子どもが募金詐欺で逮捕された……詐欺罪の量刑や逮捕後の流れを弁護士が解説
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横浜市を管轄している神奈川県警では、各種詐欺事例をホームページで公開しています。オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺ですが、時代に応じてバリエーションが増えているようです。災害復興支援を口実とした募金詐欺や義援金詐欺と呼ばれる詐欺についても注意喚起しています。
特殊詐欺は、未成年の少年少女が事件に加担しているケースが少なくありません。もし、あなたの子どもが募金詐欺を行って逮捕されたらどうなってしまうのでしょうか。今回は未成年者が募金詐欺で逮捕された場合を想定し、その処分や逮捕後の流れなどをベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。
1、募金詐欺とは? どんなケースで募金詐欺が成立するのか
募金詐欺とは、「実際には募金するつもりはないのに、寄付する募金すると称して他人からだまし取る行為」です。なお、募金詐欺という罪はなく、刑法第246条に規定された「詐欺罪」の1種に該当します。詐欺罪では、刑法第250条によって未遂行為も処罰の対象と規定しているため、「お金を奪うためにだますこと」が立証されれば、金品をだまし取る前であっても、逮捕されて有罪になる可能性があります。
募金詐欺の具体例がこちらです。
- 地震で困っている人のために募金に協力しているから募金を取りに行く。
- 困っている人のために募金を集めているので、口座に振り込んでほしいと告げて振り込ませる。
- 街頭で偽の募金を行い不特定多数の人からお金を奪う。
- 病気を偽装して募金や寄付を集める。
募金詐欺は、街頭で行われるものもあれば、インターネットや電話で行われるケースもあります。昨今では、詐欺サイトを偽造して、振り込ませる手口も確認されている犯罪です。実際に発生した災害や事件に便乗して行うこともあれば、架空の話を創作して募金を求めるケースも存在します。
募金詐欺は、不特定多数の人が被害者になっていることが多いので、被害者との示談が難しい点も大きな特徴といえるでしょう。
2、募金詐欺の量刑は? 刑務所に入ることもある?
前述のとおり、募金詐欺は、「詐欺罪」です。逮捕されて有罪となれば「10年以下の懲役に処する」と規定されています。たとえ、詐欺未遂罪であっても、同じ刑罰が規定されていることを知っておきましょう。
前述のとおり、詐欺罪は罰金刑の規定がなく、懲役刑のみが規定されています。近年は特殊詐欺が増加しており、成人は初犯でも実刑判決が出ることもあります。未成年者による加害が認められた少年事件でも、重い処分が下されることが少なくありません。
成人が犯罪を起こしたときは刑法によって罰することを目的に罪が裁かれることになります。しかし、通常、未成年が詐欺事件を起こした場合は、刑法に定められている刑罰に処されることはありません。
20歳未満の未成年者が罪を犯した場合、またはこれから犯す可能性があるケースを「少年事件」と呼びます。少年事件には3種類ありますが、詐欺罪で逮捕された場合は、本人が14歳以上であれば「犯罪少年」、14歳未満の場合は「触法少年」と分類されます。
●詐欺行為をした子どもが14歳未満だったとき
14歳未満の子どもが犯罪を行った場合は、刑事罰責任能力がないと判断されます。逮捕されることも罪が問われることもありません。しかし、保護を受け、児童相談所や児童自立支援施設などへ送られる可能性があります。
●詐欺行為をした子どもが14歳以上
逮捕され、取り調べを受ける可能性があります。詐欺行為を実行したことが明らかであれば、犯した罪の大きさや更生の可能性などを総合的に判断して、少年院で教育指導が行われたり、保護観察処分が下されたりします。
ただし、詐欺行為だけでなく、殺人などの重大犯罪を起こした場合には、成人と同様の刑事裁判が開かれ有罪となると少年刑務所に服役する可能性もあるでしょう。
保護観察処分であれば、自宅で生活することができるため、将来に著しい悪影響を与えることはありません。しかし、捜査などを理由で長期にわたる拘束を受けたり、少年院や少年刑務所に入ることになったりすれば、進学や就職などに支障をきたす可能性が高まります。
子どもが罪を犯して逮捕された場合は、将来に大きな影響を与えないように、身柄を拘束されない処分にしてもらうことが、重要となります。
3、未成年が募金詐欺で逮捕された場合はどうなるのか
14歳以上の未成年が詐欺罪で逮捕された場合の流れを解説します。
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(1)72時間の身柄拘束
逮捕されてから72時間は留置所に身柄を拘束され、その内の48時間は警察官による取り調べが行われます。その後、警察官から検察官もしくは家庭裁判所に身柄が送致されて、勾留するか、少年鑑別所に送られるかが決定されます。
禁錮刑以上の刑にあたる犯罪であれば検察庁、罰金以下の刑にあたる犯罪は家庭裁判所へ送致されるケースが一般的です。したがって、詐欺罪の場合は検察庁に送致される可能性もあるでしょう。
少年事件の場合は、成人とは異なり「全件送致」といって、すべての事件を家庭裁判所に送致されることが規定されています。成人が募金詐欺を行い逮捕されたときのように「不起訴」として釈放されることはありません。 -
(2)少年鑑別所での観護措置
いったん検察に送致された事件も捜査ののち、家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所では、刑事裁判に該当する「審判」が開かれる前に、少年鑑別所での観護措置が必要かどうかを判断します。必要と判断されれば、少年鑑別所で専門家によってさまざまな調査が行われます。
保護鑑別所では、罪を犯した理由や環境的要因などを明らかにした上で、環境を改善するための方法が模索されます。 -
(3)家庭裁判所での「少年審判」
少年審判とは、成人の「刑事裁判」に該当するもので、少年の処分が決定されます。凶悪犯罪の場合は、家庭裁判所から再び検察官の元に事件が戻されて、成人と同じ「刑事裁判」が開かれることがあります。
刑事裁判で、懲役刑を命じられたら少年刑務所に収容されることになります。
家庭裁判所での「少年審判」によって受ける可能性がある処分は以下の5種類です。- 検察官送致
- 少年院送致
- 児童自立支援施設等送致
- 知事または児童相談所長送致
- 保護観察
- 不処分
未成年は、前述のとおり成年とは異なり「更生すること」を目的に処分が決定されます。更生が見込まれないと判断された場合や、更生できる環境がない、反省していないなどの状態では、少年院に送致され身柄を拘束される可能性があります。
4、更生して社会復帰するために早期に弁護士に相談を
子どもが詐欺罪で逮捕されてしまった場合は、保護観察処分や不処分などの身柄を拘束されない処分を勝ち取ることが重要となります。
そのためには、少年事件の経験が豊富な弁護士による早期弁護活動が必要不可欠です。警察での取り調べや鑑別所での振る舞いなどをどうしたらよいのかを適切のアドバイスしてもらえます。
また、少年事件においては、本人の反省と更生したいという気持ちが大切です。ご家族が助言しても聞く耳を持たない少年でも、弁護士による指導やアドバイスには素直に従うことも少なくありません。本人をサポートしながら、更生へと誘うのも弁護士の役割といえるでしょう。
また、子どもが組織的に募金詐欺を行っていた場合、指示していた首謀者からウソをつくことを強要されて、虚偽の供述をして、事態を悪化させるケースも少なくありません。そのような被害から守るためにも弁護士の存在は必要不可欠です。
さらに、少年事件においては、家庭環境や学校、職場などの「子どもを受け入れてくれる優れた環境の存在」も重視されます。弁護士によって学校や職場などに適切な対応をすることで、「更生する可能性がある」と判断され、保護観察処分が下される可能性も高まります。
募金詐欺の場合でも、被害者が特定できれば被害者と示談をすることで、処分が軽くなる可能性があります。不特定多数からお金を受け取っていた場合には、「贖罪(しょくざい)寄付」を行うことで、示談と同じような効力を発揮します。
子どもが詐欺事件で逮捕された場合に重要なのは、「身柄拘束を伴わない処分」にしてもらうことで、将来への影響を最小限にすることです。そのためにも、少年事件の解決実績が豊富な弁護士になるべく早く依頼することが重要となります。
5、まとめ
子どもが詐欺事件で逮捕された場合は、早急に少年事件の取り扱い実績が豊富な弁護士に、最適な方法をアドバイスしてもらいましょう。早く対応することで、将来への影響を軽減することが可能です。
まずはベリーベスト法律事務所 横浜オフィスで相談してください。少年の詐欺事件の実績豊富な弁護士が、ご子息にとって最適な対策を親身になってアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています