養育費を支払う側が自己破産! 今後の支払いはどうなるのか

2024年04月25日
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養育費を支払う側が自己破産! 今後の支払いはどうなるのか

横浜市が公表している横浜市統計書によると、令和4年度中の横浜市における離婚件数は、4978件でした。なお、同年度の「同居から離婚までの期間別離婚件数」は、20年以上が1077件ともっとも多いものの、次点に「5年以上10年未満」の898件が続いており、子どもがいる夫婦の離婚も少なくないだろう状況を推察できます。

ひとり親家庭となった場合、子どもの成長のためには安定した収入源が必要不可欠です。だからこそ、離婚時には養育費の取り決めを行うようおすすめしています。しかし、養育費を支払う側が自己破産をして「もう養育費は支払えない」といわれた場合にはどのように対応したらよいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が、養育費の支払い義務者が自己破産した場合の養育費の扱いや請求方法について解説します。

1、自己破産すると養育費の支払い義務はどうなる?

養育費を支払う側(支払い義務者)が自己破産をすると、養育費の支払いにどのような影響が及ぶのでしょうか。まずは、自己破産とは何かと、養育費への影響について説明します。

  1. (1)自己破産とは

    自己破産とは、借金を返済することができなくなってしまった場合に行う法的手続(債務整理)の一種です。

    借金をした側(債務者)は、自分の財産を換価・処分し、債権者に対して公平に分配を行います。財産については、法が認めた最低限を確保することができますが、それを上回る財産を有している場合には、原則として、裁判所によって選任された破産管財人によってすべて処分され、債権者への配当がなされます。

    その後、裁判所から「免責」決定を受けることによって、債務者は借金を支払う義務がなくなります。「自己破産で借金がゼロになる」というのは、この免責決定を受けることを指します。

  2. (2)養育費は非免責債権

    銀行や消費者金融からの借金については、免責を不許可とする事情がない限り、免責決定によって支払い義務がなくなります。しかし、破産法では、一定の債権については、自己破産における免責の対象外としています。これを「非免責債権」と呼びます。

    養育費は、破産法253条1項4号ハにおいて、非免責債権として定められています。

    つまり、養育費の支払い義務者が自己破産をしたとしても養育費が免責されるということはありません。自己破産は、あくまでも債権を対象とした手続きですので、養育費の支払い義務者が負う“扶養義務”が自己破産によって消滅するということもありません

2、減額などの事情変更が認められる場合がある

養育費の支払い義務者による自己破産によって養育費が免責されるということはありませんが、養育費の減額を求められることもありますので注意が必要です。

  1. (1)養育費の減額請求をされることがある

    養育費の支払い義務者が自己破産をするということは、借金の返済をすることができないほどに経済状況が悪化しているということになります。このような場合には、離婚時に取り決めた養育費の金額を支払っていくことが難しいなどの理由で、養育費の支払い義務者から養育費の減額を求められる可能性があります。

    しかし、「自己破産をしたのだから仕方ない」などの理由で安易に減額に応じてはいけません。

    なぜなら、自己破産によって借金の支払い義務から解放されますので、安定した収入がある限りは、返済にまわすお金がなくなった分、かえって余裕ができる可能性もあるからです。

    そのため、養育費の支払い義務者から養育費の減額を求められたとしても、給与明細などの提出を求めるなどして、本当に支払い能力がないのかどうかを慎重に判断することが大切です

  2. (2)話し合いで解決できない場合には調停を申し立てられることもある

    養育費の減額についてお互いの意見がまとまらない場合には、養育費の支払い義務者から養育費減額調停が申し立てられることがあります。

    養育費の金額について取り決めをしていたとしても、取り決めをした当時には予見することができなかった事情が生じた場合には、養育費の金額を変更することが認められています。これを、事情変更といいます。

    自己破産をしたということだけでは、事情変更にあたるとはいえませんが、「仕事を失って収入がない」などの事情がある場合には、事情変更に該当し、養育費の減額が認められる可能性があります。

3、破産手続における養育費の扱い

破産手続において、養育費の滞納はどのように扱われるのでしょうか。

  1. (1)破産手続中の場合

    破産手続開始決定前に、すでに養育費の滞納が生じている場合、自己破産手続上は、金融機関からの借り入れと同じ“破産債権”として扱われます。

    つまり、破産者に財産がある場合には、当該財産を換価・処分した中から配当を受けることになります。この配当の際、養育費だからという理由で優先的に配当を受けることはできません。他の債権者と一緒に債権額に応じて公平に分配を受けることになります。

    もっとも、破産手続開始決定後に支払期限が到来する養育費については、破産手続の対象外ですので、こちらについては、破産手続とは関係なく支払い義務者に請求することができます。

  2. (2)破産手続が終了した場合

    養育費は、“非免責債権”ですので破産手続が終了したとしても免責されることはありません。つまり、支払いを免れることはできません。

    破産手続中に配当を受けることができなかった残額がある場合には、それについて支払い義務者に請求することができますし、強制執行の申し立てをして未払いの養育費を回収することも可能です。

    もっとも、自己破産によって最低限の財産しか支払い義務者の手元には残されていませんので、強制執行によって回収することができる可能性は低いでしょう。

4、弁護士に依頼するメリット

養育費の支払い義務者が自己破産をした場合には、今後の対応について弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)自己破産による影響をアドバイスしてもらえる

    養育費の支払い義務者から「自己破産をするから養育費は支払えない」といわれた場合、自己破産までしたら、今後の養育費の支払いは難しいと思い、請求を諦めてしまうケースもあるでしょう。

    しかし、自己破産をしたとしても養育費の支払い義務者という地位が消滅することはなく、すでに生じている養育費についても自己破産によって免責されるということはありません。

    つまり、支払い義務者が自己破産をしたとしても養育費に関しては、特に影響がないといえます。

    養育費の請求を諦めてしまうのは、非常にもったいないことですので、まずは養育費や離婚問題の実績がある弁護士に相談をして、今後どのような対応をしていけばよいのかアドバイスをもらうとよいでしょう

  2. (2)相手方との交渉を任せることができる

    養育費の支払い義務者が自己破産をした場合、自己破産を理由に養育費の減額を求められることがあります。しかし、個人で減額に応じるのは避けた方が賢明です。

    弁護士に交渉を一任することによって、精神的な負担を軽減できる上、相手の収入や財産の開示を求めるなどして、養育費の減額に応じるべきか、応じるとしていくらが妥当であるかを専門家の立場から適切に判断することができます。また、養育費減額調停を申し立てられたとしても弁護士に適切な対応を任せられるので安心です。

  3. (3)滞納している養育費の回収をサポートしてもらえる

    自己破産をしたとしても、仕事を失うわけではありません。自己破産後も安定した収入を得ているという場合もあります。それにもかかわらず、養育費を滞納し、支払いに応じないという場合には、給料を差し押さえることによって強制的に回収できる可能性があります。

    もっとも、養育費の取り決め方によって、強制執行の流れが異なります。

    取り決めの際に、執行受諾文言が記載された公正証書を作成していれば、これが債務名義となります。債務名義とは、裁判手続を介することなく直ちに強制執行ができることを記した公文書です。こうした公正証書を作成していない場合は、強制執行を申し立てる前に債務名義の取得が必要になります。

    公正証書の有無にかかわらず、弁護士に依頼をすることによって、債務名義の取得から強制執行まで一連の手続きのサポートを受けることができます。また、相手の勤務先が分からないという場合であっても、第三者からの情報取得手続を利用することによって知ることも可能です。まずは、実績のある弁護士に相談してみることをおすすめします。

5、まとめ

養育費を支払う側が自己破産をしたとしても、支払い義務が消えることはありません。しかし、自己破産によって養育費の支払い義務者の経済状況は、悪化する可能性は高いため、養育費の減額を求められるケースや、支払いを受けられなくなる可能性があります。

養育費は子どもの健全な成長発達に必要不可欠なものですので、安易に減額に応じず、まずは弁護士に相談をして今後の対応を検討することが大切です。養育費についての問題でお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所 横浜オフィスまで、お気軽にご相談ください。養育費についての交渉や法的対応についての知見が豊富な弁護士が親身になってサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています