ストーカー行為で息子が逮捕されたら? 禁止命令への対処法とは

2018年11月15日
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ストーカー行為で息子が逮捕されたら? 禁止命令への対処法とは

行き場のない恋心や思い込み、逆恨みによる行動は、ストーカー行為として犯罪になってしまうこともあります。増加するストーカー被害に対し、神奈川県では市役所や横浜地方裁判所などへ公共相談窓口を置いています。しかし、もし、あなたの家族が加害者の立場となったらどうすればいいのでしょうか。

自分の息子がストーカーの加害者として禁止命令や警告を受け、あるいは逮捕された場合にはどうすればいいのか、横浜オフィスの弁護士が解説します。

1、改正されたストーカー規制法

ストーカー行為を規制し、処罰根拠となる法律は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)です。ストーカー規制法は平成12年に施行された法律ですが、実情を踏まえて改正されました。 この改正法が施行されたのが、平成29年1月3日(全面施行は同年の6月14日から)です。そこで、まず改正後のストーカー規制法ではどういう行為を規制し、どのような罰則を定めているのかを具体的にみていきましょう。

  1. (1)ストーカー規制法により規制される行為

    「ストーカー規制法では「つきまとい等」と「ストーカー行為」という、2つの行為を規制しています。「ストーカー行為」とは、「同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること」(同法第2条3項)と定められています。

    では、「つきまとい等」はどのような行為でしょうか。
    ストーカー規制法では、これを具体的な8種類の類型に分けて法第2条1項の各号に規定しています。

    ●待ち伏せ行為など
    まず、しつこく対象者につきまとい、あらかじめ相手の通る道を把握し、そこで待ち伏せをする行為が定められています。さらに、相手の進行方向へ立ちふさがって通さない行為、相手の自宅や勤め先を見張り、理由なく突然押し掛け、あるいはうろついて不安を与えるような行為も規制されます。

    ●相手を監視する行為など
    行動を監視していると相手に思わせて圧力を与えるような行為が規制されています。

    ●好意を押し付ける行為など
    会ってほしい、付き合ってほしいといったように、相手に行う義務のないことをするよう求める行為が規定されています。

    ●好意を強要して脅迫する行為
    「死ね」や「殺す」など、荒々しく乱暴な言葉を吐くだけでも、やはりつきまとい等に該当します。

    ●無言電話やSNSなどを何度も送信する行為
    電話を掛けておきながら何も話さない、拒絶されてもなお繰り返し電話する、FAXや電子メールを続けざまに送信するといった行為が対象とされています。

    ●汚物の送付など
    便や尿といった汚物や、死んだ動物、それ以外にも嫌悪の気持ちなどを催させる物を送りつける行為が対象です。

    ●誹謗中傷を行う、言いふらすなどの行為
    特定の相手の名誉を侵害するような行為が規制対象となっています。

    ●悪意ある画像の送付など
    性的な嫌がらせとなる言動や、文書、図画、電子データを送りつける行為が規制されています。

    これらの行為を、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、同じ相手に対して繰り返し行えば、ストーカー行為に該当します。

    なお、第1号から第4号と、第5号のうちの電子メールの送信に限っては、安全や平穏、名誉が害されるか、著しく行動の自由が害されるとの不安を覚えさせるような方法で行われると、「ストーカー行為」とみなされます。

  2. (2)つきまとい等、ストーカー行為の規制方法

    つきまとい等やストーカー行為を、被害者が警察に相談すると、警察は次のいずれかの行動を起こすことになります。

    ●警告
    まず、警察本部長等による警告がなされることがあります(同法第4条)。

    警告は、文字通り「これ以上ストーカー行為などを繰り返してはならない」、という意味で行われるものです。「警告」自体には、強制力や違反したときの罰則はありません。

    ただし、警告という段階を踏むことなく、いきなり禁止命令や逮捕がなされることもあります。警告に違反した場合や被害者の申し出があった場合、あるいは被害者の安全や平穏が害されかねないという緊急性がある場合は、公安委員会によって禁止命令がなされます(法第5条)。

    ●禁止命令
    禁止命令とは、警告と同じ、「これ以上ストーカー行為などを繰り返してはならない」という内容を、今度は「命令」するものです。つまり、禁止命令には法的な効力があり、違反した場合の罰則が定められています。

    警告を受けたときはもちろん、禁止命令が出たときは、どのような理由があろうと、直ちに相手への接触をやめたほうがよいでしょう。

    ●逮捕
    ストーカー規制法は、刑法以外で刑事罰の定められている特別刑法です。

    禁止命令に背いた、もしくは、警告段階でも過剰な行動があった、などのケースでは、逮捕される可能性があります(刑事訴訟法第199条1項など)。

  3. (3)ストーカー規制法の罰則

    つきまとい等やストーカー行為をし、あるいは禁止命令に違反してそれらの行為を続けた結果、有罪判決が下れば、刑罰を受けることになります。

    ストーカー規制法で定められている刑罰は、懲役刑と罰金刑です。

    ●ストーカー行為をした者
    「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」(同法第18条)
    ●禁止命令等に違反してストーカー行為をした者、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることによりストーカー行為をした者
    「2年以下の懲役」または「200万円以下の罰金」に処せられます(法第19条)。
    ●上記以外の禁止命令等に違反した者
    「6ヶ月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」(法第20条)。

    いずれも有罪になれば、たとえ罰金刑でも前科がつくことになります。前科がつけば、今後の人生にも大きな影響を残すことになる可能性は否定できません。

2、ストーカー規制法違反で逮捕されたら

たとえば、息子がストーカー行為によって逮捕された場合、その後はどのような処遇となるのでしょうか。逮捕後の流れと、実刑を免れ、あるいは刑を軽くするための方法をご説明します。

  1. (1)逮捕から72時間以内は面会不可

    逮捕されて警察へと連行されると、取り調べが始まります。

    被害者との示談が成立しているなど、状況によっては微罪処分として釈放されることもありますが、そうでなければ検察へと送致されます。検察でも引き続き取り調べが行われ、刑事裁判になるか(起訴すべきか)どうかの判断がなされます。

    それぞれ、身柄を拘束したまま取り調べを行うためには、刑事訴訟法に基づいた期間・制限があります。具体的には、警察では逮捕から48時間、検察では送致から24時間が上限と定められています。

    なお、この72時間以内は、実務上の取り決めとして、たとえ親であっても面会は許されません。自由に面会できるのは、弁護士のみと定められているのです。

    なお、逮捕から72時間のあいだで起訴するか、起訴しないかの結論が出せず、引き続き身柄の拘束を行ったまま捜査を行う「勾留」の必要があるときは、検察は裁判所へ勾留請求を行います。

    もし勾留が認められてしまうと、引き続き最大20日間も身柄を拘束され続けることになります。長期にわたり、学校や仕事を休む必要があることから、日常生活への影響は大きなものとなる可能性もあります。

  2. (2)身内としてはどうすべきか

    警察や検察での取り調べにおいては供述調書という書面が作られ、刑事裁判での証拠となります。このとき、逮捕された者(被疑者)の心理状況によっては、してもいない行為をしたと発言するなど、状況が不利になる供述ばかりしてしまい、これらの発言が書面化されてしまうこともあります。

    しかし、弁護士に依頼すれば、被疑者と面会した上で、被疑者にとって有利になるような情報をきちんと伝えるためのサポートが得られます。適切な捜査が行われてないようであれば、指摘を行い、是正を求めることも可能です。

    さらに、弁護士は被害者との示談も行えます。示談が成立すれば、警察や検察は被害者の処罰感情がないと判断します。よって、そもそも事件化されないことや、長期にわたる身柄拘束や起訴を回避できる可能性が増します。また、たとえ刑事裁判となったとしても刑が軽くなる可能性もあるでしょう。

    取り調べを受けている最中の被疑者は、不安で動揺していることが多いものです。そのようなとき、弁護士という味方がいるだけでも心強いものです。

3、まとめ

恋愛感情や好意に基づく行為でも、それが相手に望まれたものではなければ、ストーカー規制法による規制対象となります。もし息子や身内がストーカー行為によって禁止命令を受けたときや、逮捕されてしまったときは、なるべく迅速に弁護士への相談することをおすすめします。また、本人が禁止命令を受けてもなお相手に接触しないよう、家族としては見守る必要があります。

弁護士は、相手との示談交渉や刑事裁判における弁護活動を行えることはもちろん、逮捕されて不安な気持ちでいる本人の心理的なサポートにもなります。ストーカー行為を2度としないよう、第三者として、冷静な立場からのアドバイスも行えるでしょう。

息子がストーカー行為で逮捕されてしまった、逮捕されてしまうかもしれないという方は、まずはベリーベスト法律事務所 横浜オフィスで相談してください。刑事事件の対応経験が豊富な横浜オフィスの弁護士が、不当な結果とならないよう、尽力します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています