交通事故で寝たきりに! 適切な慰謝料を受け取るためにすべきこと
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交通事故によるケガの影響で寝たきりの障害者になってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けたうえで、加害者(任意保険会社)に対して慰謝料その他の損害賠償を請求しましょう。寝たきり状態であれば、高額の損害賠償が認められることも多いと考えられます。
交通事故の損害賠償金額は、請求に関する準備・対応次第で大きく変化し得るため、弁護士へ相談するのが得策といえます。
今回は、交通事故で寝たきりになった場合の後遺障害等級、慰謝料額の目安、損害賠償請求の準備・対応に当たっての注意点などにつき、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。
出典:「毎月の統計 交通事故月報(令和3年)」(神奈川県)
1、交通事故で寝たきりに|寝たきりの定義・原因・後遺障害等級
一言で「寝たきり」と言っても、その程度は千差万別です。
介護保険制度の要介護認定に用いられている「寝たきり度」の判定基準では、「1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する」状態が、もっとも深刻な「ランクC」とされています。(参考:「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」厚生労働省)
本記事では、「寝たきり」をランクCに相当する「1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する」状態と定義します。
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(1)交通事故で寝たきりになる主な原因
交通事故によって寝たきりになってしまう主な原因は、脳や脊髄などの中枢器官が傷つけられてしまうことにあります。
これらの中枢器官は全身の運動に関係するところ、交通事故によって損傷すれば、四肢麻痺が発生したり、植物状態に陥ったりして、結果的に寝たきりとなってしまうのです。 -
(2)寝たきりになった場合に認定され得る後遺障害等級
交通事故をきっかけとして寝たきりの状態になり、症状の改善が見込めない場合には「後遺障害等級」の認定を受けられます。
後遺障害等級とは、交通事故によるケガの治療後に残った、後遺症の部位・程度に応じて認定される等級です。
後遺障害等級によって、被害者が加害者に請求できる慰謝料・逸失利益の金額が大きく変わるため、適正な等級の認定を受けることが重要になります。
被害者が寝たきりになった場合、「後遺障害1級(要介護)」または「後遺障害2級(要介護)」が認定される可能性があります。1級(要介護) ・ 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
・ 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの2級(要介護) ・ 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
・ 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
寝たきりの状態では、生活を営むに当たって何らかの介護が必要となるでしょう。要介護の後遺障害等級は、介護が必要な頻度に応じて、1級と2級のいずれかに振り分けられます。
① 常に介護を要するもの(1級)
・ 生活全般において介護が必要な状態
・ 四肢麻痺や植物状態(遷延性意識障害)などの状態
※要介護3~5程度
② 随時介護を要するもの(2級)
・ 日常生活の一部の動作について、介護や声掛けなどが必要な状態
※要介護1~3程度
2、交通事故で寝たきりになった場合に、加害者へ請求できる慰謝料の種類
交通事故の結果、寝たきりになってしまった被害者は、加害者に対して「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と「後遺障害慰謝料」を請求できます。
また、被害者が寝たきりになったケースでは、近親者による慰謝料請求も認められる可能性が高いです。
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(1)入通院慰謝料(傷害慰謝料)
「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」は、入院や通院を強いられたことに伴う精神的損害を補填(ほてん)するものです。
入通院慰謝料の金額は、実務上「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」の別表Iまたは別表IIを目安として計算されています。 -
(2)後遺障害慰謝料
「後遺障害慰謝料」は、交通事故後に後遺症が残ったことに伴う精神的損害を補填するものです。
後遺障害慰謝料の金額は、認定される後遺障害等級に応じて目安が決まっています。
後遺障害1級・2級(要介護)の場合、後遺障害慰謝料の金額目安は以下のとおりです(裁判所基準)。1級(要介護) 2800万円 2級(要介護) 2370万円 -
(3)近親者の慰謝料
交通事故の被害者が死亡した場合、被害者の父母・配偶者・子は、加害者に対して固有の慰謝料を請求できます(民法第711条)。
