不利な契約を回避! フランチャイズ契約書のチェックポイントとは
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横浜市は人口が370万人を超す大都市で、古くから貿易港として栄えてきた街です。観光業や製造業など、さまざまな産業ビジネスも発展しています。このように多くの顧客を見込める横浜市では、事業展開を検討している方も多数いらっしゃるでしょう。
しかし、事業を始めるにあたっては業種によって注意すべきポイントが変わってきます。一般的に広く浸透しているビジネス形態として「フランチャイズ事業」がありますが、契約に際して何に注意するべきか、挑戦してみたいけれど詳しくは分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、フランチャイズ契約を検討している中小企業のご担当者や個人事業を営む方へ向けて、フランチャイズ契約締結時における留意点を、横浜オフィスの弁護士が解説します。
1、フランチャイズ事業とは
フランチャイズ事業とは、加盟店が本部から商標やオリジナル商品の販売許可、経営ノウハウや販路の提供などを受け、その対価として本部へ金銭(ロイヤリティ)を支払う契約形態の事業を指します。コンビニや飲食店、パソコン教室、介護リフォーム業など、多数の業態で見られます。
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(1)メリット
フランチャイズに加盟すると、それまで本部側が培ってきたブランド力や、サービスや商品、ノウハウを使って事業を営むことができます。すなわち、開業・起業の当初から長年培われてきた企業の売れるノウハウやブランド価値を利用して、ある程度安定した収入を得られる見込みが得られるということです。
なお、本部と加盟店はあくまでも対等の関係であり、加盟店は独立した事業者として経営責任を負うことになります。 -
(2)デメリット
前述したことは、あくまでも理想です。実際には、本部と加盟店との力関係には歴然とした差があり、しばしばトラブルの発生原因となります。
加盟店は十分なメリットを享受できないままに、本部から無理な売り上げ目標を課されたり、高額の違約金を請求されたりと、事業者としての経営責任のみを背負うことになるという不公平が起きかねないという問題もはらんでいます。場合によってはリスクがある業態であることも、十分に知っておきましょう。
2、フランチャイズ事業に関する法律
フランチャイズ事業では多くのトラブルが起こっていることがニュースなどで報道されています。しかし、令和元年10月時点で、フランチャイズ事業そのものを規制する法律はありません。
それでも、無法地帯というわけではもちろんありません。フランチャイズ事業は、中小小売商業振興法や独占禁止法にもとづくガイドラインなどが一部の規制を担う形になっています。関連する法律について解説します。
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(1)中小小売商業振興法
中小小売商業振興法は、「商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業の振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的(第1条)」として施行された法律です。
本法ではフランチャイズ事業を「特例連鎖化事業」と定義しています。さらに、第11条、12条によって、書面による契約内容や事業実績の提示などを定め、運営の適正化をはかっています。 -
(2)独占禁止法
独占禁止法は通称であり、正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。その名のとおり、私的独占や不法な取引などを制限することによって事業支配力が過度に集中することや、事業活動の不当な拘束を防ぐ目的で制定された法律です。
公正取引委員会は本部と加盟店の力関係が独占禁止法上のトラブルを発生させやすいとして、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法の考え方について」というガイドラインを策定、公表しています。
これによると本部の十分な情報の提供や、加盟店側の自主的な検討があることが望ましいとしたうえで、不当に加盟店に不利益となる取引がなされるときは、独占禁止法における優越的地位の濫用にあたると指摘されています。 -
(3)その他のルール
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の「倫理綱領」「開示自主基準」でも、十分な情報提供や継続した指導や援助など、契約当事者が守るべき事項について示されています。
このように、事前の情報開示と収集は加盟店にとって重要な事項です。十分気をつけて読み込む必要があるでしょう。判断が難しいときは、弁護士に相談することをおすすめします。
3、フランチャイズ本部の義務
加盟店は本部が義務を果たすことを前提とし、対価であるロイヤリティを支払います。そのため、本部にどのような義務があるのかを知っておくことも不可欠です。原則を理解しておきましょう。
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(1)商標などを使用する権利を与える
商標や商号などを使用する権利を与えるのは本部の大きな義務です。通常、事業を始める際には長い時間をかけて営業活動を行い、消費者の信頼を得ていきます。しかしフランチャイズ事業では、加盟店は本部の商標や商号を利用することで、そのブランド力を生かし、出店と同時に消費者からの信頼を得ることに成功するのです。
商標などの使用はフランチャイズ契約の大原則といえるでしょう。 -
(2)経営に関する指導や援助を行う
加盟店はすでに蓄積された経営ノウハウにもとづく指導や援助を受けることで、経営の失敗を防ぎ、最小限の労力で店舗を成長させることができます。これは商標利用とともにフランチャイズ事業の本質ともいえるべき義務ですから、本部が行う指導は、加盟店から徴収する金銭の価値に十分見合ったものでなければなりません。
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(3)情報開示・説明
本部は加盟店に対し、中小小売商業振興法の第11条に定める6つの事項について、法定開示書面の交付、説明をしなければなりません。これに従わないと第12条にもとづき、企業名を公表されることがあります。
- 加盟金や保証金などの金銭に関する事項
- 商品の販売条件に関する事項
- 経営の指導に関する事項
- 使用させる商標などに関する事項
- 契約期間、契約の更新、解除に関する事項
- そのほか経済産業省令で定める事項(同法施行規則第10条)
4、フランチャイズ契約書の注意点
フランチャイズ契約書には実に多くの項目が設定されています。契約する前に、十分気をつけて内容を確認する必要があります。
以下に、契約を締結する際注意すべきポイントをまとめました。
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(1)必ず契約書で確認すべき項目
契約書に記載されているかどうかはもちろん、その内容について、絶対に見落としてはならない項目は以下のとおりです。
- 商標に関するもの……商標使用の許可や使用の範囲、条件など。
- 経営ノウハウに関するもの……ノウハウの内容、提供方法、商品の供給方法、返品・廃棄の制限、店舗の内装など。関連して、仕入れ数量や品目の強制にも注意が必要です。
- 金銭に関するもの……初期費用、加盟金、保証金、ロイヤリティの計算方法、システム利用料、広告宣伝に際する分担金など。それぞれの返金可能性についても検討が必要です。
- 契約、解約について……契約期間(始期にも注意が必要です)や更新の条件、契約終了後の措置、中途解約の可否や条件、解約時の違約金など。
- ペナルティー……義務違反があった場合の損害賠償金や違約金、罰則、競業避止義務など。
- テリトリー権……加盟店の商圏が保護される範囲、ほかの加盟店の同地域における営業や広告の可能性など。
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(2)特に注意すべきポイント
業務内容などによって、大きく内容が異なる可能性がある事項です。場合によっては、当初から加盟店側が苦しい状況に陥りかねなくなってしまうため、確実にチェックしたほうが良いでしょう。
●本部に有利な条項が定められていないか
フランチャイズ契約書では、本部に一方的なメリットがあり、加盟店が厳しい立場に立たされかねない条項が盛り込まれていることがあります。
ロイヤリティの計算方法や違約金が発生する条件、その金額が適正かどうかなど、よく確認しておきましょう。
●経営予測は適正に行われているのか
契約締結前に示される立地判断や売り上げ予測、経費予測は適正かどうかも重要なポイントです。本部が提供する立地判断や売り上げ、経費予測はしっかりとした根拠があるものか、また過剰な予測ではないかを確認しましょう。
ただし、これらは素人には判断が難しいため、専門家に調査を依頼することも対策のひとつとなります。 -
(3)契約を結ぶ前に弁護士へ相談を
フランチャイズ契約においては、締結の前段階で弁護士へ相談されることが、トラブルを防ぐためにも賢明な選択といえます。
これまで説明してきたように、フランチャイズ契約さまざまなリスクが潜んでいます。契約する際は契約書の内容をしっかりと読み解き、リスクを把握したうえで契約を締結しなくてはいけませんが、専門家以外の方がそれらを完全に理解することは困難でしょう。
弁護士であれば、契約書に隠されているリスクを明確にし、代理人として本部と交渉を行い、契約締結時だけではなく、解約条項なども適切な内容になるようにサポートできます。
5、まとめ
今回はフランチャイズ契約に適用される法律や本部の義務、契約の項目を踏まえ、契約締結時の注意点を紹介しました。
フランチャイズ契約にメリットが大きいことは確かですが、その反面、加盟店が一方的に不利な条件で契約を結んでしまうことが少なくありません。しかし、法律に詳しくない方であれば、自らが不利な内容の契約かどうかの見極めは難しく、難解な文契約書を隅々までチェックし理解することは容易ではないでしょう。契約を締結する際には弁護士のサポートを受けることを強くおすすめします。
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- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています