接見(面会)とは? 弁護士に接見を依頼するメリットと注意点を併せて解説
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警察庁の令和元年版警察白書によれば、横浜市のある神奈川県では平成30年の刑法犯の認知件数4万6780件に対し、検挙された件数は2万62件でした。
逮捕・勾留された本人に面会するための制度として接見がありますが、家族や知人が接見をするには制約があり、会いたいときにいつでも会えるわけではありません。一方、弁護士には接見交通権が認められており、逮捕直後の段階でも本人と接見できるため、本人の利益に役立つ可能性が高くなります。
逮捕された直後は本人も動揺していることが多く、勾留に関する判断が下る72時間以内に適切なアドバイスを受けられるかが、取り調べにおいて大変重要になります。
そこで今回は、逮捕・勾留されている方と面会するための接見制度について、弁護士による接見のメリットも含めて弁護士が解説していきます。
1、接見について
まずは、接見の概要について解説していきます。
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(1)接見とは
接見とは身柄を拘束されて収容されている被疑者・被告人と外部の人間が面会する手続きで、刑事訴訟法に規定されています。
接見には2種類あります。- 一般接見……家族や知人などとの一般の方との接見
- 弁護士接見……刑事弁護を担当する弁護士との接見
それぞれについては、2章で詳しく述べていきますが、留置場や拘置所に収容されている間は基本的に外部に出ることができないので、収容されている本人にとっては精神的な負担になります。接見は弁護士、家族、知人などとの会話や物の収受ができる貴重な機会なのです。
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(2)接見の差し入れ
逮捕・勾留されている場合、これまでの日常生活と比べると生活に必要な物が全部そろっているわけではありません。本人の生活の利便性を高めるために、接見の際に差し入れをすることが一定の範囲で認められています。
留置場・拘置所に差し入れが許可されている物は、一般に以下のとおりです。- 衣服
- 現金
- 本・雑誌
- 手紙・写真
- 便せん・封筒・切手
衣類はひもやフードがついていたり、装飾品がついていたりすると、自殺や安全への配慮から差し入れが禁止となることがあります。また現金は3万円まで、など制限があることもあります。
差し入れが禁止されている物は以下になります。- タバコ
- 食料・飲料・菓子(拘置所では許されるケースもあります)
- ゲーム類すべて
- タオル・ハンカチ
- 歯磨き粉・シャンプーなど容器の中身が入れ替えられる物
なお、差し入れは禁止されているものの、拘置所内では、飲料・菓子・新聞などを購入することができます。
また、差し入れの規定は各施設によって異なります。上記はあくまで目安とし、不明な場合は留置係や拘置所の職員へ確認しましょう。
2、一般接見におけるルール
家族や知人など、弁護士以外の方が本人と接見することを一般接見といいます。ここでは、一般接見におけるルールを解説していきます。
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(1)一般接見は勾留決定が出てから
一般接見できるのは、逮捕後に勾留決定が出てからです。
つまり、逮捕から最大72時間以内の留置場においては、原則として家族でも本人に会えないことになります。また手紙でのやりとりも担当刑事の許可がなければできません。 -
(2)接見できる日時や人数に制限がある
勾留決定によって接見できるようになっても、本人にいつでも接見できるわけではありません。一般接見の場合、接見できる日時や1日の接見人数などに制限があります。
施設によって異なる場合がありますが、一般接見できるのは一般に月曜日から金曜日までの平日のみで、接見できるのは午前9時から午後5時(正午から午後1時までを除く)までです。1日に接見できるのは1組3名までが多いでしょう。
また、1回の接見時間は15〜20分程度に制限されるのが一般的です。なお、取り調べなどで面会できない日もあります。 -
(3)一般接見は警察官の立ち会いが必要
家族や知人が面会する場合、罪証隠滅(犯罪の証拠を隠滅すること)を防ぐために、警察官が立ち会いを行います。立ち会いなしで接見することはできません。
また、接見で話されることは立ち会いの警察官によってすべて記録されます。会話の内容などによっては、立ち会いの警察官の判断で接見が打ち切られる場合があります。 -
(4)接見が禁止される場合がある
逃亡する疑いがある、罪証隠滅の疑いがある、などの理由で、一般接見が禁止される場合があります。これを接見禁止といいます。たとえば、組織的な犯罪の疑いがある場合、他人と接見することで罪証隠滅の指示や話し合いをする可能性があるため、接見禁止になる可能性があります。
逃亡または罪証隠滅の疑いは、主に以下の要素から判断されます。- 犯罪が重大であること
- 組織的な犯罪であること
- 住所不定であること
- 容疑を否認していること
接見禁止は、検察官の請求または職権によって裁判官・裁判所が判断します。
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(5)接見禁止の期間
接見禁止の期間については明確な法律の規定はありません。
接見禁止は被疑者が起訴されるまで続くことがありますが、起訴される前の段階で禁止が解除される場合もあります。
起訴前に接見禁止が解除される例としては、被疑者が全面的に自白した場合や、共犯関係の捜査の必要性がなくなった場合などです。
一方、起訴された後も接見禁止が続きやすいケースとしては、共犯者が複数人存在し、本人が起訴された後も共犯者の取り調べが終わっていない場合などです。
起訴後勾留の接見禁止は遅くとも検察官の立証が終了した段階で解除されるのが一般的ですが、接見禁止の開始から解除まで数か月ほどかかる場合もあります。 -
(6)接見禁止を解除する方法
接見禁止を解除する方法として準抗告・抗告と、接見禁止処分の一部解除の申し立てがあります。
●準抗告・抗告とは
接見禁止の決定に対して異議を申し立てる手続きです。第1回公判前の手続きが準抗告で、第1回公判後の手続きが抗告になります。準抗告・抗告が認められた場合、接見禁止が解除されて接見が可能になります。
●接見禁止処分の一部解除とは
接見禁止の必要性がないことを主張して、接見禁止を一部解除してもらう嘆願のことです。法律上は明文の規定がなく、あくまで裁判所へのお願いという形になります。
たとえば、接見の解除を家族だけに限定して申し立てると、裁判所が一部解除を許可することがあります。
3、弁護士が接見するメリット
弁護士接見には複数のメリットがあります。それぞれのメリットを解説していきます。
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(1)警察官の立ち会いがない
一般接見では警察官の立ち会いがありますが、弁護士接見の場合は警察官の立ち会いがありません。また、一般接見では会話の内容が捜査機関によって記録されますが、弁護士接見では記録されないため、会話の秘密が守られます。
会話のプライバシーが保護されることによって、本人がいいたいことを自由に発言したり、聞きたいことを質問しやすくなったりします。また、警察官が立ち会わないことから、精神的負担も軽減できるでしょう。
また、弁護士と接見する際に、書類や物品の授受が可能です。家族からの手紙や写真など預かり物を渡すこともできるので、物理的にはもちろん精神的な支えとなることができるでしょう。 -
(2)逮捕直後から接見できる
弁護士であれば逮捕直後から接見することが可能です。
もしも、捜査機関から取り調べを受ける72時間の期間、誰にも会うことができなければ、精神的に大きく追い詰められてしまう可能性は少なくありません。もっとも危惧すべきは、早く解放されたいという気持ちから、無実であるにもかかわらず自分がやったと話してしまい、調書をとられてしまうなどです。
弁護士が逮捕直後に接見しアドバイスすることで、不利な供述の回避が期待できます。
また、本人の状態、犯罪の嫌疑、今後どうなるかなど、接見した弁護士を通して守秘義務の範囲内で、家族に伝えることができます。 -
(3)日時の制限なしで面会ができる
一般接見では平日の限定された時間帯のみに接見できるのが通常ですが、弁護士であれば本人が実況見分などで外出している場合などを除き、原則として日時の制限なしでいつでも本人と面会ができます。1日に接見できる回数の制限も原則ありません。
また、家族や友人が面会しようとすると、捜査の都合で断られるケースがありますが、弁護士の接見は被疑者・被告人にとって重要な権利なので、取り調べを中断してでも接見が行われる場合もあります。 -
(4)接見禁止の場合も接見できる
弁護士は接見禁止の場合でも接見することが可能です。家族が接見できなくなっても、弁護士が代わって接見することで家族の状況や意向などを伝えることができます。
また、弁護士は自分が接見できるだけでなく、抗告・準抗告や接見禁止処分の一部解除の申し立てなど、家族が本人と会えるようにさまざまな手続きを行うことが可能です。
4、刑事事件は早期に弁護士へ相談を
刑事事件は、逮捕されると非常にスピーディーに進むため、早期に弁護士に相談することが重要です。弁護士に相談することで以下のようなメリットが期待できます。
- 逮捕されてすぐに弁護士と接見し、法的なアドバイスや今後の流れの説明を受けられる
- 法的アドバイスを早期に得ることで、取り調べに備えることができる
- 弁護活動によって勾留を回避できる可能性が高まる
- 被害者との示談交渉を依頼でき、成功すれば不起訴処分になる可能性が高まる
なお、初回だけ無料で弁護士と接見できる制度として、日本弁護士連合会(日弁連)が提供する当番弁護士制度があります。しかし、2回目以降から有償になること、弁護士を選ぶことできないため相性や実績は不明であることには、注意が必要です。
5、まとめ
逮捕・勾留された本人と接見する方法として、家族や知人などによる一般接見と弁護士による弁護士接見があります。
弁護士接見の場合、逮捕された直後も本人と接見できる、日時や回数の制限を受けずに接見できる、警察官の立ち会いなく接見できるなどのメリットがあります。また、刑事事件で早期に弁護士に依頼すると、被害者と示談交渉して不起訴処分を得られる可能性や、弁護活動によって勾留を回避できる可能性が高まるなどが期待できます。
家族や知人が逮捕・勾留されてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスに早期にご相談ください。刑事事件の経験豊富な弁護士が迅速かつ親身に対応いたします。
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