よくある近隣トラブルと解決方法について横浜オフィスの弁護士が解説

2020年02月10日
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よくある近隣トラブルと解決方法について横浜オフィスの弁護士が解説

住宅地という一面もある横浜市内では、時折近隣トラブルが発生するようです。横浜市のホームページでは、近隣トラブル相談についての情報が掲載されています。隣人や近所にまったく気を使わない方や、最低限のマナーやルールを守れない方もいるでしょう。たとえあなたが気をつけて生活をしていたとしても相手にとっては苦痛であり、結果トラブルとなるケースも考えられます。

近隣トラブルが発展し、最終的には精神的・肉体的苦痛や財産権の侵害を受けてしまうこともあるでしょう。万が一、そのような事態に陥ってしまったとき、どのように対応すればよいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。

1、近隣トラブルの受忍限度について

民法には、第709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という規定があります。

被害者の立場から考えた近隣トラブルとは、「近隣に住む人の不法行為により、損害を受けること」といえるでしょう。そして、近隣トラブルを起こした相手に対して損害賠償や不法行為つまりトラブルの原因となっている行為をやめること(差し止め)を請求できる場合があります。

ただし、損害賠償などを相手に請求するためには、相手の不法行為によってあなたの権利や利益が損害されたことについての因果関係が立証する必要があります。つまり、あなた自身が相手が不法行為をしているという証拠を集めなければなりません。

特に騒音などをはじめとした近隣トラブルなどの場合は、個々で感じ方が異なるという一面があります。そこで、トラブルの原因だとあなたが考える行為が「受忍限度」を超えているか否かがポイントのひとつとなります。

受忍限度とは、「他人の行為を不快に感じていても、社会生活を営む以上は我慢すべきレベル」という考え方のことです。そして、「受忍限度を超えると不法行為になる」という考え方が判例法理(裁判所が長年にわたって蓄積してきた判例に基づく法の考え方)でもあるのです。

2、よくある近隣トラブル

どのような近隣トラブルが相手方の不法行為による可能性が高いものといえるのでしょうか。

  1. (1)騒音

    近隣トラブルでもっとも多いと考えられる原因が、テレビや音楽の音、子どもの声、楽器の演奏や歌、工事、日常会話の声量など騒音によるものです。

    受忍限度を超える騒音は人によって異なることと、証拠を集めにくいことから、客観的な判断が難しいものです。そこで数多くある判例をみてみると、住人どうしの近隣トラブルにおける騒音は以下を総合的に勘案し違法行為に該当するか否かを判断している傾向が伺えます。

    • 騒音の内容や性質
    • 発生している時間帯や頻度
    • 騒音が続いている時間や期間
    • もともとの周辺環境(商業地域や工業地域などのように、騒音が出やすい地域か)
    • 騒音により発生した身体的、精神的な損害の有無

    なお、事業者が発生する騒音については、騒音規制法第27条の規定により地方自治体ごとに規制基準を設けることが認められています。横浜市の場合は、騒音が発生する時間帯や用途地域ごとに何デシベル、というように細かく規制されています。

  2. (2)悪臭

    ペットや料理、植物の肥料、さらには度を逸した不衛生な生活環境などが発生原因の悪臭に悩まされる人は多いものです。

    騒音同様、受忍限度を超えた悪臭か否かは人によって異なります。そこで受忍限度の基準となるのが、悪臭防止法第3条および第4条の規定に基づき各地方自治体が臭気指数などを用いて定めた規制基準です。横浜市においても、用地地域や悪臭を発生させる物質ごとに細かな規制基準を設けています。

    悪臭による相手の不法行為を訴えるためには、臭気センサーなどを用いて受忍限度を超えた悪臭であることの客観的な証拠が求められるでしょう。

  3. (3)無断駐車

    私有地や自身の車を停めるために借りている駐車場に無断で駐車されることは、迷惑以外何物でもありません。

    それでも、無断駐車している車にタイヤロックをかけたり、テープなどで張り紙をしたりすることはお勧めできません。逆に無断駐車している人から、これらの行為に対して車を移動させたいのに妨害された、テープのせいで車のコーティングが剝がれた、などのような理由で逆に損害賠償を請求される可能性があります。

    また、私有地への無断駐車は道路交通法の駐車違反に問われず罰則も存在しないため、民事不介入の立場が基本の警察は対応できないケースがほとんどです。しかし、不法な占拠行為であることから、民事の損害賠償請求や妨害排除請求などを認めた判例も多くあります。また、加害者は無断駐車の態様次第で住居侵入罪(刑法第130条)や業務妨害罪(刑法第234条)に問われることもあります。なお、このケースは土地の境界線画定があいまいなために起きることもあります。隣人との境界線画定は、確実に行っておくことがおすすめです。

    また、もしご自身が借りている賃貸駐車場に無断駐車された場合は、まずは管理会社やオーナーに対応を相談してください。

  4. (4)悪質なクレーム

    明らかに受忍限度内であるにもかかわらず、「子どもの声がうるさい」「家から光が漏れてまぶしい」などと、言いがかりともいえるクレームをつけられてしまい、悩んでいる方もいるでしょう。

    迷惑行為のエスカレートを防ぐためには、最初からまともに相手をしないという対応が結果的に無難となるケースもあります。事態が悪化した場合などに備えて他の近隣住民とお互いにクレーマー住民についての動向を共有しておくことがよいかもしれません。

    もし、その行為が暴力や恐喝にエスカレートしてきた場合は、暴行罪(刑法第208条)強要罪(刑法第223条)、恐喝罪(刑法第249条)などに問える可能性が出てきます。これ以上の危害を加えられないためにもすぐに警察へ通報してください。もちろん、受けた損害について民事上の損害賠償請求を起こすことも可能です。

3、近隣トラブルの解決方法・手順

では、トラブルを回避するにはどうすればよいのでしょうか。

  1. (1)当事者間で協議する

    当事者たちの協議による近隣トラブルの解決は、もっとも理想的といえるでしょう。ただし、トラブルを起こしている相手方には、そもそも自分がトラブルを起こしているという認識がない方もいます。このようなとき、主張や要求をめぐり相互にヒートアップして解決に向けた協議が進まないばかりか、かえって近隣トラブルが悪化してしまうこともあります。いずれにしても証拠はしっかり集めておくことをおすすめします。

  2. (2)管理会社や自治会に相談する

    当事者間による協議による解決が望めない場合、賃貸住宅であれば管理会社や物件のオーナーに事情を伝え、対応を依頼しましょう。同じ住民ではない立場からトラブルを起こしている人に対応をとることで、当事者間の協議とは異なる結果になる可能性もあります。

    また、分譲マンションや一戸建て住宅であれば、管理組合や自治会、さらには市役所や区役所などに相談しておきましょう。

  3. (3)調停で話し合う

    裁判所で行う調停も、近隣トラブルの解決手段として有効です。

    調停では、近隣トラブルの当事者たちの間に調停委員とよばれる人が入り、話し合いを行います。調停委員はあくまで当事者間の話し合いの仲介役です。当事者はお互いに顔を合わせることなく交互に調停委員に対して自分の主張を伝え、また調停員から相手方の主張を聞くことの繰り返しで進行します。

    調停で解決に向けた合意に至ると、その内容は「調停調書」にまとめられます。この調停証書が作成されることにより、もし合意した損害賠償の支払いがなされなかったり迷惑行為がやまなかった場合は、相手方の不履行に対して強制執行が可能になります。

  4. (4)訴訟を提起する

    当事者間の協議や第三者を入れた話し合いでも解決が望めない場合は、いよいよ民事訴訟として裁判に移行することになります。裁判では、主張について証拠にもとづいた客観的事実の有無や、過去の判例など法的側面が重視されるようになります。

    裁判の一般的な流れは、以下のとおりです。

    • 裁判所に訴えを提起
    • 裁判所を介して相手方と主張書面や口頭による弁論のやり取り
    • 請求の認諾(被告が原告の請求すべてを認める)、裁判所からの和解勧告ないし判決

    和解の成立や判決によって、相手方の債務不履行に対し強制力のある民事執行手続きが可能になります。なお、もし当事者の一方あるいは双方が判決に対して不服の場合、高等裁判所や最高裁判所などに上訴することができます。

4、まとめ

現代ではあまり使われなくなりつつありますが「向こう三軒両隣」という言葉があります。日本国語大辞典によりますと、この言葉の意味は文字通り「自分の家の向かい側三軒の家と、左右二軒の隣家」のほかに、「日常親しく交際する近隣」とされています。ところが、住んでいる人次第で「向こう三軒両隣」は「近隣トラブルの原因」という意味にもなりかねません。

このように近隣トラブルの解決は、泥沼化する前に弁護士へ相談することをおすすめします。事件性がなければ動くことができない警察と異なり、弁護士には近隣トラブルが発生した早期のうちから対応を依頼することができます。

当事者間による話し合いが難しい場合でも、弁護士はあなたの代理人として相手方に対して解決に向けた適切な主張を行い、さらには調停や裁判の手続きなども対応可能です。近隣トラブルでお悩みであれば、まずはベリーベスト法律事務所 横浜オフィスまでご相談ください。状況を見極め、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています