窃盗犯が捕まる確率は? 空き巣などの窃盗罪の検挙率や逮捕の可能性

2023年07月27日
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窃盗犯が捕まる確率は? 空き巣などの窃盗罪の検挙率や逮捕の可能性

ニュースなどでよく目にするとおり、数ある犯罪のなかでもっとも多く発生しているのが「窃盗」です。神奈川県警が公表する刑法犯罪名別市区町村別認知件数の令和4年確定値によると、横浜市内では14203件もの刑法犯罪が認知されていますが、そのうち9830件が窃盗犯です。

全国各地で窃盗事件が起きない日はないといっても過言ではないほど多発していますが、実は、容疑者が逮捕されず未解決のままになっている事件も少なくありません。このコラムでは、窃盗罪の検挙率に注目しながら、窃盗の手口分類や逮捕の可能性について、横浜オフィスの弁護士が解説します。

1、窃盗罪とは? 構成要件・罰則・手口を解説

窃盗罪は、単純にいえば「金品を盗む」という行為を罰する犯罪です。ただし、何を対象として盗むのか、どのような状況で盗むのかによって「手口」で分類されており、手口名のほうが広く知られているものも多いため「窃盗罪にあたる」という認識が薄いまま窃盗罪を犯してしまった方も少なくないようです。

まずは窃盗罪とはどのような犯罪なのか、法的根拠や罰則、手口などを確認していきましょう。

  1. (1)窃盗罪の法的根拠

    窃盗罪は刑法第235条に規定されている犯罪です。

    【刑法第235条(窃盗)】
    他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。
  2. (2)窃盗罪の構成要件

    犯罪が成立するための要件を「構成要件」といいます。構成要件をひとつでも欠くと、原則として犯罪は成立しません。

    窃盗罪の構成要件は次の3点です。

    • 他人の占有する財物であること
    • 不法領得の意思があること
    • 窃取の事実があること


    まず、窃盗罪は「他人の占有する財物」を対象としています。占有とは実際に持っている状態はもちろん、手に持っていたりカバンの中に入れていたりしなくても管理下にあれば「占有している」とみなされます。

    なお、自分に所有権があるものでも、他人に貸した・預けたといった状態のものは他人の占有下にあると考えることになるので注意が必要です。

    次の要件は「不法領得(ふほうりょうとく)の意思」です。不法領得の意思とは「他人の占有を排除し、自らの物として経済的用法に従って処分・利用しようとする意思」と定義されています。

    つまり、他人の物であるのに、まるで自分の物かのように所有・保管などをする意思があれば「不法領得の意思がある」とみなされますなお、不法領得の意思は「他人の占有を排除」することを前提としているため、たとえば「少し借りてすぐに返す」というつもりであれば、占有を排除していないことになり不法領得の意思が認められないケースがありえます

    最後の要件は「窃取の事実」です。窃盗行為をはたらき、その結果が生じている場合には窃取の事実があるとみなされます。
    なお、窃取の事実が認められない場合でも、たとえば盗みをはたらこうとしたところパトロール中の警察官に発見されてしまったので目的を遂げなかったなどのケースでは、窃盗罪の「未遂」となり処罰されます。

  3. (3)窃盗罪の罰則

    窃盗罪で有罪判決を受けると、刑法第235条の規定に従って「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。

    実は、平成18年に刑法が改正されるまでは罰金の規定がありませんでした。そもそも窃盗とは、金銭的に苦しい事情が背景となって犯す犯罪という特性をもっていたため、罰金を科しても納付が期待できなかったのです。しかし近年では、十分な経済力があるにもかかわらず病的に窃盗を繰り返してしまう「クレプトマニア」などの問題も表面化しているため、軽微な窃盗事件では罰金が科せられる可能性もあります

  4. (4)窃盗罪の手口

    窃盗罪は、窃取の目的物や窃取の方法によって「手口」で分類される犯罪です。いくつかの手口を挙げていきましょう。なお、手口の名称は法律用語ではなく一般的な呼び名です。

    ● 万引き
    スーパーやコンビニ、書店など、小売店で陳列している商品を盗む手口です。

    ● 置き引き
    他人が置いた財布やカバンなどを、他人がその場を離れたすきに盗む手口です。なお、完全に置き去りにしてその場を離れてしまった状況では、「他人の占有」がないとして、窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立するケースもあります。

    ● 空き巣
    家人が不在の住宅に侵入して金品を盗む手口です。家人が在宅中に目を盗んで侵入して金品を盗む場合は「居空き」、家人の就寝中に侵入すれば「忍び込み」と呼びます。

    ● 車上ねらい
    他人の車の中から金品を盗む手口です。

    ● 部品ねらい
    他人の車からバンパーやマフラーなどのパーツを盗む手口です。
    ナンバープレートを盗む場合は「ナンバープレート盗」と呼びます。

    ● 自動車盗
    他人の自動車を盗む手口です。
    バイクを盗めば「オートバイ盗」、自転車を盗めば「自転車盗」と呼びます。


    なお、万引きのように軽微だと思われる手口でも、店から逃げようとして店員や警備員を押し倒すなどの暴行が認められた場合は強盗罪が成立します強盗罪の罰則は「5年以上の有期懲役」で、最長20年にわたって懲役に服すことになる重罪です

2、窃盗事件の検挙率

窃盗事件を起こした場合、どのくらいの割合で警察に検挙されることになるのでしょうか? 令和4年版の犯罪白書で公開されているデータから、窃盗事件の検挙率をみていきましょう。

  1. (1)検挙率とは

    「検挙率」とは、警察が被疑者を特定して事件を捜査し、検察官に事件を送致・報告した件数の割合を示すものです。被疑者とは罪を犯した疑いを捜査機関から受けているもののまだ起訴されていない人をいいます。
    この数字には、逮捕された事件だけでなく、逮捕されず在宅のまま任意捜査を受けた事件や、警察署限りで捜査を終えた「微罪処分」の件数も含まれています。

    つまり、検察官による起訴・不起訴や、刑事裁判における有罪・無罪に関係なく、警察が事件を処理した件数となります。

  2. (2)窃盗事件の検挙率

    令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に警察が認知した窃盗事件38万1769件に対して、検挙された件数は16万1016件でした。この件数から割り出した検挙率は42.2%です。

    窃盗事件は、被害者が不在であったり、被害者の目を盗んだりして敢行される犯罪なので、その場で身柄を確保されない限り、検挙に至らないことも多いです。

    日常生活でも耳にする機会の多い、ほかの犯罪の検挙率もみてみましょう。

    • 暴行罪……88.0%
    • 傷害罪……85.9%
    • 脅迫罪……86.6%
    • 詐欺罪……49.6%
    • 横領罪……77.8%
    • 強制わいせつ罪……90.3%
    • 公務執行妨害罪……97.2%
    • 器物損壊罪……14.9%


    これらの検挙率をみると、暴行罪・傷害罪のように被害者と加害者が顔を合わせる犯罪では数字が高くなっていることがわかります。

    一方で、電話やメールなど非対面の方法で犯行におよぶ手口が頻発している詐欺罪や、車に傷を付けられた、何者かに看板を壊されたなどの器物損壊罪のように、被害者が加害者を目撃していない犯罪では検挙率が低いという傾向があります。

    窃盗事件においても、その場で身柄を確保された、明らかな証拠を残してしまったといったケースでない限り、検挙に至る可能性は高くないといえるでしょう。

3、窃盗犯が逮捕されるパターンは? 現行犯逮捕と後日逮捕

令和4年版の犯罪白書によると、窃盗事件の被疑者として警察や検察などの取り調べを受けた人数は7万6587人でした。逮捕されなかった人員は5万1649人で、逮捕された割合を示す「身柄率」は30.3%です。

事件化した犯罪全体の身柄率が34.1%であることを考えると、窃盗犯が逮捕される割合は決して高くありません。

では、どのような状況であれば窃盗犯は逮捕されるのでしょうか? 窃盗事件では代表的な現行犯逮捕と、後日逮捕されるケースにわけて解説します。

  1. (1)現行犯逮捕されるパターン

    現行犯逮捕とは、窃盗をはたらいたそのとき、その場で身柄を確保される逮捕種別です。逮捕状は不要で、警察官や検察官だけでなく被害者・店員・警備員などの私人でも逮捕が認められています。

    万引きの現場を警備員に目撃されて「ちょっと事務所まで来てもらえますか?」と腕をつかまれた、留守と思って他人の住宅に侵入したところ在宅していた家人にみつかって取り押さえられたといったパターンでは、私人による現行犯逮捕を受けたことになります。

  2. (2)後日逮捕されるパターン

    日本国憲法の定めに従うと、逮捕は現行犯逮捕を除き、裁判官が発付する逮捕状によってのみ認められます。逮捕状に基づいて執行される逮捕を「通常逮捕」といいますが、犯行の後日になって逮捕されるケースがほとんどです。

    後日逮捕では、被害者が警察に被害を申告したのち、警察が捜査を進めて被疑者を特定し、犯行の裏付けをおこなって逮捕状が請求されます。裁判官が逮捕状を発付するのは、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逃亡または証拠隠滅のおそれがある場合です。

    次のような証拠がある場合は、後日逮捕を受けるおそれがあると考えるべきでしょう。

    • 犯行の様子を撮影した防犯カメラの映像
    • 犯行を目撃した店員や警備員の証言
    • 犯行現場に遺留された指紋・足跡・DNAなどの鑑識資料
    • 質屋・リサイクルショップが備え付けている台帳など、被害品が処分された記録
  3. (3)逮捕後の流れ

    逮捕されたあとの流れは現行犯逮捕・後日逮捕のいずれであっても同じです。

    逮捕後は警察署の留置場に身柄を置かれたうえで事件に関する取り調べを受けます。逮捕から48時間以内に検察官へと送致され、さらに検察官からも取り調べを受けることになります。

    検察官に許された逮捕の時間は24時間以内ですが、逮捕から数日しか経過していない段階では、検察官が起訴・不起訴を判断するための材料が不足しています。そこで、検察官は裁判官に対して身柄拘束の延長を求めます。これが勾留請求と呼ばれる手続きです。

    裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長によって最長20日間までの身柄拘束が認められます。勾留中の身柄は警察署に戻されるので、警察官から事件に関してさらに詳しい取り調べを受けることになるでしょう。

    勾留期限が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴を決定します。起訴されれば刑事裁判へと移行し、不起訴処分となれば即日で釈放されます。

    検察官に起訴された場合はほぼ確実に有罪判決が下されるため、厳しい刑罰を回避するためには不起訴処分の獲得が不可欠だといえます

4、窃盗事件を起こしてしまったら弁護士に相談

万引き、自転車盗などの比較的に犯情が軽微なものでも、あるいは悪質だととらえられやすい空き巣やすりなどでも、手口に関わらず窃盗事件を起こしてしまった場合は直ちに弁護士に相談しましょう。

窃盗罪は最長で10年の懲役が科せられる重罪です。窃盗犯として逮捕されれば、勾留を含めて起訴までに23日間もの身柄拘束を受けるおそれもあるので、社会生活への影響も甚大でしょう。

ただし、窃盗罪は「財産犯」に分類される犯罪であり、返還・弁済がなされれば実害が解消されやすいという特徴があります実際に、加害者の処罰よりも「盗んだお金を返してほしい」「盗んだ品物を買い取ってくれれば問題ない」と考える被害者も多いため、示談による円満な解決が十分に期待できます

弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉、逮捕後の取り調べに際するアドバイスの提供、再犯防止に向けた取り組みのアピールなどが可能です。できるだけ早い段階で弁護士のサポートを得られれば、逮捕されてしまわないための防御や、早期釈放・不起訴処分の獲得も期待できるでしょう。

5、まとめ

窃盗犯として警察に検挙される割合は、令和3年中の統計では42.2%でした。
ほかの犯罪の検挙率と比較すると決して高くない数字ですが、だからといって「逮捕されにくい」とも断言できるわけではないでしょう。窃盗罪は最長で10年にわたる懲役を科せられる重罪なので、窃盗犯として特定された場合はできる限り穏便な解決を目指すのが最善策です。

窃盗犯として逮捕されてしまった、窃盗をはたらいてしまい逮捕に不安を感じているなどの悩みがある方は、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスにご相談ください。窃盗事件をはじめとした刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士が、逮捕の回避や早期釈放・不起訴処分の獲得を目指して全力でサポートします。

刑事弁護はスピード勝負ですできるだけ早い段階で刑事事件の実績のある弁護士がサポートすることでより良い結果が期待できるので、まずはベリーベスト法律事務所 横浜オフィスまでご一報ください

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