ガールズバーの従業員に周知しておきたい風営法とは? 弁護士が解説
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平成25年、横浜で女子高生限定のガールズバーが、風俗営業許可を得ずに接待をさせた疑いで摘発された事件がありました。また平成28年にも、横浜市内において無許可営業で女子高生に接待させた事件が発生し、経営者が逮捕されています。
バーテンダーがすべて女性のガールズバーはキャバクラとは異なる営業形態です。営業時間などの制約も少なく、客を呼べる店として経営を考える方もいるのではないでしょうか。しかし、その一方で、風営法違反となる店も少なくありません。
ガールズバー開業にあたって、経営者はもちろんのこと、従業員にも周知しておきたい風営法や接待行為の範囲について、横浜オフィスの弁護士が解説いたします。
1、ガールズバーの開業に必要な手続き
ガールズバーは、女性が客の横に座り飲食の提供などを行うキャバクラとは異なる営業形態です。あくまでも、その名の通り女性がバーテンダーとして客にお酒を提供するというサービスになります。
開業するにあたり、どのような手続きが必要なのかをみていきましょう。
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(1)飲食店営業許可申請
まずは、食べ物や飲み物を提供するのに必要な「飲食店営業許可」を取得します。営業所を管轄している保健所(食品衛生課)に事前に相談したうえで、以下の書類を提出して申請します。
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者資格者証、調理師免許など)
- (申請者が法人の場合)法人登記事項証明書
- その他添付書類(都道府県によって異なる)
書類審査後、保健所による実際の店舗の構造・設備検査が行われ、営業許可書が交付されます。
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(2)防火対象物使用開始届出
新たに店を開店する場合、建物の使用開始7日前までに「防火対象物使用開始届出」を管轄の消防署に提出する必要があります。建物の用途を変更する場合も届け出が必要となる場合があります。
必要な書類は以下の通りです。- 防火対象物使用開始届出書
- 防火対象物の配置図など
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(3)深夜酒類提供飲食店営業開始届出
これは、深夜0時を越えて営業する場合に必要な届出です。ガールズバーの営業を深夜0時以降も行う場合は忘れずに提出しましょう。営業開始届出書の提出は、所轄の警察署に対して、営業開始日の10日前までに行う必要があります。
必要な書類は以下の通りです。- 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
- 営業の方法
- 飲食店営業許可証
- 店舗図面
- 住民票
- 登記事項証明書と定款(申請者が法人の場合)
- 使用承諾書、賃貸借契約書等
なお、深夜酒類提供飲食店は都道府県の条例により営業禁止区域となっている場所があります。したがって、店舗物件を所有しているとしても、どこでも気軽に営業できるとは限りません。事前に確認が必要です。
2、ガールズバーに風俗営業許可は必要?
ガールズバーを開業にするにあたり、必要となる手続きは前述した通りです。しかし場合によっては、風俗営業許可の取得が必要となります。
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(1)風俗営業許可とは?
風俗営業許可は、女性従業員が客にお酌をしたり、カラオケを一緒に歌ったりする、いわゆる接待行為をさせる場合に取得が必要となります。具体的には、スナック、キャバレー、パブ、クラブなどを開業する際に求められる手続きです。
風俗営業許可は、各都道府県の警察署に対して申請を行います。審査に原則として55日程度かかるとされているため、早めに申請を行う必要があります。もちろん、ガールズバーでは本来、飲食物の提供のみで、接待行為は行わないものです。それ以上のサービスを行わないのであれば、風俗営業許可は不要です。 -
(2)風俗営業許可が必要となる接待行為
具体的に風営法でいうところの、風俗営業許可が必要となる接待行為とは以下のようなものが挙げられます。
- 特定の客の隣に座るなどして継続的に話し相手をする、酒を作るなど
- 特定の少数の客に向けてダンスやショーなどをみせる
- 特定の客とカラオケでデュエットする、手拍子をするなど盛り上げほめそやす
- 客と共にゲームなどを楽しむ
- 客と身体を密着させる、手を握る、食べ物を口元まで運んで食べさせるなど
取得せずに営業すると、2年以下の懲役刑もしくは200万円以下の罰金刑が科されます。両方が併科されることもあり、刑の執行を終えた後も5年は風俗営業許可の取得ができなくなります。
このように、提供するサービスの形態によって必要となる許可が変わってきます。また、風俗営業許可を得ると、原則深夜0時までの営業時間となるデメリットもありますので、業務形態をよく考えて申請しましょう。
3、ガールズバーにおける違法営業
続いて、ガールズバーにおける違法営業にあたる行為を知っておきましょう。ガールズバーは、風俗営業ではないとして営業していることがほとんどなので、風営法上でいう接待行為が行われた場合に、無許可営業となるケースが多いようです。接待行為をする可能性があるなら、事前に風俗営業許可は取っておくことを強くおすすめします。
もし、風俗営業許可を取らずに営業を行うのであれば、接待とみなされる行為がどういったものであるかを経営者のみならず、従業員にも周知する必要があるでしょう。接客行為をしない場合は、お店の構造自体を接待がないスタイルにする工夫も必要でしょう。たとえば、カウンター式のみのスタイルにして横に付かないようにする、カラオケを設置しない、制服の露出度をおさえる、最終のお見送りは男性スタッフが行うなどの方法があります。
ガールズバーで起こりがちな、違法営業にあたる可能性がある行為は以下の通りです。
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(1)無許可営業
飲食店営業許可はもちろん、風俗営業許可を取得せずに接待行為をして風営法違反となるケースがあります。接待行為まではしないと思っていたが、お客の希望に応じているうちにエスカレートするケースや、売上アップのために過剰なサービスを行うケースが多いようです。
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(2)18歳未満の雇用
風営法においては18歳未満の者に接待行為をさせることは禁じられています。
しかし冒頭の事件のように、18歳未満の者が接客および接待行為をさせられているケースは少なくありません。この場合、児童福祉法違反にも問われる場合があります。 -
(3)特定のビザがない外国人の雇用
働く資格のない外国人を雇うことも違法です。外国人の雇用をする際は、特定のビザを持っている方に限られます。
接客行為がないガールズバーの場合で、外国籍の方を雇う際は、以下の条件を満たす必要があります。- 永住者(特別永住者を含む)
- 日本人の配偶者、もしくは永住者の配偶者
- 資格外労働許可がある
また、パスポートのコピーなど、控えておくべき資料が多数あります。風営法による規制対象となる営業状態であるときは、さらに条件が厳しくなる点に注意が必要です。
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(4)20歳未満の者への酒、たばこの提供
当然のことながら、20歳未満の者へのお酒、たばこの提供は禁じられています。
4、まとめ
ガールズバーは昔ながらのキャバクラなどと異なり、比較的誰でも入りやすく客を集めやすいというメリットがあります。その反面、正しい知識を持たずして開業して、摘発されるケースも少なくありません。
そのような事態に陥らないためにも、開業する前に正しい法律知識を持っておくことが必要です。特に接待行為については、「これぐらいは良いだろう」と間違った解釈を持っている経営者や店舗運営者(従業員)の自己判断が命取りになっているようです。弁護士をはじめ、正確な法的知識を持つ専門家のアドバイスを受けてから店舗運営を行うことをおすすめします。
今後ガールズバーを開業したいとお考えの方は、お気軽にベリーベスト法律事務所横浜オフィスにご相談ください。風俗営業許可などの手続きに関しても分かりやすくアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています