不倫離婚の慰謝料請求の方法と、離婚後に失敗しないために知っておきたいポイント
- 不倫
- 不倫
- 離婚
最近、夫(妻)の様子が「変だな?」と思っていたら、まさかの不倫・浮気が発覚……。配偶者の不倫・浮気という裏切り行為は、ショックが大きいのと同時に、怒りも相当でしょう。
「絶対に慰謝料を請求して離婚する!」と心に決めたなら、不倫の慰謝料について少し理解しておきましょう。高額な慰謝料を請求する方法を知っておくだけでも役に立つはずです。
そこで今回は、不倫離婚における慰謝料請求について弁護士が解説いたします。
1、不倫で離婚はできる? 法律上の離婚原因とは
まずは、不倫離婚の基本を理解していきましょう。場合によっては、離婚が成立しないケースもあります。また、離婚に迷っているときの判断基準や、離婚する前の準備として必要なことを解説します。
-
(1)不倫離婚とは
では、不倫で離婚できる場合とはどのようなケースなのでしょうか。
まず、離婚に関する規定は日本の民法に規定があります。民法上定められた離婚原因を法定離婚事由とよび、これに当てはまる場合は、原則として離婚できる原因であるということです。
民法770条1項各号には、5つの離婚事由が定めてあります。① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 強度の精神病により回復の見込みがないこと
⑤ 婚姻を継続しがたい重大な事由があること
そして、不倫の場合は、①の不貞行為に当てはまります。不倫は法定離婚事由に含まれるため、「必ず離婚できる」というふうになりそうですよね。しかし、絶対ではありません。例えば、不倫関係が原因ではなく、長期間の別居により結婚生活が破綻していたというケースでは、不貞行為による離婚は認められないのです。また、不倫行為をしてしまった配偶者からの離婚請求は原則として認められません。 -
(2)不倫発覚。離婚すべきかわからないとき
では、離婚自体に迷っているという場合は、どのように判断すれば良いのでしょうか。
まず、不倫が発覚した直後は「離婚」の決意をしないでください。なぜなら、不倫発覚後すぐは気が動転しており、冷静な判断ができないからです。悲しい感情や怒りが心の中にいっぱいになってしまい、将来に及ぶ重大事項においての判断をすべきときではないのです。そのため、不倫が発覚したら、冷静になるまでは離婚の判断は保留にしておいてください。
ある程度気持ちが落ち着いてきたら、「離婚すべきか」の判断に入りましょう。
離婚すべきかどうかの基準は、① 相手に対する愛情があるのか
② 不倫行為が今回で終わりそうか
③ 子どもの将来にどんな影響を及ぼすか
以上の3つです。
これら以外にも考えることはたくさんあると思いますが、まずは、上記3点に絞って頭を整理してみてください。
具体的には、今後も一緒に暮らしていけそうか、関係修復は可能か、不倫は浮気心だったのか、それとも何年も継続して行われたものなのか、などです。これ以外にも、不倫相手は独身なのか既婚者か、また子どもにどの程度影響するのかということも考えましょう。離婚後の生活や子どもの養育環境などもしっかり想像することが大切です。
このように、まずは落ち着くことが重要です。その上で、離婚についてじっくり考えてみてください。 -
(3)不倫で離婚する前に必要なこと
では、離婚する前に準備すべきことはあるのでしょうか。
離婚を心に決めたあと、まずすべきなのは、配偶者との話し合いです。離婚についての意思を伝えることはもちろん、離婚に必要なことを話し合う必要があります。話し合いにおいて、うまくいかない場合は、協議離婚や調停離婚を利用することになります。
離婚の際に決めておかなければいけないのは、まずは「子ども」に関することです。
具体的には、どちらと暮らすのか、どこで親子が生活するのかということから、養育費、親権、面会権など法的な事柄まで話し合います。
次に、「住宅のローン」や「生命保険」などの支払いにおける話し合いです。
これまでは夫婦で支払ってきたローンや積立金、生命保険などをどうするのかについて決めていかなければいけません。保険であれば解約するのが一番簡単ですが、そこまでわかりやすい問題でもないはずです。ローンの場合は、今後の支払い方法を決めることや、契約名義人の変更や登記名義人の変更も必要かもしれません。
そして、もう1つ大事なことは「財産分与」についてです。財産分与は夫婦二人の共有財産を分け合う手続きのことです。結婚後にためてきたお金などは、二人で分割しなければいけません。家財道具や貴金属、有価証券などについてもわけていきます。法律上は、半分に分割することが原則となっています。
このように、離婚前には夫婦間で決めなければいけないことが山積みです。離婚後のトラブルをできるだけ減らすためにも、じっくりと話し合い決めていきましょう。
2、不倫離婚における慰謝料請求の基本
まずは、不倫離婚の慰謝料請求の基本について理解していきましょう。
不倫が原因で不倫相手や配偶者に慰謝料を請求できるという点はみなさんご存知だと思います。法律上は、民法の規定に従います。具体的には、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料請求(民法709条、710条)を行うことになります。
夫婦には、他の異性と性的関係を持ってはいけないという貞操義務が課せられています。そのため、婚姻期間中に他の異性と性的関係を持つ不貞行為は、貞操義務に反することになってしまうのです。貞操義務に反し、不貞行為を行った場合は、もう一方の配偶者の法的利益を侵害するため、「不法行為」となります。そして、この「不法行為」により、精神的に傷つくという「損害」が発生するため、慰謝料請求が認められているのです。
3、不倫離婚の慰謝料請求する方法
では、慰謝料請求を自分で行うにはどのようにすれば良いのでしょうか。
慰謝料を請求する場合、配偶者に請求する場合と不倫相手に請求する場合の2通りがあります。もちろん両者に請求することも可能です。以下では、それぞれ分けて説明したいと思います。
-
(1)夫(妻)に慰謝料請求する場合
まずは、配偶者に請求をする場合です。
離婚の話し合いを行う中で、慰謝料に関する話し合いも行っておきましょう。
具体的には、① 慰謝料額
② 支払い方法
③ 支払い回数
④ 支払い時期
⑤ 慰謝料の支払いが遅れた場合にどうするか(遅延利息など)について決めておきます。 話し合いでまとまった場合は、書面にした上で日付、氏名、署名・押捺をします。
一番関心があることは、お互い「①慰謝料の額」についてだと思います。これについて揉める場合は、弁護士など第三者に入ってもらい話し合いを進めることをおすすめします。当事者だけでは、問題が解決しない場合は、第三者を解するのが一番良い方法です。
相手が話し合いに応じない場合は、メールや手紙などで「不倫の慰謝料」についての要望を送ります。
内容としては、① 不倫の事実があったこと
② 証拠
③ 精神的に傷ついたという事実
④ 慰謝料希望額
⑤ 支払い期限
⑥ 振込口座
などを記述することになります。
無視されてしまった場合は、内容証明郵便で、請求することも可能です。 -
(2)不倫相手に慰謝料請求する場合
次に、不倫相手に請求する場合です。
配偶者に不倫相手の連絡先を教えてもらうか、探偵を雇い連絡先を入手します。電話で話し合いの場をセッティングし、配偶者に対するのと同様に慰謝料に関する話し合いを行います。これができない場合は、メールや手紙で上記と同様の対処をしましょう。仮にお金が振り込まれない場合は、法的措置を取る意思があることを加えておくと良いでしょう。
4、不倫離婚の慰謝料が高額になるケース
では、不倫による慰謝料が高額となるケースは、どのようなケースなのでしょうか。慰謝料額の相場、高額になるケース、注意すべきポイントを解説します。
-
(1)不倫離婚の慰謝料相場
不倫離婚における慰謝料の相場はどのくらいなのでしょうか。 不倫の慰謝料は、個別ケースによって金額が異なります。個別事情における判断が、金額に直接影響するためです。
また、実は慰謝料を算出するためのはっきりとした基準は存在しません。しかし、不倫の際に考慮要素となる事項はある程度決まっています。
具体的には、① 婚姻期間
② 夫婦関係の状況
③ 不倫された配偶者の状況
④ 不倫した側の支払い能力
⑤ 不倫関係の期間や頻度などが考慮されます。 これらの事情を総合的に判断した結果、不倫の責任の額が決められることになるのです。
このように、不倫の慰謝料の相場はかなり曖昧です。不倫は、個別ケースによって事情がかなり異なってくるため、一概に判断できないことが要因となっています。 -
(2)高額になるケースは?
では、慰謝料が高額になるケースはどんな事情があるのでしょうか。
まず、婚姻期間が長期の場合です。具体的には、10年以上の婚姻期間がある場合は、長期婚姻関係にあると言えます。5年以下の場合は短期間の結婚と判断されることが多いようです。基本的に、婚姻関係が長ければ長いほど、不倫による精神的苦痛は大きいと判断されます。そのため、婚姻期間が慰謝料を引き上げると言われているのです。
また、不貞行為の期間が長く、頻度が高いほど、悪質な不倫として慰謝料が高くなる傾向にあります。具体的には、1年以上の不倫期間は長期間となります。回数も、期間が長ければ長いほど多くなるため、悪質と判断されます。
さらに、不倫をしてしまった側の収入が多く、社会的地位が高い場合は慰謝料の額も大きくなります。社会的地位が高く、収入も多い場合、慰謝料が少ないと誠意をもって責任をとったということにはなりにくいと思います。そのため、支払い能力のある有責配偶者に対する慰謝料請求は高額になる可能性が高いのです。 -
(3)慰謝料請求で注意すべきことは?
では、慰謝料請求で注意すべきことはあるのでしょうか?
有責配偶者と不倫相手の両方に請求する場合、1点知っておくべきことがあります。
それは、二人に請求する場合でも、上記相場の倍額請求できるわけではないということです。
不倫行為は、一人で行うことはできません。必ず、相手が必要になります。この場合、不倫行為を行う二人は相互に共同して不法行為を行うことになるため、共同で責任を負うことになります。法律上は、共同不法行為といいます。
つまり、賠償責任については連帯して責任を負うことになるのです。慰謝料についても、二人合わせた金額が算定されることになります。両者に請求したからといって、慰謝料が倍になるわけではないということを覚えておいてください。
5、弁護士に依頼。不倫離婚の慰謝料を請求するには?
ここでは、弁護士に依頼して不倫離婚の慰謝料請求を行う場合について解説します。弁護士費用の相場から、弁護士相談のメリットまで説明いたします。
-
(1)弁護士費用の相場は?
では、不倫離婚の慰謝料請求について、弁護士費用はどのくらいかかるのでしょうか。
弁護士費用では、① 法律相談料
② 着手金
③ 成功報酬
の3つがかかるとされることが多いです。
これ以外に、裁判に移行する場合には、裁判費用もかかってくることを覚えておいてください。
なお、不倫離婚の慰謝料請求の弁護士費用は、成功報酬の費用によって大きく変化します。つまり、「相手方からどれくらいの慰謝料がとれるのか」によって、弁護士費用も変わってくるということです。請求できる慰謝料が多い場合は、その分弁護士費用も高くなります。 -
(2)弁護士相談のメリットとは?
不倫離婚の慰謝料請求を弁護士に依頼すると、弁護費用としてお金がかかってしまいます。それでも、弁護士に依頼するべきメリットは、どこにあるのでしょうか。
まず、慰謝料請求や離婚手続きの負担軽減です。 不倫されてしまったというケースの場合、精神的にも傷ついてしまっているため、離婚の手続き、慰謝料の手続きを自分1人で行うことは大変な負担になります。不倫した配偶者や不倫相手と直接対峙して話し合いを行うことは、本当にストレスがかかるものです。このような辛い話し合いも第三者であり、専門家である弁護士に任せてしまうことで、負担を軽減することができます。法律について知識のない素人が手続きを進めるよりも、スムーズに物事が運んで行くはずです。
また、法律上のアドバイスを受けられるのもメリットです。 不倫の慰謝料についてご説明しましたが、具体的な金額やどのように話をすすめていくべきか、については実際の事情をお聞きしないとわからないことも多くあります。個別事情が大きく影響することは、上記説明でわかっていただけたはずです。そのため、あなた自身の状況に応じて必要なことは、ご相談いただくことにより明確になるということです。法律上の一般的な事柄だけでなく、個別案件に応じたアドバイスが受けられるのは大きなメリットでしょう。
さらに、話し合いもあなた自身にとって有利に交渉できます。弁護士は、法律上必要なポイントをおさえて、交渉を有利に運ぶことができます。「慰謝料額を引き上げたい」「離婚の条件も有利にしたい」という希望があれば、できる限りご要望に添えるようサポートいたします。仮に、慰謝料請求において裁判になった場合、勝訴すれば相手の財産に強制執行をかけることもできるため、資力がないなどの状況がない限り、慰謝料支払いが確実になります。
このように、弁護士費用がかかっても弁護士に依頼するメリットはあります。実際の状況に照らし合わせ、ご検討ください。
6、弁護士による無料相談
弁護士費用が高額で支払うことができない。そんなときは、弁護士による無料相談を利用してください。
最近では、初回相談無料の弁護士事務所もたくさんあります。慰謝料の具体的な額など気になる点だけでも相談することができます。有料相談の場合、1回数千円~1万円がかかりますが、無料相談を掲げている法律事務所では無料です。ぜひ、利用して慰謝料請求に役立ててください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|