【後編】勤務態度が悪い社員の対応をしたい! 法的に可能な対処法とは
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横浜市内でも、数多く雇用問題に関する裁判が行われています。多くの雇用者は、一度採用した社員に辞めてもらいたと考えても難しく、頭を悩ませていることでしょう。そこで前編では、勤務態度が悪い社員の対処について重視すべきことや、対処する際に重要となる就業規則について解説しました。
後半も引き続き、横浜オフィスの弁護士が、勤務態度の悪い社員に対応する6つのステップや裁判例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
3、勤務態度の悪い社員に対処する6つのステップ
勤務態度が悪い社員への正当な対処は、注意指導からはじまり最終的には解雇となります。解雇に至るまでに社員の勤務態度が改善すればよいのですが、もし解雇に至るとしても後日に当該社員と裁判などになり社員が解雇権の濫用を主張した場合のために、以下に述べるステップは確実に踏んでおく必要があります。
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(1)注意指導をする
勤務態度の悪い社員に対して、注意指導をすることをちゅうちょする管理監督者も存在するようです。これは注意指導に対し勤務態度の悪い社員がパワーハラスメントなどと反発してくる、どうせ効果はない、あるいは職場の雰囲気が悪くなるなどが理由と考えられます。
注意指導は、口頭で何回も辛抱強く行うことからはじめます。それでも改まらない場合に、メールや書面により注意指導を行うことは証拠という形で客観性を担保するために有効と考えられます。 -
(2)始末書や誓約書を提出させる
問題のある社員に始末書や誓約書などを提出させることは、その社員の将来を戒め今後の改善を促すことと同時に、問題行動の事実について当該労働者自身が認めたことを証するうえで有用です。
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(3)配置転換を行う
たとえば営業成績が著しく不良な社員を総務系などの部署に配置転換することは、その社員を営業現場から出すことで生産性低下を阻止することに有用です。また、会社が社員の雇用維持のために努力を行っていたという客観性を補完することにもなります。
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(4)懲戒処分を行う
後述する退職勧奨や解雇以外の懲戒処分は、「譴責(けんせき)」、「降格」、「減給」「出勤停止」などが考えられます。いずれも裁判など後日のトラブルに備えるため、社員の勤務態度の悪さについて相応程度であることを考慮する必要があることと同時に、処分に至る経緯や判断した理由は必ず記録に残しておきましょう。
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(5)退職勧奨をする
通常、退職勧奨とは会社と社員による「合意退職」を目指すものです。合意退職の外見的な形式は社員の「自己都合退職」になります。退職に応じなければ懲戒解雇するというような「諭旨解雇」とは異なる点に注意が必要です。
もし退職勧奨を穏便に進めたい場合は、退職金の割り増しや再就職先のあっせんなど社員にある程度歩み寄った条件を提示する方法もあります。しかし、それが当該社員のモラルハザード(倫理観の欠如)を助長することにならないように配慮が必要です。
なお、あまりにも執拗(しつよう)な退職勧奨は「退職強要」とみなされてしまいます。社員に訴えられたら会社が不利になる可能性があるため、控えた方がよいでしょう。 -
(6)解雇
解雇には社員の行状に応じて普通解雇や諭旨解雇、懲戒解雇などが取り得ます。いずれにしても、解雇とはこれまでのステップを踏まえたうえでも社員の勤務態度の悪さが改まらず、職場に与える悪影響がこれ以上看過できないと判断できる場合に行う最終手段です。
会社による一方的な解雇は、その有効性をめぐり社員と裁判などで争いになりやすいものです。
4、解雇をめぐる裁判で会社が勝った事例
裁判において社員の勤務態度の悪さや能力の低さに起因した解雇が争われ、会社が勝訴した裁判例を紹介します。
いずれの事例においても、会社が勝訴したポイントは以下の3点について客観性や社会通念上の妥当性が認められています。
•社員に対し再三にわたって注意と指導を行っており、さらに(1)の事案においては社員から誓約書を徴求するなどしたが、改善が見込めなかったこと。
•就業規則に解雇事由が明記されており、明らかに社員がそれに抵触していること。
•解雇に至るまで改善に向け会社が払った努力が認められたこと。
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(1)社員の勤務態度が悪い
無断欠勤を繰り返し、郵便物の未配達・誤配達などの事実があった局員Aに対し、郵便局は再三注意・指導をしたものの改善されなかったため、免職処分としました。これを不服とした局員Aは免職処分の取り消しを求めましたが、裁判所は被告である雇用者側の主張を全面的に認める判決を出しています(横浜地方裁判所 昭和55年1月31日)。
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(2)社員の能力が低い
英語・日本語が堪能で品質管理能力がある即戦力として面接時にPRして中途入社した社員Bは、実際に勤務してみるとそれらの能力が非常に低い状態でした。そこで会社側は社員Bに対して正当な指導・助言を行いましたが、Bは反発。さらには適切なプロセスを経ず報告書を提出するなどの業務命令違反を行いました。結果、会社側はBを解雇処分としました。社員Bは解雇の無効を訴えましたが、裁判所は社員Bの解雇に至る経緯から、就業規則に定める解雇事例に該当するとして会社側の主張を全面的に認め、これを退けています。(東京地方裁判所 平成14年10月22日)
5、まとめ
勤務態度の悪い社員への対応は、会社として法的リスクを抱えることになりがちです。したがって、問題を認識したあとのプロセスは、慎重に法的要件を満たしながら進めていく必要があります。
その際は、弁護士に相談しながら進めていくことをおすすめします。勤務態度の悪い社員への対処に会社側の立場から解決した実績のある弁護士であれば、会社の法的リスクを最小化しながら問題を解決することが期待できます。
ベリーベスト法律事務所では、このような労働問題についてもワンストップで対応可能な、顧問弁護士サービスを提供しています。ぜひ、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスへご相談ください。
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