さらに、被害者が死亡しておらず傷害されたに留まるとしても、被害者の生命が侵害された場合に比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合には、同様に父母・配偶者・子による慰謝料請求が認められると解されています(最高裁昭和33年8月5日判決)。
交通事故で被害者が寝たきりになった場合、被害者の父母・配偶者・子による慰謝料請求も認められるケースが多いです。これらの近親者の慰謝料額としては、一人当たり300~500万円程度が標準的となっています。
3、準備・対応次第で交通事故の損害賠償額が大きく変わる理由
被害者が獲得できる交通事故の損害賠償額は、請求に関する準備や対応によって大きく変化する可能性があります。
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(1)十分な資料が揃っていれば、適正な損害賠償が認められやすい
被害者が適正額の損害賠償を得るためには、因果関係や損害額に関する証拠資料を十分にそろえることが大切です。
治療費・通院交通費・介護費用など、多岐にわたる損害項目を漏れなく把握したうえで、それぞれに対応する充実した証拠資料を集めることができれば、損害賠償の増額につながります。 -
(2)後遺障害等級が慰謝料・逸失利益に大きく影響する
交通事故の損害賠償項目のうち、特に金額が大きくなる傾向にあるのが、後遺障害慰謝料と逸失利益です。
後遺傷害慰謝料と逸失利益は、それぞれ数千万円程度に及ぶケースも多いところ、いずれも認定される後遺障害等級に応じて、金額が大きく左右されます。
適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、申請を行う際に、後遺症の内容を正しく明確に記載した後遺障害診断書を提出することが重要です。
医師と適切にコミュニケーションを取り、後遺障害等級認定においてプラスに働く診断書を作成してもらえるかどうかが、後遺傷害慰謝料と逸失利益の金額に大きな影響を与える可能性があります。
なお、後遺障害等級の認定手続きを有利に進めるためには、加害者側の任意保険会社に申請を任せる「事前認定」ではなく、被害者自ら申請を行う「被害者請求」を行うのがおすすめです。
被害者に有利な書類を提出・追完できるなど、被害者主導で申請を進められるため、納得できる後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まります。 -
(3)算定基準によって損害賠償の金額に差が出る|裁判所基準による請求を
交通事故の損害賠償の算定基準には、以下の3種類があります。
① 自賠責保険基準
自賠責保険から支払われる保険金を算出する基準です。
被害者に最低限の補償を提供するという自賠責保険の趣旨から、計算される損害賠償額は、3つの基準の中でもっとも低額となります。
② 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が独自に定めている算定基準です。
任意保険会社が支払う保険金額を抑えるため、客観的な損害額よりも低い金額が計算される仕組みになっています。
③ 裁判所基準(弁護士基準)
過去の裁判例に基づき、被害者に生じた客観的な損害額を算定する基準です。
被害者にもっとも有利であり、かつもっとも公正な損害賠償算定基準となります。
加害者側の任意保険会社と示談交渉を行う場合、ほとんどのケースで任意保険基準による保険金額を提示されます。
しかし被害者としては、有利かつ客観的・公正である裁判所基準に基づき、加害者側に対して損害賠償を請求すべきです。
任意保険会社の主張に惑わされることなく、弁護士のサポートを受けながら、裁判所基準に基づく賠償を毅然と主張することが大切になります。
4、交通事故で重傷を負った場合は弁護士にご相談ください
交通事故で重傷を負い、寝たきりになるなど重い後遺症が残った場合には、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は、加害者側に対して請求可能な損害項目を漏れなく洗い出したうえで、裁判所基準に基づく適正な金額による損害賠償請求を行います。
非常に手間がかかる後遺障害等級認定の被害者請求ですが、弁護士に依頼すればスムーズにかつ適正な後遺障害等級の認定へのサポートが受けられます。
さらに、加害者側との示談交渉や訴訟などの手続きも弁護士が一括で代行できるため、ケガの治療や介護などに専念できるようになる点も大きなメリットです。
交通事故の損害賠償請求は、弁護士に相談してみましょう。
5、まとめ
交通事故で寝たきりになった場合、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・近親者の慰謝料などをはじめとして、多額の損害賠償を請求できる可能性が高いです。
損害賠償請求の準備・対応の仕方によって、獲得できる賠償額に大きな差が生じる可能性があるため、弁護士へのご依頼をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償に関する法律相談を随時受け付けております。交通事故で重傷を負い、ご自身やご家族が寝たきりとなってしまった方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスにご相談ください。
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