成人した子どもからお金をたかられる! 親ができる法的対策とは?

2020年05月29日
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成人した子どもからお金をたかられる! 親ができる法的対策とは?

親にとって何歳になっても子どもは子どもです。
ですが成人した子どもが定職につかず、たびたび親にお金を無心する状況におかれてしまいますと、「私の育て方が悪かったのか」と自分を責めてしまうかもしれません。

では成人した子どもから日常的に金銭を要求されている場合、どうしたらいいのでしょうか? 法律的な観点を交えて、弁護士が解説します。

1、成人した子どもからお金を求められた際の対処法

「買い物に行くからお金をくれ」「携帯代が足りない」など、成人しても定職についていない子どもは、さまざまな理由をつけて親にお金をせびることがあります。その状況に疑問がある場合には、まず次のような方法で改善を試みましょう。

  1. (1)話し合いをする

    成人した子どもに求められるままにお金を渡していると、子どももその状況を当たり前と考え、次第に要求金額を増やしたり、頻繁に無心してきたりするようになるかもしれません。

    「これ以上は払えない」「もうやめたい」と思っている場合は、黙ってお金を渡すのではなく、まずは子どもと話し合いをすることから始めましょう。

    今何を考え、どんな生活をしているのか、話をじっくり聞くことで、子どもも今の状況から抜け出したいと思っている場合には、改善のきっかけになるかもしれません。

    すぐに良い方向に向かわなくても、親子のコミュニケーションを維持することも大事です。

  2. (2)毅然とした対応をとる

    生活費などの名目で日常的に子どもにお金をせびられていると、だんだんと親も金銭的に苦しくなってくるでしょう。

    老後資金を取り崩すことになったり、年金から捻出するようになったりすれば、そのうち生活が立ち行かなくなるかもしれません。

    話し合いをしようとしても子どもに無視されるようであれば、きっぱりと要求を断ることも大事です。
    同居している場合には、一人暮らしをさせることも視野に入れます。冷たい対応に見えるかもしれませんが、子どもが父や母の葛藤に気づき、自立する機会になることもあります。
    勇気を持って、毅然と対応しましょう。

  3. (3)弁護士に相談する

    「直接話し合いするのが恐い」という場合は、無理に一人で向き合う必要はありません。
    まずは弁護士に相談しましょう。

    弁護士はこれまでの経緯をしっかりと聞き、対応方法について具体的なアドバイスをします。
    子どもと話し合いをする場合には、立ち合いや仲介をしてもらうこともできるほか、次項で説明する親族関係調整調停のサポートすることも可能です。

    また子どもが親にお金を要求する背景には、借金があることは珍しくありません。親が保証人になっているケースもあるでしょう。
    弁護士であれば、借金問題の解決にも協力してくれます。

2、親子のトラブルには親族関係調整調停

ここまで話し合いなどの対処方法を説明してきましたが、そのほかの解決方法として法的手続きである「親族関係調整調停」があります。

  1. (1)親族関係調整調停とは?

    親族間でもめごとがある場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、話し合いにより解決を図ることができます。この調停を「親族関係調整調停」といいます。

    調停では調停委員が双方から詳しく事情を聴き、トラブルに至った原因を探ったり、解決方法を提案したりしてくれます。

    民事調停や裁判に比べて費用が低額ですむため、利用しやすいのが特徴です。
    ただし相手が調停に出席しない場合には、調停は不成立となります。

  2. (2)申立てに必要な書類と費用

    親族関係調整調停の申立てが利用できるのは、親族同士のみです。
    親族間のトラブルであれば理由は問われません。もちろん親子の金銭問題も対象です。

    申立てに必要な書類と費用は次のようになっています。

    • 家事調停申立書とその写し
    • 1200円分の収入印紙
    • 連絡用の切手


    そのほか必要に応じて証拠書類などの提出を求められることがあります。
    必要書類が揃ったら、家庭裁判所に申し立てをしましょう。

3、脅迫や暴力がある場合はどうすればいい?

日常的にお金を渡していると、次第に子どもが暴力をふるうようになったり、財布から勝手にお金を抜き取ったりするようになるかもしれません。他人同士であれば明らかに犯罪に当たる行為ですが、親子の場合はどうなのでしょうか?

  1. (1)親子の間の恐喝、窃盗は罪に問えない

    一般的に財布から勝手にお金を抜き取る行為は窃盗であり、脅して無理やりお金を出させる行為は恐喝に当たります。

    ただし「親族相盗例」という特例があるため、これらの犯罪は親族間で起きた場合は処罰されません。

    刑法第244条は、次のように定めています。
    「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条(窃盗)の罪、第235条の2(不動産侵奪)の罪またはこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する」


    この特例は窃盗罪と不動産侵奪罪以外に、主に次の罪および未遂罪について準用されます。

    • 詐欺罪
    • 準詐欺罪
    • 背任罪
    • 恐喝罪
    • 横領罪
    • 業務上横領罪
    • 遺失物横領罪


    この特例は「法は家庭には立ち入らない」に基づくものであり、養子を含む親子は特例の対象です。
    そのためたとえ警察に通報したとしても、逮捕してもらうことはできないのです。

  2. (2)暴行や強盗はすぐに警察に通報

    親子間の窃盗や恐喝は処罰されませんが、子どもからの暴力は暴行罪に該当します。
    暴力を使ってお金を奪い取った場合は、強盗罪です。ケガがあれば強盗致傷罪です。


    これらは親族相盗例の対象ではないため、刑事事件となります。

    金銭要求がエスカレートすると、DVにつながることは珍しくありません。
    「家庭内のことだから」「私が耐えればいい」などと考え、外部には相談しない方もいると思いますが、それでは何も解決しません。

    暴力を受けたり無理やりお金を奪われたりした場合には、すぐに警察に通報しましょう。

4、法的に子どもと縁を切ることはできる?

繰り返される金銭要求に精神的にも金銭的にも苦しくなり「親子の縁を切りたい」と考えるかもしれません。ですが実の親子の場合、それは難しいのです。ただし無理をしてお金を渡し続ける必要はありません。

  1. (1)「勘当」は可能だが法的に縁を切るのは難しい

    親子の縁を切る方法といえば「勘当」を思い浮かべる方も多いでしょう。

    勘当により事実上、縁を切ることは可能です。
    ただし勘当は法律上の制度ではありません。

    つまり絶縁状態になっても法律のうえでは親子であるため、たとえば親が亡くなった場合には子どもが相続をします。

    離婚や養子縁組の解消とは違い、実の親子の間で完全に縁を切ることはできないのです。

  2. (2)扶養義務は「自分の生活に余裕があれば」

    親や子どもに対する扶養義務を負っています。
    ただし、その程度は子どもが「未成熟子」であるかどうかで大きく変わってきます。

    未成熟子とは経済的に自立していない子どものことです。未成年と同義ではありません。

    そもそも親の子どもに対する扶養義務には次の2種類があります。

    • 生活保持義務:親と同程度の生活ができるように援助する
    • 生活扶助義務:親に余裕があれば援助する


    成人した子どもで、働けるのに働いていないのであれば未成熟子ではないため、生活扶助義務が適用されます。

    つまり無理をしてまで子どもにお金を渡す義務はないのです。
    勘当をしてお金を渡さなくなっても、法律上の問題はありません。

  3. (3)遺産を相続させない方法もある

    子どもからお金を求められ続け、「せめて相続だけはさせたくない」と考えている方もいるでしょう。兄弟姉妹がいる場合には、一人に援助し続けたことに他の子どもが不公平感を持っているかもしれません。

    遺産を渡したくないのであれば、まず遺言書でその意思を示しておきましょう。
    遺言書の通りに相続が進めば、お金を無心していた子どもに相続させないことも可能です。

    ですが子どもには法律で認められた最低限の相続分である「遺留分」があります。
    たとえ遺言書に「相続はさせない」と書いてあったとしても、本人がこの遺留分を求めた場合は相続ゼロにはできません。

    ただし子どもから継続的に暴力を振るわれていた場合などは、相続人から「廃除」できる可能性があります。排除されると相続権がなくなるため、相続できなくなります。

    相続人の排除は生前に家庭裁判所に申し立てをする方法と、遺言書で指示をする方法がありますので、弁護士に相談してみましょう。

5、まとめ

「子どものためにも早く自立してもらいたい」と思っていても、子どもと話し合いをしたり金銭の要求を断ったりすることには勇気がいります。
また暴力の恐れがある場合には、一人で対応するのは危険です。

どうか家庭内で抱え込まず、ベリーベスト法律事務所横浜オフィスの弁護士がサポートいたします。弁護士は今の状況についてじっくりとお話をお聞きしたうえで対策を考え、法的対処が必要な場合にはすぐに手続きを行います。どうぞ当オフィスをご活用ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています