専業主婦でも財産をもらえる? 離婚時の財産分与を弁護士が解説
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横浜市の「人口動態調査」によると、平成29年の離婚件数は6228件でした。月ごとの統計を見ると、3月の離婚件数が704件と他の月よりも突出して、多くなっています。また、12月も離婚件数が多いことから、年末や年度末といった区切りで結婚生活に終止符を打つ夫婦が多いようです。
横浜市は毎日10組以上の夫婦が離婚していますが、多くの夫婦に共通するのが「財産分与問題」です。離婚では大きなお金のやりとりが発生しますが、その中でも財産分与は多額の現金や資産が移動しますのでトラブルに発展しがちです。
特に専業主婦の方は「専業主婦だから財産は分けてもらえないのでは?」と不安になるかもしれません。そこでベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が専業主婦の財産分与についてわかりやすく解説いたします。
1、そもそも財産分与とは
そもそも、財産分与とは、夫婦が共に築いた財産を離婚時に分割することをさします。まずはその概要について知っておきましょう。
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(1)財産分与の定義と清算的財産分与
離婚時における財産分与の対象となるのは、結婚してから別居、もしくは離婚するまでの間に得た財産です。夫名義の財産でも、妻名義の財産でも、結婚期間中に増減した財産があれば夫婦の「共有財産」とみなされて、財産分与の対象となります。
夫名義で住宅ローンを組んで購入した住宅や、車なども財産分与の対象です。財産分与は原則として、2分の1ずつ分割します。つまり、あなたが婚姻中は専業主婦で無収入だったとしても、結婚期間中に増えた財産であれば、分割することができます。ただし、ローンなどマイナスの財産が多い場合は分割できるものがないため受け取ることはできないでしょう。
このように、夫婦の共有財産を離婚時に均等に分割することを「清算的財産分与」と言います。 -
(2)扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、結婚を機に専業主婦になった結果、離婚後すぐには生計を立てることが難しい専業主婦の方に認められることがある財産分与です。
働いている方や、再婚する予定がある方には認められません。扶養的財産分与では、離婚後1年から3年ほど生活費の一部を受け取ることができます。 -
(3)慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、慰謝料的な性質を併せ持った財産分与のことです。
慰謝料と財産分与とは本来は別に考えるべきものですが、離婚成立の過程において離婚の原因である有責配偶者から、相手方に対して分与する財産を多くすることがあります。これを慰謝料的財産分与と呼びます。
2、財産分与における親からの贈与の扱いは?
財産分与の対象となる財産は「夫婦の共有財産」です。夫婦が結婚期間中に増やしたものが対象となりますが、中には例外があります。財産分与の対象とならない財産のことを「特有財産」と言います。
そのひとつが、それぞれの親から財産の贈与を受けた場合です。たとえば夫の父親が亡くなり、遺産相続で1000万円の現金を相続したとしましょう。相続した1000万円は、あなたと結婚していてもしていなくても受け取った財産です。したがって「特有財産」であり、あなたに受け取る権利はありません。
それ以外にも、結婚前に個人が所有していた預貯金や土地などの財産も、財産分与の対象外となります。また、夫婦の生活を維持するためではなく、個人的な趣味などで借りた借金も財産分与の対象外です。たとえば、ギャンブルや遊興費のためにお金を借りた場合は、財産分与する必要はありません。
3、住宅購入時の頭金を親に援助してもらった場合
住宅そのものを贈与された場合は、特有財産なので財産分与の対象外となります。では、夫婦の住宅購入時において、片方の親から頭金の援助を受けた場合はどうでしょう。
頭金のみ援助を受けた場合は、援助を受けた頭金部分については、夫婦で共同して形成した財産ではありません。この住宅を財産分与する場合は、特有財産である頭金分を控除しなければなりません。
たとえば、離婚時の住宅の価値が5000万円、頭金1000万円を親から援助されていた場合は、4000万円が財産分与の対象となります。
4、財産分与の注意点と進め方
財産分与の流れを見ていきましょう。離婚の話を進める際は、財産分与に必要な手続きも同時並行で進めることが望ましいです。
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(1)財産分与は財産の把握が大切
特に大切なのは、共有財産の把握です。相手が、財産を隠してしまう可能性がありますので、離婚しようと決意したら、相手にその意思が知られないように慎重に、相手の財産を調べてください。
預貯金の通帳だけでなく、ネット銀行の口座の有無や有価証券など、証拠をつかみにくいものが多いものです。金融機関から送付されている郵便物を確認することで、ある程度「どこに資産があるのか」は把握できるのではないでしょうか。
離婚の話し合いの際に、相手が素直にすべての財産を開示すれば問題ありません。しかし、隠すようであれば、弁護士に依頼して「弁護士照会」という手続きを行えば、預貯金等の財産を確認することも可能です。
訴訟になった場合は、「文書送付嘱託」という、さらに強い手段もとることができます。認められると、裁判所から銀行等に書面の送付を求めることができます。 -
(2)まずは話し合うこと
離婚は話し合いで、合意できれば離婚届を提出して受理されれば成立します。
これを協議離婚と言います。離婚の際には、離婚することだけでなく財産分与や養育費、慰謝料などのお金についても協議して合意しておかなければのちのち面倒なことになりますので、離婚届を提出する前にこれらの問題も解決しておきましょう。
自分にどのようなお金を請求する権利があるかわからないという方は、弁護士に相談することをおすすめします。離婚後に、「こんなにお金が請求できたのか!」と後悔する方が少なくありません。 -
(3)話し合いで合意できなければ調停
話し合いで離婚に合意できないときは、「調停」を申し立てなければなりません。日本では、「調停前提主義」がとられているため、すぐに裁判ができるわけではない点に注意が必要です。
調停は家庭裁判所で開かれます。双方の言い分や主張を「調停委員」が確認して、提示された和解案を検討しながら進めていきます。離婚するかどうかだけでなく、財産分与の問題も話し合うことができます。
原則として当事者同士が顔をあわせることがないように配慮されているので、その点は安心です。調停で互いに合意すれば、調停離婚が成立し、法的な効力がある「調停調書」が発行されます。万が一のときは、速やかに取り立てを行うことも可能となります。
調停でも合意できなければ、審判か訴訟の手続きに移行します。「審判」は、離婚することは合意しているものの、慰謝料の額だけが決まらない、などの場合に行うことができます。しかし、審判の結果に不服がある場合は訴訟に移行するため、多くの方が、調停でうまくいかなければ、離婚訴訟を起こす傾向があるようです。
調停は弁護士に依頼せず、当事者同士で行うことも不可能ではありません。しかし、申し立てるためにさまざまな書類が必要になります。また、相手が弁護士を依頼している場合は、あなたが不利になることも想定されます。進め方などのアドバイスを受けるだけでも、大きな違いがでるでしょう。早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
ここまで、離婚の際の財産分与について見てきました。離婚を成立させて、相手方から共有財産の半分を受けるまでのすべてのプロセスにおいて、専門家である弁護士に依頼・相談し、サポートしてもらうことをおすすめします。特に財産分与は大きなお金が動きます。少し間違えただけで、将来にわたって大きな不利益を被る可能性があるからです。
弁護士に依頼することで、冷静な立場から間に立ってくれるほか、財産分与の割合といった専門的な領域にも適切に対応・回答できます。財産分与をどうしたらいいかわからない、きちんと自分の権利を主張したいという方は、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスにご相談ください。財産分与問題に対応した実績が豊富な弁護士が、あなたの状況をきちんと確認した上で最適なアドバイスをいたします。状況によっては、税理士との連携も可能です。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています