養育費が1日でも遅れたら? 未払い時にできる対応と回収方法

2025年01月30日
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養育費が1日でも遅れたら? 未払い時にできる対応と回収方法

元配偶者からの養育費の入金が1日でも遅れたら、ちゃんと支払ってもらえるのか不安に思う方もいるでしょう。横浜市では、養育費は子どもが健やかに成長する上で大切なものとして、養育費などの取り決めにかかる費用や支払われないケースに備える費用についての補助を行う支援事業を実施しています。

離婚時に決めた養育費が未払いの場合には、強制執行等により回収を図ることができます。しかし、離婚時に適切な書類を残さなかった、口約束だけとなっていたケースもあるでしょう。そのような場合でも、泣き寝入りせず、弁護士に相談するなどして早めに対応することが大切です。

本コラムでは、養育費の支払いが1日でも遅れた場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。


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1、養育費の支払いが1日でも遅れたらとるべき対応

養育費の支払いが期限に1日でも遅れたら、その時点で法的には「履行遅滞」となります。支払ってもらえない状況が続く場合は債務不履行の状態にあるといえるでしょう。同居親としては、元配偶者から1日も早く養育費を回収できるように、以下の対応に着手してください。

  1. (1)できるだけ早めに養育費を支払うよう催促する

    約束の期限を過ぎても養育費が支払われない場合、まずは元配偶者に対して、できる限り早い段階で養育費を支払うように催促しましょう。

    これまで養育費の支払いがきちんと行われていたのであれば、単に忘れているだけの可能性もあるからです。

    口頭やメールなどでの催促に元配偶者が応じて、養育費の支払いを受けることができれば、未払いの問題をもっとも簡単・迅速に解決できます。ただし、未払いが繰り返されることのないように、今後はきちんと期限どおり支払いを行うよう念押ししておきましょう。

  2. (2)内容証明郵便で養育費の支払いを求める

    口頭やメールなどで養育費の支払いを催促しても、元配偶者が支払いに応じない場合には、内容証明郵便を送付して支払いを求めましょう。

    内容証明郵便とは、郵便局が差出人・受取人・内容・日時を証明してくれる郵便です。

    一般に、内容証明郵便による支払い催告には「正式な督促」という意味合いがあり、元配偶者に対して、本腰を入れて養育費の支払いを求めるというメッセージを伝える効果があります。そのため、口頭・メールで支払いを催促する場合よりも、任意に養育費の支払いを受けられる可能性が高まるでしょう。

    また、内容証明郵便の送付には、養育費請求権の消滅時効の完成を6か月間猶予する効果もあります(民法第150条第1項)。

  3. (3)養育費の不払いには延滞金(遅延損害金)が発生する

    養育費の支払いの遅れが長期にわたると、金銭における債務不履行として法的責任を問うことができると考えられます。そのため、支払期限を守らないと遅延損害金が発生します

    遅延損害金とは、いわゆる延滞金のことで、遅延損害金の法定利率は年3%と定められています(民法404条2項)。遅延損害金が発生する旨を訴えることで、相手がスムーズに支払う可能性もあるでしょう。

    以下の計算式によって、遅延損害金がいくらになるか求められます。

    遅延損害金=養育費未払い分×3%÷365×延滞日数


    なお、離婚協議書などで遅延損害金の利率を決めている場合は、取り決めの利率が優先されます。

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2、催促しても養育費が支払われないときの対応策

さまざまな方法で支払いを催促しても、なお元配偶者が養育費を支払わない場合は、本格的に養育費回収の対応を考える必要があります。

  1. (1)弁護士を通じて養育費の支払いを求める

    養育費の支払いが行われる見通しが立たない場合、弁護士に養育費の回収を依頼するのが有力な選択肢です。

    弁護士への依頼がなされたとなれば、今後強制執行等に移行するための準備を行うことが現実的になるため、元配偶者としても任意の支払いを行う方向になる可能性が高まります。

    また、仮に元配偶者の支払い拒否の態度が変わらなかったとしても、弁護士に依頼をしていれば、その後の法的手続きへとスムーズに移行できるメリットがあります

  2. (2)法的手続きを利用する

    弁護士を通じて連絡しても、元配偶者が一向に養育費を支払おうとしない場合、法的手続きを通じて養育費の回収を図るほかありません。

3、未払い養育費を強制執行で回収できる条件と方法

支払条件を合意済みの養育費が未払いとなった場合、非同居親は債務不履行となり、同居親からの養育費の支払い請求に応じる義務があります。

養育費の支払いを強制的に実現する法的手続きが、「強制執行」です。ただし強制執行を申し立てるには、「債務名義」を取得していることが要件となります。

  1. (1)強制執行には「債務名義」が必要

    「債務名義」とは、強制執行を申し立てるために必要な公文書です。具体的には、以下の公文書が債務名義に該当します(民事執行法第22条各号)。

    <債務名義の種類>
    1. ① 確定判決
    2. ② 仮執行宣言付判決
    3. ③ 抗告によらなければ不服申し立てができない裁判
      ※民事保全処分の命令(仮差押・仮処分)など
    4. ④ 仮執行宣言付損害賠償命令
      ※殺人・傷害致死・強制性交等・逮捕監禁・未成年者略取などの被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対して行う損害賠償命令(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第23条第1項)
    5. ⑤ 仮執行宣言付届出債権支払命令
      ※消費者被害に関する「共通義務確認の訴え」において実施される、簡易確定手続における簡易確定決定(消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律第3条第1項、第12条以下)
    6. ⑥ 仮執行宣言付支払督促
      ※後述
    7. ⑦ 訴訟費用等の金額を定める裁判所書記官の処分
    8. ⑧ 執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)
      ※後述
    9. ⑨ 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
    10. ⑩ 確定した執行決定のある仲裁判断
    11. ⑪ 確定判決と同一の効力を有するもの
      ※和解調書・調停調書・労働審判など
  2. (2)離婚公正証書は「債務名義」に当たり得る

    離婚をする際には、養育費の支払い義務などを含めた合意事項をまとめた「離婚協議書」を作成するのが一般的です。

    離婚協議書を公正証書によって作成している場合、離婚公正証書自体を「債務名義」として利用できる場合があります。具体的には、養育費の支払い義務者が、直ちに強制執行に服する旨の陳述が公正証書中に記載されていれば「執行証書」に当たり、債務名義として利用可能です(民事執行法第22条第5号)。

    執行証書である離婚公正証書があれば、裁判などを経ずして、裁判所へ強制執行を申し立てて、未払いの養育費の回収を図ることができるため、裁判にかかる費用や時間、労力などが削減できます。

    この理由から、離婚時には離婚公正証書を作成することが推奨されるのです。離婚公正証書は、弁護士に依頼すると必要事項の抜け漏れなく適切に作成することができます。

4、離婚公正証書を作成していない場合に、養育費を回収する方法

執行証書に当たる離婚公正証書がなくても順次必要な手続きを踏んでいけば、最終的に強制執行を申し立てることはできます。諦めずに弁護士へ相談してみましょう。

  1. (1)裁判所に支払督促を申し立てる

    強制執行の債務名義を簡易的に取得できる方法として、裁判所に支払督促を申し立てることが考えられます。支払督促とは、裁判所が金銭債務者に対して、債務の支払いを督促する手続きです。

    支払督促の送達から2週間が経過すると、債権者は裁判所に「仮執行宣言付支払督促」を申し立てることができます。仮執行宣言付支払督促は債務名義に当たるため、強制執行の申立てに利用することが可能です。

    ただし、支払督促の送達から2週間以内、または仮執行宣言付支払督促の送達から2週間以内に、債務者から異議申立てが行われた場合には、支払督促は失効してしまいます。支払督促が失効した場合、自動的に訴訟手続きへと移行するので、事前に訴訟準備を整えておきましょう

    (参考:「支払督促」(裁判所))

  2. (2)裁判所に訴訟を提起する

    支払督促に対して債務者が異議を申し立てた場合、養育費の支払い義務を訴訟で争うことになります。また、支払督促の申立てを行わず、直ちに裁判所へ訴訟を提起することも可能です。

    訴訟では、養育費の支払い義務の存在を、証拠によって立証する必要があります。

    離婚時に離婚協議書等を作成していれば、それを裁判所に証拠提出します。離婚協議書等がない場合には、メールのやり取り等を証拠提出して、間接的に養育費に関する合意内容を立証することも考えられます。

    いずれにしても、状況に応じて効果的な立証方法を検討する必要がありますので、弁護士にご相談ください。養育費の支払いを命ずる確定判決または仮執行宣言付判決を得られた場合、強制執行の債務名義として利用できます。

5、まとめ

養育費の支払いが1日でも遅れたら、すぐに元配偶者に対して支払うよう催促してください。元配偶者が自発的に支払う姿勢を見せない場合は、強制執行の申立てを検討する必要があるでしょう。

ただし、離婚公正証書がない場合は、強制執行の前に、支払督促や訴訟といった法的手続きを経て、債務名義を取得する必要があります。弁護士へ依頼すれば迅速・円滑に債務名義を取得するサポートを受けることが可能です

ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスは、養育費の未払いにお悩みの方のために、養育費回収の手続きを一括してサポートします。元配偶者からの養育費の支払いが滞ってしまった場合には、お早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています