【前編】献身的な介護をした次男の妻は相続できる? 「寄与分」とその権利者とは
- 遺産を受け取る方
- 寄与分
- 権利者
最近、「終活」や「エンディングノート」という言葉をたびたび耳にするようになりました。横浜市でも近年、終活セミナーが開かれるなど終活への関心が高まってきています。
親や兄弟の死後に発生するトラブルの代表は遺産相続問題です。たとえば、長男や次男の妻は、献身的に夫の親の介護をしてきたとしても、義父や義母の遺産を相続することは一切できません。しかし「寄与分」を主張することで間接的に、妻も遺産を相続することができるかもしれないのです。
また法律が改正されて、法定相続人以外の人も寄与分を正当に請求できるようになります。そこで、遺産相続における寄与分と権利者について、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。
1、寄与分とは?
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(1)相続における寄与分の基礎知識
寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産を殖やすこと、もしくは維持することに貢献した人に認められる、民法第904条の2項で定められた遺産相続の増額制度です。
たとえば、自宅で親の介護をした、親の会社を無償で手伝っていた、財産を無償で管理していた、などの形で被相続人に貢献した方が、「寄与分」という形で遺産の増額を主張できます。
原則として、遺産相続は遺言によって決められている場合は遺言通りに、決められていない場合は法定相続分に従って分割されます。しかし被相続人に対し介護や財産の増加などで特別に貢献しても、他の貢献しない相続人と受け取る遺産の額が同じでは不公平です。そこで寄与分という考えに基づき、他の相続人よりも遺産の取得分を増やすことができるのです。 -
(2)現行の制度では寄与分を主張できるのは?
平成31年3月現在、寄与分を主張できるのは法定相続人だけに限られます。
「法定相続人」とは、民法で定められた相続する権利を持つ方を指します。長男や次男の妻などは法定相続人ではないので、相続する権利がないため、寄与分を主張することもできません。 -
(3)妻でも夫の寄与分として主張可能
妻本人は相続財産を直接受け取ることはできませんが、たとえば長男の妻が介護をしていた場合、「妻が貢献した=長男が貢献した」とみなされて、長男が寄与分を主張できる可能性があります。
妻が義父や義母の介護を献身的に行ったなどの寄与行為をした場合、その寄与行為が評価されて、法定相続人である夫の相続分に寄与分を上乗せすることができるのです。ただし、被相続人が亡くなる前にすでに相続人である夫が死亡していると、妻は遺産を受け取れません。
確実に自分の財産を、息子の妻に残したいと考えているのであれば、遺言書を作成する、もしくは生前贈与などの方法をとることをおすすめします。遺言書を作成する場合は、ルールにのっとって作らなければ無効になってしまう可能性があるので、弁護士に相談しましょう。
2、寄与分が認められるケース
寄与分が認められるケースは、「被相続人の財産の維持もしくは増加に貢献した場合」に限られます。要介護状態ではない父母と同居して日常生活のお世話をしていた、たまに病院に連れて行ったという程度では認められません。
ここでは、寄与分が認められる5つのケースを解説いたします。
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(1)家業従事型
家業従事型とは、事業を営んでいる被相続人の仕事を「無償」もしくは、それに近い形で手伝っているようなケースです。無償、もしくは格安な費用で働いたから、被相続人の財産を維持することができたとみなされて、寄与分が認められるのです。
ただし、給料を受け取っていれば、認められません。 -
(2)財産出資型
被相続人にお金や土地などの財産を提供した場合も寄与分が認められます。たとえば、被相続人が家を買うときに長男や長男の妻がお金を出した場合、被相続人が事業を始めるときに資金を提供した場合などです。また被相続人の借金を返済してあげた場合も寄与分が認められます。
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(3)扶養型
扶養型とは被相続人に仕送りをする、被相続人の生活費の全てを負担していたなど、通常の扶養義務を超えて生活を援助していたなどのケースです。単に同居していていただけの場合などは、扶養していたとはみなされず寄与分は認められない可能性があります。
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(4)財産管理型
被相続人の財産を、相続人が管理し遺産を維持できた場合も、寄与分は認められます。たとえば、「被相続人の所有する賃貸物件などの不動産を相続人が継続的に管理し、不動産会社への管理料を省くことができた」などの場合です。ただし、管理料や賃金を受け取っている場合、寄与分は認められません。無償で管理していたことが条件です。
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(5)療養介護型
被相続人が介護を必要とし、相続人が長年介護にあたったケースです。同居して日常生活の面倒を見ていた、レベルでは寄与していたとはみなされず、要介護認定を受けているにもかかわらず、ヘルパーなどを使わず自分で介護していた場合などに認められます。介護の度合いとしては、要介護度2以上であると認められるケースが多い傾向があるようです。
いずれの場合も、「無償」で行っていることが前提条件です。また1年以上継続して行われるかどうかも、寄与分が認められるかどうかの判断ポイントとなるでしょう。
後編でも、横浜オフィスの弁護士が引き続き寄与分の権利者について、さらに詳細に解説します。
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