離婚時に住宅ローンが残ったら?ローンの種類や離婚時に確認すべき6つのこと
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令和元年7月のある新聞記事に、神奈川県在住の会社員が、妻の収入をあてにして住宅ローンを3500万円借り入れたものの、その後妻と離婚してローンの返済に困っている、という記事がありました。
住宅ローンを組むときに、離婚を想定して借り入れをする方はあまりいないでしょう。しかし、住宅ローンを借りてマイホームを購入した後に離婚すると、ローンの組み方や種類によっては問題が生じることもあります。今回は、住宅ローンの種類や住宅ローンを抱えたまま離婚するときの手続きについて解説します。
1、住宅ローンの種類とは
住宅ローンは、大きく分けて「民間ローン(民間融資)」「フラット35(証券化ローン)」「公的ローン(公的融資)」の3つの種類があります。まず、この違いをおさえておきましょう。
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(1)民間ローン(民間融資)
民間ローンとは、主に銀行や信用金庫など民間の金融機関が扱うローンのことを指します。金融機関では、インターネット上で手続きをすると手数料が割引になるサービスや、一定の条件を満たせば店頭金利より低い優遇金利になるサービスなど、さまざまなサービスを展開しています。
金融機関の扱う住宅ローンの金利タイプには、以下の3種類があります。
●変動金利型
金融情勢によって金利が変わるタイプのものです。金利は年2回見直しされますが、ローンの返済額の見直しは5年に1回となります。
●固定金利選択(固定期間選択)型
5年・10年のように、一定期間だけ金利を固定し、その後は変動金利もしくは固定金利のどちらかを選べるようになるタイプです。
●全期間固定金利型
契約時から返済期間満了までずっと金利が変わらないタイプのものです。金融情勢に左右されない代わりに、金利が下がったときには負担が大きくなります。 -
(2)フラット35(証券化ローン)
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して行っている事業です。民間金融機関や保険会社、住宅ローン専門会社などが窓口になっており、最長35年間借り入れ可能で、ずっと金利が変わらない「長期固定金利」が特徴です。また、フラット35を利用する際は、万一のことがあった場合には保険金でローンの残債が全額返済される「団体信用生命保険」の加入が必要となります。
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(3)公的ローン(公的融資)
公的ローンには、大きく分けて以下の2種類があります。
●財形融資(財形住宅融資)
財形融資(財形住宅融資)とは、勤務先で財形貯蓄に1年以上加入していて残高が50万円以上ある方が利用できるローンです。借入時から5年間金利が変わらない5年固定金利で、財形貯蓄額の10倍まで借りられるのが特徴です。
●自治体融資
地方公共団体の中には、住宅購入やリフォームの際に一定の条件を満たすことでフラット35の金利負担を一部軽減しているところがあります。自治体によりこのような融資を行っていないところもあるので、住宅購入予定地などにある市区町村役場に問い合わせてみるとよいでしょう。
2、住宅ローンの組み方の種類
住宅ローン自体にも複数種類がありますが、住宅ローンの組み方も3つのパターンに分かれます。それぞれどのような組み方があるのでしょうか。
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(1)ペアローン
ペアローンとは、夫婦それぞれの名義でローンを借りる方法です。同じ金融機関から借り入れすることが大前提で、ローンの手数料も2人分かかりますが、夫婦で返済期間や金利タイプを変えることでリスク分散ができ、住宅ローン控除をそれぞれ受けられることがメリットです。銀行ローンや財形融資に多く見られます。
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(2)連帯債務
連帯債務とは、借入額を増やすことを目的に、夫婦の収入を合算してローンを借りる方法です。夫婦はそれぞれ主たる債務者と連帯債務者に分かれ、夫婦ともに全額返済する義務を負うことになります。その分、夫婦とも住宅の所有者となり、住宅ローン控除もそれぞれ受けられます。フラット35で主に利用される方法です。
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(3)単独ローン
単独ローンとは、夫婦のいずれかの名義で住宅ローンを借りる方法です。どのローンでも適用可能なので、将来的に夫婦のどちらかが仕事を辞めるなど収入が減るリスクがある場合は、ペアローンや連帯債務にするより単独ローンにしておくほうが安心でしょう。
3、住宅ローンを抱えて離婚する前に確認すべき6つのこと
住宅ローンが残っている状態で離婚するときは、場合によっては問題が生じることがあります。ローンが残っているときには、まず以下のような確認が必要です。
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(1)住宅ローンの種類・組み方
住宅ローンの返済方法について相談しなければならない可能性も考えられるので、まずはどこで住宅ローンを借りているかを確認しましょう。また、ペアローン・連帯債務・単独ローンのいずれかで組んでいるのかのチェックも必要です。妻もローンの名義人や連帯保証人になっていることが考えられるためです。
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(2)住宅ローンの残債
次に、ローンがどれくらい残っているかも確認します。借入先から送られてくる残高証明書や返済予定表でも確認できますが、インターネットバンキングを利用していればウェブサイトで確認できることもあります。
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(3)住宅ローンの名義
同時に、住宅ローンの名義もどちらになっているか確認します。夫婦両方の名義になっている場合は、今の家に住み続けるほうの単独ローンに変更してもらうか、新しくローンの名義人になってくれる人(親きょうだい、親戚など)を探さなければならないからです。
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(4)不動産の名義
住宅ローンのだけでなく、不動産も夫婦どちらの名義になっているか確認が必要です。不動産の名義人と住宅ローンの名義人は原則として一致していなければならないので、たとえば離婚を機に不動産の名義を妻に変更する場合は、住宅ローンの名義が夫になっていれば名義の変更を借入先に相談することになります。
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(5)不動産の評価額
また、現時点での不動産の評価額を確認することも必要なので、不動産業者に依頼して査定してもらいましょう。今住んでいる家が財産分与の対象になっていて、かつどちらかが住み続ける場合、評価額を算出してその半額を出て行く方に渡すこともあるからです。
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(6)アンダーローンかオーバーローンか
離婚後に家の売却を考えている場合は、不動産評価額とローンの残債のどちらが高くなるかを検討します。
●アンダーローン
不動産評価額がローンの残債を上回る場合のことを「アンダーローン」と言います。この場合は、売却したお金でローンを完済できるので、残った売却益を夫婦で折半することができます。
●オーバーローン
逆に、ローンの残債が不動産評価額を上回ることを「オーバーローン」と言います。この場合は家を売却してもローンを完済できず、財産分与の対象にもならないと考えられます。
4、住宅ローンの残った状態で離婚する場合
住宅ローンの残った状態で離婚するときは、いくつかの対応方法がありますので、離婚届に判を押す前には家をどうするか夫婦でよく話し合うことが大切です。
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(1)住宅ローンの名義人が住み続ける場合
不動産・住宅ローンともどちらか一方の名義人にしているケースも多いので、不動産・住宅ローンの名義人がそのまま住み続ける方法があります。その場合2パターンの対処法が考えられます。
●不動産の名義・ローンの名義ともに変更しない
もともと夫婦のどちらかが単独で住宅ローンを組んでいた場合、名義人であれば何の問題もなく住み続けることができます。ただし、名義人でないほうを連帯保証人にしている場合は、何らかの原因で返済が滞ると連帯保証人に返済請求がいってしまうため注意が必要です。
●ペアローン・連帯債務にしている場合は、配偶者の債務を外してもらう
住宅ローンをペアローンにしていて夫婦両方ローンを支払っている場合は、銀行に交渉の上単独ローンに変えてもらうか、配偶者の名義を自分の親きょうだい・親戚の名義に変えることが求められます。連帯債務にしているときも、たいてい配偶者が連帯債務者になっているので、ペアローンのときと同じく親きょうだい・親戚を連帯債務者に設定し直すことが必要です。 -
(2)住宅ローンの名義人でないほうが住み続ける場合
主に、妻の収入が少なく自分の名義ではアパートが借りられない、小学生の子どもを転校させたくないなどの理由から、住宅ローンの名義人になっていない妻(妻子)が家に住み続けるケースもあります。その場合、以下の2パターンが考えられます。
●ローンの名義を住み続けるほうに変更する
配偶者に一定以上の継続的な収入がある場合は問題ないかもしれませんが、配偶者が専業主婦(夫)の場合は、ローンの変更が認められない可能性があります。
●ローンの借り換えをする
今借り入れをしている金融機関でローンの名義変更に応じてもらえない場合は、配偶者の名義でほかの金融機関のローンの借り換えを検討します。ただし、ここでも収入の状況によっては借り換えのできない可能性もあることには留意しておいた方が良いでしょう。
●ローンの名義人がローンを支払い続ける
たとえば、妻子を住まわせて財産分与の代わりに夫が住宅ローンを支払い続けるケースも考えられます。ただし、夫が再婚したり子どもができたりすると、途中で返済が滞るリスクがあります。妻が連帯保証人になっているときは、妻が代わりにローンの支払いを続けることになるので注意が必要です。 -
(3)夫婦ともに出て行く場合
夫婦ともに家を出て行く場合は、アンダーローンになるかオーバーローンになるかで対応方法が異なります。
●アンダーローンの場合
家を売却し、そのお金でローンを完済します。その後残った売却益が財産分与の対象となります。比率は原則として1対1になるので、たとえば残った売却益が200万円の場合は、夫婦で100万円ずつ折半します。
●オーバーローンの場合
この場合は、家を売却しても住宅ローンが残ってしまいます。そこで、オーバーローンでも売却できる「任意売却制度」を利用します。任意売却には債権者である金融機関の許可が必要ですが、任意売却後はローンの返済額が減るので、住宅ローン名義人の経済状況が変わっても無理なく返済できる可能性が高くなります。 -
(4)離婚しても連帯保証人としての債務は残る
夫婦のどちらかの名義で単独ローンを組んでいて、名義人でないほうが連帯保証人になっているケースや、住宅ローンを連帯債務にしていたりするケースがあります。その場合、連帯保証人を変更しない限り、離婚して夫婦ではなくなったとしても、連帯保証人としての債務は残ります。そのため、ローンの名義人が会社を辞めたり働けなくなって収入が減ったりした場合は、連帯保証人に請求が来ることになるので、留意しておいたほうが良いでしょう。
5、まとめ
住宅ローンを完済していれば、離婚するときに売却して売却益を2人で折半しても、どちらかがそのまま住み続けても特に問題はありません。しかし、住宅ローンが残っていると、ローンの種類や組み方によっては困難が生じることがあります。
ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスでは、離婚に際して住宅ローンの残っている方のご相談を受け付けております。不動産問題の経験豊富な弁護士が、どのようなローンを組まれているかをお聞きして、最適な対処方法についてアドバイスいたします。離婚時に住宅ローンをどうすべきかでお困りの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
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