盗撮をした際の後日逮捕の可能性はある? 逮捕前にしておくべきこととは?横浜の弁護士が解説

2018年12月06日
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盗撮をした際の後日逮捕の可能性はある? 逮捕前にしておくべきこととは?横浜の弁護士が解説

2017年7月、JR関内駅のエスカレーターで女性のスカートの中にスマートフォンを入れて盗撮した30代の男性を、それに気づいた通行人が取り押さえ、逮捕となった事件がありました。

「盗撮で逮捕された」というと、被害者本人がそのとき気づいて声をあげ、周りの人が気づいて取り押さえる「現行犯逮捕」で捕まった……とイメージされる方が多いかもしれません。

もし盗撮をしたとしても、その場で捕まらずに逃げきれたら……。後日逮捕されることはないと考えている方もいるかもしれませんが、もちろん、そのような事実はありません。盗撮でも後日になって逮捕されることはあります。盗撮と逮捕の関係を弁護士が解説します。

1、盗撮で後日逮捕の可能性はある? また警察に捜査される可能性は?

まずはどのような行為が盗撮として罰せられるのか、捜査される可能性について、あらためて確認しておきましょう。

  1. (1)盗撮行為とは

    刑法上に、「盗撮罪」という罪はありません。盗撮行為は撮影した状況や内容によって、各都道府県で制定されている「迷惑防止条例」や「軽犯罪法」をはじめとした各法律に違反した者として罰せられることになります。

    ●迷惑防止条例違反として取り締まりを受けるケース
    神奈川県の場合、「神奈川県迷惑行為防止条例」が「迷惑防止条例」にあたり、同条令第3条において、盗撮を禁じる規定が設けられています。実際に撮影していなくても、人の下着や身体を記録する目的で、写真機やそれに類するものを設置したり人に向けたりすることも、禁じられています。

    これに違反した場合には、「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処せられます(同条例15条)。さらに常習として違反行為をした者は、「2年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処すると定められています(同条例16条)。

    ●軽犯罪法違反として取り締まりを受けるケース
    通常着衣を付けないような場所やプライベートスペースをのぞき、盗撮行為をしたケースでは、軽犯罪法違反として取り締まりを受ける可能性があります。たとえば風呂や住居、脱衣所、更衣室などで盗撮を行うと、軽犯罪法で設定される「窃視(のぞき見)の罪」に問われることがあります。

    軽犯罪法違反として有罪となると、同法第1条の冒頭で示されているとおり「拘留(こうりゅう)」もしくは「科料」に処されることになります。しかし、プライベートスペースへ侵入していたときは、刑法130条に規定される「住居侵入罪・建造物等侵入罪」が成立し、さらに罪が重くなる可能性もあるでしょう。

    ●児童ポルノ法違反として取り締まりを受けるケース
    盗撮した対象が18歳未満であった場合は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」で禁じられている「児童ポルノの製造」にあたる可能性があります。

    「児童ポルノの製造」とは、18歳未満の児童の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位」が「露出され又は強調され」「性欲を興奮させ又は刺激するもの」を撮影した場合にあてはまり(同法第7条5項)、罰則は「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」と定められています。

    このように、盗撮行為は、状況によっては重い刑罰が科せられます。

  2. (2)警察に捜査される可能性

    盗撮を行い現場から逃走したとしても、被害者が警察に被害届を提出する、目撃者が通報する、盗撮の証拠が押収されるなどした場合、警察に事態が認知され、捜査が開始されます。

    また近年は、本人の証言、目撃者の証言に加え、駅構内や街頭の監視カメラ映像や、ICチップ内蔵型入場券などによる駅改札の出入場記録など、客観的な証拠も集まりやすくなっています。捜査により盗撮した人物が特定される可能性は、十分にあるといえるでしょう。

  3. (3)後日逮捕される可能性

    では、盗撮した犯人と疑われたら、すぐ逮捕されるのでしょうか。逮捕の種類と合わせて説明します。

    逮捕の原則として、日本国憲法第33条において、何人も現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ逮捕されないとされており、あらかじめ司法官憲(裁判官)が発する令状(逮捕状)があることを前提としています。逮捕により身柄を拘束するということは、一定の人権を制約することになるためです。

    そのため、逮捕状が発せられる要件はとても厳格に決められています。具体的には「年齢や境遇、犯罪の軽重や態様を勘案し、逃亡のおそれがなく、かつ、証拠隠滅のおそれがない場合は、逮捕状の請求を却下しなければならない」とされています(刑事訴訟規則第143条の3)。

    つまり、法で認められている逮捕方法は、原則は「通常逮捕」であり、犯行中犯行時に身柄を取り押さえることを認めた「現行犯逮捕」、重要犯罪が疑われるときだけ適用可能な「緊急逮捕」の3つに分けられます。

    ●通常逮捕
    検察官または警察官が「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕する」と定められています(刑事訴訟法第199条)。

    犯行時に逮捕されることなく帰宅でき、後日になって逮捕されるときは、この「通常逮捕」が行われます。しかし、盗撮した内容、現場から逃走しているという状況や、その後の捜査への対応によっては、逃亡のおそれや撮影データの抹消など証拠隠滅のおそれがあると判断されなければ逮捕状が発行されることはありません。まずは事情聴取に対応するよう、出頭の要請が来ることが多いようです。

    ●現行犯逮捕
    実際に犯行中であるか、犯行直後であることを、直接知覚し得る状況にあるとき、何人でも、逮捕状をなくして犯人を逮捕することを「現行犯逮捕」といいます(刑事訴訟法第212条、同213条)。つまり、現行犯逮捕のみ、警官でなくても逮捕することが許されています。

    盗撮行為の場合、実際に盗撮行為をしているところを目撃されて、現行犯で逮捕されることが多く、冒頭にご紹介した事件もこれにあたります。

    ●緊急逮捕
    殺人など一定の刑罰の重い罪を犯したと疑われる場合に、逮捕状発布を待たず、被疑者の逮捕を行うことをさしますが、盗撮はこれにあてはまらないため、ここでの説明は省略します。

2、盗撮の後日逮捕、警察の動きは?

盗撮行為で捜査が行われ、通常逮捕されるとしたら、その手続きはどのように行われるのでしょうか。

  1. (1)警察で任意の取り調べを受ける(任意出頭)

    盗撮の捜査において、被疑者とされた場合は、まず警察から呼び出しを受け、任意の取り調べを要請されることが多いと考えられます。これに強制力はなく、あくまで任意のため、拒否することもできますが、できる限り、取り調べに応じましょう。任意の取り調べを受けることに不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

    前述のとおり、被疑者が犯行を認め、逃亡や証拠隠滅のおそれがないとみなされたら、逮捕状は請求されず、すぐに帰宅できるでしょう。ただし、無罪放免ということではなく、「在宅事件扱い」として、身柄は拘束されずに捜査が行われていくことになります。

    被疑者が任意の取り調べの拒否を続けていると、逃亡や証拠隠滅の可能性があるとみなされ、逮捕状請求に踏み切られてしまう可能性があることは否定できません。

  2. (2)後日、警察が家に来て逮捕(通常逮捕)される

    警察の捜査の結果、逮捕に相当すると判断された場合は、裁判所に逮捕状を請求します。これが認められ逮捕状が発行されると、通常逮捕が実施されることとなります。

    警察は、被逮捕者の自宅に向かい、被疑者に対して逮捕状を見せたうえで、逮捕状が発せられている旨、被疑事実、罪名を告知し、被逮捕者を逮捕します。

3、盗撮で逮捕される前に弁護士に依頼するメリット

もし、捜査の手が及び、後日に逮捕され72時間以内に釈放されなかった場合、「勾留(こうりゅう)」され、原則10日間、延長が認められればさらに10日間、身柄が拘束されることになってしまいます(刑事訴訟法第207条、208条、208条2)。

勾留された場合、起訴か不起訴が決まるまでのあいだだけでも最大23日間も身柄の拘束を受け続けることになります。仕事や今後の生活にも大きく支障をきたす可能性は否定できません。

では、逮捕される前にできる対策はあるのでしょうか。それは、まずは罪を反省し、弁護士に相談することです。

  1. (1)被害者との示談交渉

    「示談」とは、被害者と加害者が直接交渉を行い、事件を解決しようとするものです。

    被害者との示談交渉に入っていることが明確であれば、加害者が反省し、被害者に対して損害賠償をする意思があるとみなされます。示談が成立する際は、多くのケースで加害者が被害者に対して損害賠償を行い、被害者は加害者に対して「罪を許す」「加害者の処罰を望まない」などの「宥恕(ゆうじょ)」を行います。示談書に「宥恕(ゆうじょ)文言」や告訴しないことなどを約束して入れることができれば、逮捕されない可能性が高まります。また、逮捕されたとしても、示談が成立していれば、検察への送致や起訴に至らない可能性が高まるほか、万が一起訴されたとしても、減刑を考慮する材料になると期待できます。

    ただし、多くの被害者は、加害者や加害者の家族が直接、示談交渉したいと申し出ても、応じないケースのほうが多いものです。また、被害者と面識がないケースも多々あるでしょう。その場合は示談そのものができないため、被害届が出されたタイミングで弁護士を介して示談を行う必要があります。たとえ相手と知り合いであっても、基本的には弁護士を介してのみ交渉に応じる場合がほとんどです。

    弁護士は、加害者の代理人として、被害者と交渉を行うことができます。交渉の過程も第三者として報告することができるため、もし、被害者側が過剰な賠償金を求めたなどの理由で示談が成立しなくても、無駄にはなりません。

  2. (2)自首や任意聴取同行も可能

    自首を検討している、もしくは、警察から任意聴取の依頼が来ているものの、ひとりで対応することに不安を感じているケースは少なくありません。その場合も、弁護士に依頼していると、同行することができます。

    自首したり、任意聴取に応じたりという行動は、逃亡のおそれがないという判断の材料のひとつとなります。よって、長期にわたる身体的拘束を受ける可能性が減ると考えられるでしょう。

    いずれにしても、早いタイミングで弁護士に相談することで、被害者に対する対応なども含め、できることが増えます。まずはひとりで悩まず、弁護士に相談してみることをおすすめします。

4、まとめ

盗撮を行い、逃走してしまったことを悔やんでも、もうその事実は変わりません。

いずれ警察の捜査が及び、家庭や仕事に影響があるのではと不安な場合には、まず弁護士にご相談ください。自首や示談も念頭に置き、迅速に手を打てるようにしておくのが早期に問題解決を図れる第1歩です。

仮に逮捕されてしまったとしても、前述のとおり、弁護士を通じて示談交渉などのサポートを受ければ、不起訴、減刑、執行猶予を獲得できる見込みがあります。

逮捕・勾留されてしまうと自由に身動きが取れなくなります。できるだけ早い段階で弁護士を依頼することをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスまで相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています