養育費が不払いで困っているときの対処方法を横浜市の弁護士が解説
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養育費の不払い問題は、特にシングルマザー家庭には深刻な問題となっています。
横浜市の人口動態統計を見てみると、実は毎月平均して約500件は離婚しているというデータが見て取れます。
全国的に見ても横浜市の離婚率は高く、それだけ多くのひとり親家庭が生まれていることが分かります。
ひとりで子どもを育てていこうと思うと、学費から学習用具、育ち盛りの食費など、子どもがひとりだけでも多くのお金が必要です。しかし、現実的には離婚の際に養育費について取り決めを行っていない夫婦も多く、離婚後の養育費の不払いも多く発生しています。
今回は養育費が受け取れなくて困っている方のために、養育費を受け取るための対処方法を解説いたします。
1、なぜ養育費の不払い問題が起きるのか?
養育費が支払われない理由はさまざまですが、そもそも離婚後に養育費の取り決めを行っている母子家庭は43%と半数以下です。その中でも、実際に養育費を受け取っているのは24%だけです。
また、母親が養育費の取り決めをしない理由としては、「相手と関わりたくない」(31%)がもっとも多く、次いで「相手に支払い能力がないと思った」(21%)、「相手に支払い意思がないと思った」(19%)、という理由が挙げられています。
(出典元:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告)
以上の理由以外にも、「父親が子どもと面会交流をさせてもらえない」、「母親が父親と子どもを会わせたくない」などの理由などから、養育費が支払われないというケースも少なくありません。子どもの監護と面会は別個として考えるべきですが、残念ながら密接な関係を持っていると言わざるを得ません。
養育費は、子どもの健やかな成長のために必要なお金です。
DVなどが原因で離婚しているケースなども考えられるため、それぞれ難しい事情もあるでしょうが、まずは離婚の際に養育費の取り決めをしっかり行うことが必要です。
2、公正証書がないけど請求できるの?
離婚した夫婦のうち、ほとんどのケースで「協議離婚」という形がとられています。
協議離婚をする場合には、きちんとした離婚協議書を作成し公正証書として残しておくことが重要となりますが、それをしないままに協議のみで離婚をしてしまう方も少なくありません。
しかし、こういった場合でも養育費の請求は可能です。
相手がなぜ養育費を支払わないのかが分からない状況の場合には、まずは「内容証明郵便」にてしっかりとこちら側の気持ちを伝えることが大切です。
内容証明郵便とは、郵便局が内容を証明してくれるものであり、きちんとした証拠能力を有しています。
つまり、裁判などでも有力であるということです。
内容証明郵便のように正式な文書が届いても行動に移さないという場合には、いよいよ裁判所にて調停・審判という手段を取ることになります。
この調停と審判の違いですが、調停とは調停委員を介し当事者間で話し合いにて問題を解決していくことを言います。
それに対して、審判は調停では問題が解決されないと認められた場合に、裁判官に判決を下してもらう方法となります。
どちらにしてもひとりで進めていく自信がない場合には、お近くの弁護士に相談されることをおすすめします。
3、公正証書があるのに払ってもらえない
きちんとした公正証書を残しているにもかかわらず、それでも養育費の支払いがされない場合には、一度義務者と連絡をとる必要性があるでしょう。
DV(家庭内暴力)被害や特別な事情があり、なかなか容易に連絡できる状況にない場合には、前述した内容証明郵便にて知らせる必要があります。
内容証明郵便をもってしても養育費の支払いがない場合には、次のステップに進む必要があります。
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(1)履行勧告とは
履行勧告は、養育費に関する裁判に勝訴している場合に行えます。
調停や審判にて決定したことが守られなかった場合に、裁判所から義務者に対して電話や手紙にて養育費支払いの履行を勧告してくれる制度です。
裁判所からの連絡ということもあり、これだけで養育費不払い問題が解決することも少なくありません。
公正証書を作成した場合だけでは履行勧告は行えず、裁判所調停調書や審判調書を得た場合に利用できます。
履行勧告をするにあたり費用は一切かからず、電話にて裁判所に勧告依頼を出すことも可能です。 -
(2)それでも無理なら履行命令
履行勧告でも養育費の支払いに応じない場合には、いよいよ「履行命令」となります。
具体的には、期日を設けて養育費の支払いを命令することであり、守らなければ10万円以下の過料が処せられます。
しかし、強制ではないため履行命令でも養育費の不払いが続く場合には、最終的に「強制執行」を行うことになります。 -
(3)強制執行は最終手段
「強制執行」は養育費を支払わせる上での最終手段です。
この強制執行とは、いわゆる差し押さえのことであり、例えば給料の差し押さえ等を行います。
このときに、養育費の義務者が勤める会社にも給料の差し押さえの旨が記載された文書が届くことになるため、特別な事情がない限りはすぐに養育費の支払いに応えるケースが多いです。
ちなみに、差し押さえの対象となるのは給料だけではありません。
預貯金・積立金・生命保険・不動産など、あらゆる資産が対象となります。
この強制執行を実現するためにも、離婚時の公正証書の作成は重要な手続きなのです。
具体的には、養育費の義務者の「債務名義」が必要となり、この債務名義とは養育費の支払いがなかった場合に強制執行されても構わないというものです。
以下に記載する書類が債務名義となります。- 強制執行認諾条項付履行
- 離婚調停の調停調書
- 離婚審判の審判書
- 離婚訴訟の和解調書
これ以外にも債務名義はあり、具体的にどのような書類を作成するべきか分からないという方は、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
4、義務者が困窮のため支払えない場合は?
養育費の義務者が失業中であり、なおかつ預貯金もないという場合には、当然ですがお金がないので養育費の回収自体が困難です。
差し押さえの効果が発揮されるのは、差し押さえの通達が銀行などに届いたタイミングとなるため、その時点で預貯金がなければ養育費の回収はできません。
しかし、会社に勤めており毎月少ないながらも決まった金額が銀行に振り込まれる場合には、そのタイミングを見計らい差し押さえを行うと効果的に養育費を回収できます。
給料の差し押さえには「会社名」と「会社所在地」、預貯金の差し押さえには「銀行名」と「支店名」まで特定している場合に限ります。
5、再婚をきっかけに払わなくなった場合は?
養育費の権利者(子どもの親権者)が再婚をした場合、養育費の支払い義務者はもう払う必要がないと思い、養育費の不払いにつながるケースも少なくありません。
しかし、養育費の権利者が再婚をしただけでは、養育費の支払い義務はなくなりません。
養育費の支払い義務が免除される条件としては、子どもが「再婚相手の養子」になった場合です。
この場合には、子どもを育てる義務があるのは離婚した相手とその再婚相手となります。
では逆に養育費の義務者が再婚をした場合はどうでしょうか。
こちらも再婚をしただけでは養育費の支払い義務はなくなりません。
しかし再婚後、義務者の扶養する人数が増えて、これまで支払っていた養育費が多少なりとも減額される可能性はあります。
6、まとめ
今回は養育費の不払いに対する対処方法について解説しました。
養育費に関しては、後に不払いという状況を作らせないように事前に公正証書を作成するなどの準備が必要です。
養育費に関するトラブルは、離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が、あなたの悩みを早期解決に導きます。
養育費に関して疑問・不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています