釈放と保釈の違いとは? 早期に身柄を解放されるためにとるべき対応

2021年06月28日
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釈放と保釈の違いとは? 早期に身柄を解放されるためにとるべき対応

芸能人などが釈放されるニュースで深々と頭を下げるシーンを見たことがある方は少なくないでしょう。しかし、なぜ釈放されたのか、釈放された後は罪に問われないのかなど、釈放後にどうなるのかよくわからないという方が多数なのではないでしょうか。

しかし、家族や知人など、身近な方が逮捕されてしまった場合はひとごとではありません。正しく、釈放や保釈という言葉を理解し、早期釈放に向けて対応を進める必要があります。

本コラムでは、釈放とは何か、早期釈放を勝ち取るために何をすべきかを、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。

1、逮捕された後の刑事事件の流れ

まずは、逮捕されてから刑事裁判に至るまでを基本的な知識として押さえておきましょう。刑事事件の手続きは大まかに3段階に分けることができるため、それぞれの段階ごとに流れを解説していきます。

なお、捜査の対象となり起訴される前の方のことを“被疑者”、起訴された方を“被告人”と称するため、本コラムでもこれらの呼称を用いて解説します。

  1. (1)逮捕から送検まで

    刑事事件のほとんどは警察が主体的に捜査を行うため、逮捕されると警察署に連行されて留置場に収容されることになります。その後、最大48時間は留置場で寝起きしながら集中的な取り調べを受けることになります。

    この48時間は、携帯電話などの私物は自由に使えず勤務先や家族と連絡がとれない状態になり、唯一面会ができるのは弁護士のみとなります

    比較的軽い罪に当たる犯罪では、逮捕された翌日には微罪処分により釈放されて刑事手続きが終わることもあります。微罪処分で釈放される基準は各地の検察庁により定められており、ケース・バイ・ケースですが、次の点がポイントになるといわれています。

    • 被害が軽微でありその回復(弁償)がされる見込みがあるか
    • 被害者が処罰を望んでいるか
    • 犯罪に至るまでの事情や犯行の危険性
    • 前科の有無


    微罪処分に該当しない場合、事件は検察庁へ送致されます。いわゆる、送検といわれる手続きです。

  2. (2)勾留から起訴・不起訴の処分まで

    送検されると、まず検察官の取り調べを受けます。検察官とは、刑事事件の捜査をしたり、起訴して刑事裁判を受けさせるか否かを決めたりする権限を持つ公務員です。

    検察官の取り調べは、送検から24時間に行われます。この段階で身柄拘束の必要がないと判断されれば釈放されますが、そうでないと判断された場合、最大20日間におよぶ勾留が続く可能性があります。勾留されると、刑事施設に身柄を拘束され、取り調べを受ける日が続きます。

    なお、面会を禁止する決定がされていなければ、家族も面会や差し入れができるようになりますが、面会時間は10分から15分程度で、警察官が立ち会うことが一般的ですただし弁護士であれば、時間制限や警察官の立ち合いがなくプライバシーを守った会話をすることができます

    勾留期間中に検察官は刑事裁判を受けさせるか否かの方針を固め、次のいずれかの処分が行われます。

    1. ① 起訴(刑事裁判によって罪を追及する)
    2. ② 不起訴(刑事裁判をしない)
    3. ③ 証拠書類の審査で罰金刑が決まる略式起訴
    4. ④ 処分を保留して釈放


    ②③④の処分になった場合は釈放されますが、①の場合はそのまま勾留が続くことになります。

  3. (3)刑事裁判

    勾留期間中に起訴されると、警察の留置場や拘置所で身柄を拘束されたまま刑事裁判を受けることになります。起訴されてから裁判開始までの期間はおおよそ2か月ですが、継続の必要があると判断されれば1か月ごとに勾留期間が更新されていきます。

2、逮捕、勾留されてから釈放される手段とは?

逮捕・勾留されてしまった場合、釈放されるためにはどのような対応が必要なのでしょうか。釈放と保釈について詳しく解説します。

  1. (1)釈放される理由

    前章で触れたものも含めて、逮捕、勾留されてから釈放される理由として主なものをまとめると次のようになります。

    ① 逮捕中の釈放

    • 微罪処分による釈放
    • 勾留されないことによる釈放


    ② 起訴前の勾留中の釈放

    • 準抗告による釈放
    • 不起訴処分による釈放
    • 略式起訴による釈放
    • 処分保留による釈放


    ③ 起訴後の勾留中の釈放

    • 準抗告による釈放
    • 保釈による釈放
    • 無罪や執行猶予付き懲役刑などの判決による釈放


    保釈とは釈放される理由のひとつであり、逮捕されてから最大23日間身柄拘束を受けた後に可能になる手続きです。保釈の方法などは次章で詳しく解説します。

  2. (2)逮捕、起訴前の勾留段階での釈放

    逮捕と起訴前の勾留は、実態として、主に取り調べや捜査を行うことに主眼を置いたものであることが多いと言わざるを得ません。そのため、逮捕や勾留が認められてしまうと、被疑者側は勾留の不当性を主張して不服の申し立て(準抗告)をする、被害者がいれば示談交渉をするなどして、釈放を目指すことになります。

    なお、捜査に積極的に協力して早期終結を目指すのが有効な場合もありますただし、釈放されたいために捜査官の誘導に乗った供述をして後の刑事裁判で問題になるケースも少なくありませんいずれにせよ、釈放を勝ち取るためには、弁護方針について弁護士との綿密な打ち合わせをしながら捜査に応じるのが不可欠といえます

  3. (3)起訴後の勾留段階での釈放(保釈)

    起訴後の勾留の段階では、捜査はすでに終了して刑事裁判の準備のための期間ということができます。また、この時点で逮捕されてから最大23日間もの身柄拘束が続いており、仕事や家庭など社会生活上の大きな支障が生じていることも想像に難くありません。

    そのため、勾留の必要性が認められる場合であっても、一定の金額を納めることによって身柄を解放する保釈制度が認められています(刑事訴訟法88条)

    また、裁判所は勾留の期間が不当に長期化したと認めた場合、勾留の取り消しや保釈をすることができます(刑事訴訟法91条)。ただし、実際の刑事実務では、勾留の長期化による勾留取り消しや保釈が認められることはほとんどなく、保釈による釈放を目指すのが一般的です。

3、保釈手続きの流れや釈放のタイミング

保釈請求により釈放を目指す手続きの流れを解説します。

  1. (1)保釈請求

    保釈は起訴後の段階になって認められる制度です。

    起訴後も勾留が続く事件は、基本的には軽微とはいえない事件で、検察官としても入念に証拠を収集して刑事裁判に臨むのが一般的な方針といえます。そのため、起訴前の勾留が認められる最大20日間の最終日に起訴されるケースがほとんどです。

    保釈請求は、弁護人や被告人の配偶者、親、子、兄弟姉妹などの親族が行うことができ、起訴された裁判所に保釈請求書などの書面を提出して行います。

  2. (2)保釈の判断

    保釈請求書が提出されると、裁判所は検察官の意見を聞いた上で、証拠書類などを検討して保釈の許否や保釈保証金の額を判断します。許否の判断が出るまでの期間は、裁判所にもよりますが、2~3日程度かかることもあります。

  3. (3)保釈保証金と保釈条件

    保釈が許可された場合、保釈保証金の額や保釈条件が指定されます(刑事訴訟法93条1項)。
    保釈制度の趣旨は、証拠隠滅や逃亡を防ぐため勾留の必要性は認められるものの、身柄を拘束する代わりに保釈保証金を預かって釈放するというものです。

    そのため、保釈保証金の金額は
    「犯罪の性質および情状、証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない」(同条2項)
    とされています


    ただし、裁判実務では、その金額は100万円を下回ることはほぼないのが実情です。また、証拠隠滅や逃亡を防ぐための具体的な禁止事項が保釈条件として指定されることもあります(同条3項)。

  4. (4)保釈により釈放されるタイミング

    指定された保釈保証金を裁判所へ納付すると、直ちに釈放されます。保釈が許可されても保釈保証金を納付しない限り釈放されることはありません。

    なお、保釈を許可する決定がなされて保釈保証金を納付しても、検察官が不服申し立てをした場合、保釈許可の効力が停止されてすぐには釈放されない可能性もあります。ニュース番組などで、夜間に警察署や拘置所から釈放されるシーンが報じられることもありますが、不服申し立てに対する判断は当日の夜になされることもあります。

  5. (5)保釈が許可されるポイント

    刑事訴訟法では、以下の事由がない限り、保釈を許可しなければならないとされています(刑事訴訟法89条)。

    1. ① 刑の下限が1年以上の懲役または禁錮に当たる罪で起訴されている
      例:殺人罪、傷害致死罪、強制わいせつ等致死傷罪、強盗(致死傷)罪、強制性交等(致死傷)罪、現住建造物等放火罪など

    2. ② 過去に刑の上限が10年を超える懲役または禁錮に当たる罪で有罪判決を受けた前科がある
      例:①の罪に加えて傷害罪など

    3. ③ 常習として刑の上限が3年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯して起訴されている
      例:①②の罪に加えて窃盗罪、詐欺罪、強制わいせつ罪、器物損壊罪など

    4. ④ 証拠隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある

    5. ⑤ 被害者や目撃者などに危害を加えたり威迫すると疑うに足りる相当な理由がある

    6. ⑥ 被告人の氏名または住居がわからない



    これらの条件に該当する場合であっても、裁判所の裁量により保釈を許可することも法的には可能とされています(刑事訴訟法90条)。

4、早期釈放に向けた弁護活動の重要性

刑事事件では、早期釈放を目指す上で次の点が明暗を分けるポイントになります。

  1. ① 被害者がいる場合、被害弁償を申し入れて示談を成立させる
  2. ② 釈放後の指導監督体制を整えて、証拠隠滅や逃亡、再犯の防止策を講じる


これらの行為は、逮捕されてしまうと自分で行うことは困難です。

逮捕された方やその近親者などが不用意に被害者に接触すると、逆に被害感情を悪化させる可能性もあります。刑事弁護の実績が豊富な弁護士であれば、被害者の感情にも配慮した示談交渉の方法や釈放後の環境についての重要性にも考慮しつつ、最適なサポートが期待できるでしょう。

また、勾留や勾留期間延長の回避、不起訴処分へ導くための弁護活動は、刑事手続きの進捗(しんちょく)に合わせて行う必要があります早期釈放を勝ち取るためには、いち早く、実績のある弁護士による弁護活動を行うことが有効な対策といえるでしょう

5、まとめ

今回のコラムでは、釈放と保釈について解説しました。刑事弁護は弁護活動が早ければ早いほど身柄拘束の長期化を食い止められる可能性も高くなります。もし逮捕されてしまった場合や逮捕されそうな場合は、まずはベリーベスト法律事務所 横浜オフィスにご相談ください。刑事弁護の経験が豊富な弁護士が迅速にサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています