が否めません。また、共犯がいる可能性がある事件の場合は、友人知人などを身元引受人としようとしても、認められないことがあるでしょう。

身元引受人の評価によって身柄釈放が判断されることを考えると、できるだけ身元引受人が持つ責任と役割を行うにあたって適任である者を選任するべきといえるでしょう。

4、身元引受人を依頼された場合に知っておきたいポイント

身元引受人を依頼された場合、多くの方が「引き受けても大丈夫だろうか?」と不安を感じるでしょう。そこで、ここでは知っておきたいポイントを整理していきます。

  1. (1)強制ではない

    まず知っておきたいのは、身元引受人の依頼は強制ではないということです。面倒なことに巻き込まれたくない、親交が深いわけでもないので受けたくないといった事情があれば、当然、拒否していただいて問題ありません。

  2. (2)辞退も可能

    いったん身元引受人を了承した後でも、撤回し、辞退することは可能です。その場合は、依頼を受けた機関(警察や被疑者の弁護士)にその旨を伝えましょう。

  3. (3)法的な義務や責任は生じない

    前述したように、身元引受人に具体的な法的な義務や責任はありません。被疑者または被告人が証拠隠滅をしたり、被告人が裁判に出廷しなかったりしても、身元引受人が責任を追及されることはないことは、ぜひ知っておいていただきたい事項です。

  4. (4)身元引受人が他にいない場合

    身元引受人になってくれる人物を探す中で、手を尽くしても引き受けてくれる方が見つからないことがあります。そんな事情のもとに身元引受人を頼まれた場合、「自分が断ってしまうと、誰も引き受けてくれず身柄解放がかなわないのではないか?」と心配になることもあるでしょう。

    残念ながら、身元引受人を代行してくれる民間企業や団体などのサービスは存在しませんが、身元引受人を頼まれたが了承するかどうか迷っている、という方は弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

5、まとめ

あなたのもとに誰かの身元引受人になってほしいという連絡があった場合、その方は今まさに捜査機関や裁判所に身柄解放を判断されている最中だと考えられます。身元引受人になったからといって、特段法律上の重い責任などが課せられるわけではないので、助けてあげたいと思われたなら、ぜひ引き受けてあげてください。

もし、身元引受人になることが心配である、引き受けたいが遠方なので警察署まで出向けないなどの事情があれば、ベリーベスト法律事務所横浜オフィスまでご相談ください。数多くの刑事事件を担当してきた弁護士が、状況に応じて適切なアドバイスをいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています