連帯保証人制度が変わる! 法改正における保証人への影響は?

2019年08月20日
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連帯保証人制度が変わる! 法改正における保証人への影響は?

平成31年4月、無許可で貸金業を営業し、超高金利による貸付を行っていた横浜市の男性が逮捕されました。男性は、「保証人不要」などの名目で法定金利を超える金額で融資を行っていたと報道されています。

近年では、保証人不要でお金を借りられる金融機関が増えました。しかし、依然として大きな金額を借りる際や事業性の融資などでは保証人が必要となります。保証人制度は数々の金融トラブルを引き起こしていましたが、令和2年4月1日から保証人に関する制度が大きく変わります。そこで、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が、保証人に関する法改正について丁寧に解説します。

1、保証人・連帯保証人制度とは

保証人や連帯保証人制度とは、お金を借りた「債務者」が返済や支払いを滞った場合に、債務者の代わりに返済義務を負う約束をした方を指します。借金だけでなく、賃貸契約などを結ぶ際にも保証人が求められることがあるでしょう。

保証人と連帯保証人はそれぞれ債務者の代わりに返済の義務を負います。しかし、責任の重さが異なる点に注意が必要です。

たとえば、債務者が借金の支払いを滞った場合、「保証人」であれば「まずは債務者本人に督促してください」と主張できます。また、債務者本人が返済可能な財産を保有している場合は「債務者本人にお金があるからまずは請求してください」と主張することも可能です。また、保証人が複数いる場合は、保証人の人数に応じて均等に返済することになります。

しかし、「連帯保証人」であれば、債務者の返済が滞った時点で、全額支払うことを要求されても無視することはできません。連帯保証人は、債務者本人と同程度の返済義務を負うため、債務者が支払わなければ債務者に請求する前に、請求されることもあるのです。また、連帯保証人は、連帯保証人が複数いる場合でも、債務を分割せずに全額返済しなければならないとされています。

2、制度改正でどう変わる? 改正前の契約は変わらない

令和2年4月に施行される民法の中に、保証人制度の改正も含まれています。令和2年4月以前に締結された契約の保証人については、従前の規定通りに運用されます。契約締結日時によって、どちらが適用されるのかを判断しましょう。

  1. (1)個人根保証ではどう変わるのか?

    根保証とは、債務者(金銭貸借契約や賃貸借契約を結んでいる人)と債権者の取引のすべてを包括的に保証する保証人契約のことです。身近な例では、不動産の賃貸借契約の保証人契約が「根保証」となります。

    現状の民法では、金銭貸借契約(お金の貸し借り)等においては、極度額を決めておかなければならないと規定されていますが、賃貸借契約等では極度額を決めておく必要がないとされていました。

    そのため、賃貸借契約の連帯保証人になり、突如高額の支払いを請求されるトラブルが多発していたのです。

    今回の法改正では、そのリスクを低減するために、賃貸借契約などの金銭貸借契約以外の保証人契約でも、「極度額の設定」が必要となりました。極度額を設定していない保証人契約は無効になります。

  2. (2)事業用融資において個人が保証人になる場合

    現状の民法では、個人が企業等の「事業の借金」の保証人になることに対して、制限がありませんでした。そのため、事業が破綻した際に、個人が多額の借金を負ってしまい人生が破滅するケースが少なからず存在しています。

    そこで令和2年4月に施行される改正民法により、個人の事業用融資における保証が制限されることになりました。具体的には事業用融資を受ける会社の取締役等以外の個人が保証人になる際には、公証役場の公証人における保証意思の確認が求められます。

    公証人が、保証人の義務や債務の状況を説明し、保証人自身が理解していると判断しなければ、保証人になることができません。この手続きは、代理人による手続きは原則認められないため、本人が公証役場に出頭する必要があります。

    つまり、「会社の借金の保証人をお願いしたい」と頼まれて、保証契約の契約書に署名捺印したとしましょう。これまではそれで契約が成立してしまうケースがほとんどでしたが、改正後は、署名捺印後であっても公証人の意思確認がなければ保証契約は無効になってしまうということです。公証人によって意思確認をしてもらい、「保証意思宣明公正証書」を作成しなければなりません。

  3. (3)事業用融資において発生した義務とは

    保証人は、債務者(お金を借りた人)がどれくらいお金を持っているのか、他には借金はあるのかなどの情報を知らないまま保証人になってしまえば、多額の債務を負うリスクがあります。特に、事業用融資の場合は、融資額が大きく人生に与える影響が大きいでしょう。

    そこで、法改正により新たな規制が導入されました。それが「情報提供義務」です。事業用融資の保証人を個人に依頼する場合は、債務者の財産状況や他の債務の有無、債務の返済状況や、担保の有無などの情報を提供しなければならないことが義務づけられました。

    これは、金銭貸借の保証契約だけでなく、すべての契約に適用されます。もし、情報提供されていなかった場合で、そのことを債権者が知っていたまたは知ることができたときは、保証契約を取り消すことができます。

  4. (4)債務者が返済を遅延させ「期限の利益」を喪失した場合は

    債務者が返済を遅延させると「期限の利益」が喪失します。具体的にいうと、分割返済すべきところが一括返済が求められるなどの規定です。返済が遅延して、期限の利益を喪失すると、一括返済を求められ、その日から「遅延損害金」が発生します。

    ところが、これまで保証人および連帯保証人は、遅延損害金が発生していることが知らされること自体が多くのケースでありませんでした。結果、ある日突然元金と遅延損害金の返済を迫られることになっていたのです。そのころには遅延損害金が膨れ上がり、返済が難しくなることが少なくありませんでした。

    しかし、今回の法改正により、「期限の利益を喪失」してから2ヶ月以内に保証人に知らせる義務が新設されました。債権者が、期限の利益の喪失を2ヶ月以内に保証人に通知しなければ、期限の利益の喪失から、それを知らされるまでに発生した遅延損害金を請求することはできません。

  5. (5)債権者が保証人に対して負う義務とは

    保証人はこれまで、借金等の返済状況などを知ることができませんでした。

    しかし、今回の法改正により、保証人が請求すれば債権者は債権者(お金を貸した人)の返済状況の情報を提供しなければならない義務が生じることになります。具体的には、「遅延しているかどうか」、「債務の残高」、「残高のうち返済期限が到達しているもの」などの情報です。

    この規定により、「知らない間に債務が延滞していた」といったトラブルが回避できると期待されています。また、「あの借金、ちゃんと返済されているかな」といった心配もその都度解消することができるでしょう。

3、トラブルが発生したら弁護士に相談を!

前述のとおり、保証人に関する民法が大幅に改正されました。その多くが個人の保証人を保護するために創設されたルールです。今回の法改正によって、アパートの経営をしている大家などは大きな影響を受けることになりますが、保証人になりたい個人にとっては、保証契約により不利益を被りリスクが軽減するありがたい制度と言えます。

とはいえ、保証人や連帯保証人になれば債務者と同様に借金を背負わなければなりません。万が一債務者(お金を借りた人)が返済を滞らせた場合は、一括返済を迫られるリスクがありますので、保証契約は慎重に結びましょう。

また、今回の法改正以前の保証契約は、これまで通り運用されますので、保証人保護の規定などは適用されません。令和2年4月以前に保証契約を締結する場合は、自分自身でしっかりと保証契約を確認して、リスクを把握しておきましょう。

ただし、どんなに気をつけても債務者が返済や支払いを滞れば、保証人が債務を背負うことになります。契約前に不安があるときやトラブルが発生した場合は、なるべく早く弁護士等の専門家に相談することを強くおすすめします。

保証契約によって、多額の債務を負ってしまった場合は、いち早く返済計画を立てる等の対策をとらなければ、保証人の生活も破綻しかねません。また、保証契約を結ぶこと自体に疑問を感じている方、不安がある方も、事前に弁護士に相談して、不安を解消しておきましょう。

4、まとめ

民法改正により、保証人についての規制が大幅に変更されました。保証人になる方にとっては有利な改正でしょう。しかし、事業用融資の場合は公証人による確認が必要になるなどの、手続きの複雑化が見込まれます。令和2年4月以降に保証契約を結ぶ方は注意が必要です。

それ以前に保証契約を締結する際に保証人を引き受ける場合は、債務の内容などをしっかり把握してください。ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスでは、保証人に関するトラブル等に関してアドバイスを行います。保証人トラブルで悩んでいる方はもちろん、保証人になるにあたって不安がある場合は、取り返しがつかなくなる前にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています