離婚協議が進まない! 弁護士が教える法的な対応策とは?
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横浜市の公表している『横浜市統計書(第2章 人口)』の月別離婚件数によると、令和元年の同市内の離婚件数は6004件でした。横浜市でも多くの夫婦が離婚を選択していることがわかります。
しかし、配偶者と離婚したいと思っていても、協議が一向に進まないこともあるでしょう。離婚は、夫婦がお互いの利害を主張しあい着地点を探していく、大変な手続きです。
なかなか進まない離婚協議には、法的にどのように対応すればよいか、ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士が解説します。
1、なぜ離婚協議が進まない?
離婚協議とは、夫婦の話し合いにより離婚することに合意し、財産分与や親権などもろもろの条件についても決定する手続きです。しかし、夫婦ふたりの話し合いとなるため決着がつかず、協議が進まなくなってしまうことも珍しくありません。
離婚協議が進まない理由として、主に以下のようなケースがあります。
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(1)一方が離婚を拒否している
「配偶者とやり直したいから離婚したくない」、「離婚して相手だけ幸せになるのが許せない」など、感情的な理由により離婚を拒否されるケースがあります。
特に不倫などの不貞行為をした有責配偶者から離婚を提案した場合は、不倫相手と再婚させたくない、離婚して自由になるのが許せないという理由で、なかなか離婚の合意に至らないということもあります。
また、不貞行為をした相手に離婚を迫った場合でも、不貞行為はあくまでも遊びであり家庭を壊すつもりはなかったなどの理由で、離婚を拒否してくるケースもあります。第三者である弁護士に介入してもらい、客観的視点から問題点を整理してもらうのも有効です。 -
(2)お互いが親権を主張している
離婚届には親権者を記載する欄が設けられており、空欄のまま提出しても受理されません。親権者を指定しなければ、離婚をすることができないのが法律上のルールです。
そのため、お互いが親権を強く主張している場合には、離婚協議が難航する可能性が高くなります。親権者が合意により決められない場合は、離婚調停、離婚裁判で親権者を決めることになります。 -
(3)離婚後の生活が不安
夫婦の収入に偏りがあり、どちらか一方の経済力に頼って生活していた場合には、生活が困窮するという理由で、一方が離婚に応じないことがあるでしょう。特に幼い子どもがいる夫婦の場合は、片方が子育てに専念するために仕事を退職したりセーブしたりしていることも少なくありません。
すでに夫婦の愛情は冷めていたとしても、子どもが独り立ちするまでの間は離婚をしたくないと思う人もいます。この場合は相手の経済的な不安を解消することが、離婚への近道となるでしょう。 -
(4)金銭条件で折り合いがつかない
離婚手続きでは、養育費、婚姻費用、慰謝料、財産分与、住宅ローンなどさまざまなお金の問題について話し合いをしなければなりません。その際、お互いの利害がぶつかり合って話し合いが進まない場合があります。
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(5)話し合いが面倒くさい
すでに愛情は冷めているけれど、生活面で特に不満がなく平穏に暮らせているので、離婚して人生を大きく変えていくことが面倒くさく、のらりくらりと話し合いかわされてしまうケースもあります。
この場合は、離婚を望む方が忍耐強く話し合いを進めていく覚悟が必要です。弁護士を介すことで、離婚に対する真剣な姿勢が相手に伝わることもあるため、弁護士への相談もひとつの手だてでしょう。
2、相手が離婚したくない場合でも離婚できる?
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(1)法定離婚事由があれば離婚できる
相手が離婚に応じてくれない場合でも、民法770条に定められている以下の法定離婚事由を満たしており、事実を客観的に証明できれば、裁判手続きにより強制的に離婚できる可能性があります。
法定離婚事由とは、以下の5つです。- ① 配偶者の不貞行為
- ② 配偶者からの悪意の遺棄
- ③ 配偶者の生死が3年以上不明
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
それぞれの事由について、以下で詳しく見ていきましょう。 -
(2)不貞行為とは
①の不貞行為とは、お互いの合意の上で肉体関係があることを指します。そのため、二人きりで食事した、手をつないでデートした、LINEやメール、アプリなどでやり取りしていただけでは不貞行為として認められない可能性があります。
不貞行為の証拠としては、ラブホテルに出入りする瞬間の画像や、相手の部屋に頻繁に出入りしている画像などが有効です。また、LINEなどのやりとりや、ホテルのレシートなど細かなやりとりも残しておき、弁護士に相談する際には持参するとよいでしょう。
なお、不貞行為発覚時にすでに夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料の請求が認められない可能性があります。この場合、不貞行為によって夫婦関係が壊れた訳ではないからです。ただし、夫婦関係の破綻は簡単に認められるものではありません。 -
(3)悪意の遺棄とは
②の悪意の遺棄とは、夫婦がお互いの義務を果たさず放棄していることです。
たとえば、働かない、働いても家にお金を入れない、不倫相手の家に住み帰ってこない、専業主婦なのに家事・育児を放棄している、共働きなのに家事・育児を一方的に押し付けている、などの状況が挙げられます。
なお、病気・ケガ・単身赴任などやむを得ない理由により夫婦の義務が履行できない場合は除外されています。 -
(4)法定離婚事由の対象となる精神病
④の精神病とは、躁うつ病、統合失調症など限られた重大な精神疾患に限定されます。アルコール依存症、ヒステリー、うつ病、ノイローゼなどは“回復の見込みのない強度の精神病”としては認められないとされています。
しかしこれらの病気であっても総合的な事情を考慮して、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として認められることもあります。相手の精神病が離婚事由と認められるのか迷ったら弁護士に相談してみましょう。 -
(5)婚姻生活の継続が難しい重大な事由とは
①~④に当てはまらないものの、婚姻生活の継続が難しいと考えられるケースがあります。具体的にはDV・モラハラ・性格の不一致・親族との不和・長期間の別居・浪費・犯罪・異常性癖などが挙げられるでしょう。
いずれも、離婚が認められるためには、上記の事実があったことを主張するだけでなく、客観的な証拠を提示することが求められます。
3、離婚協議が進まないときの対策
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(1)別居を提案する
物理的距離を置いた上で話し合った方が、お互いに冷静さを保ちながら協議を進められる可能性があります。また、3年~5年以上の別居の事実があると、裁判で離婚が認められる可能性が高まります。
どちらかが実家に帰るのもひとつの方法ですが、新たにアパート暮らしなどを始める際には生活費として婚姻費用分担請求をすることができます(民法第760条)。
婚姻費用とは、夫婦が通常の生活を同等に送るための費用です。離婚に向けて話し合っている夫婦であっても、正式に離婚届を提出するまでの間は夫婦としてお互いに扶助義務があるため、収入が高い方が低い方の生活費を一部負担しなければならないのです(民法第752条)。
なお親権を希望している場合は、実際に子どもを育てているほうが親権者として有利になるため(現状維持の原則)、その点も考慮が必要です。 -
(2)法定離婚事由の証拠を用意する
相手に法定離婚事由がある場合には、その証拠をしっかりと収集しておくことも大切です。法定離婚事由の証拠があれば、相手が離婚を拒否していたとしても、自分に有利に離婚手続きが進められる可能性が高まります。
なにが有効な証拠なのかわからない、どうやって収集するのかわからない等で悩んだら、弁護士に相談してみましょう。弁護士はどのような物が証拠として有効なのか熟知しているため、適切なアドバイスが受けられるでしょう。 -
(3)弁護士を交えて協議する
離婚協議がなかなか進まない場合には、弁護士に間に入って交渉してもらうことも検討しましょう。
弁護士は「何は絶対に譲れないのか、何なら妥協できるのか」といったお互いの優先順位を明確にし、建設的な協議をサポートしてくれます。離婚トラブルの実績がある弁護士に相談することで、精神的ストレスが軽減されることも、大きなメリットだと言えるでしょう。
また相手のモラハラ・DVなどに悩んでいる場合は、夫婦の話し合いを避け、交渉を弁護士に一任することも可能です。離婚の話し合いの中でどう喝された、暴言を吐かれたなど、恐怖を感じたときには、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
なお、協議が成立した際に、離婚協議書や公正証書の作成まで一任できることも、弁護士に依頼するメリットです。離婚協議書や公正証書は自分で作成することも可能ですが、後々不利になりかねない記載をしてしまったり、必要事項が漏れてしまう恐れがあります。弁護士であれば、後々の生活まで見越した上で、文書作成を行います。 -
(4)離婚調停・離婚裁判を検討する
協議のみで決着しなかった場合は、家庭裁判所での離婚調停、離婚裁判の順に進んでいくことになります。
離婚調停とは、男女の離婚調停委員2名と裁判官が夫婦の話し合いをサポートする手続きです。夫婦は交互に部屋に入り、調停委員に対して言い分を述べていきます。原則として、直接顔を合わせることはありません。調停委員が夫婦それぞれの言い分を間接的に伝え、場合によっては説得することもあります。
調停が行われるのは、約1~1.5か月に1回のペース。期間はケース・バイ・ケースですが、半年ぐらいが目安です。
調停が不成立となったら、最終手段として離婚裁判で争うことになります。裁判は約1~2年と長期間に及ぶこともあります。いずれも自力で行うには難しく労力がかかるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
4、まとめ
離婚協議が進まない理由はさまざまですが、法定離婚事由に該当すれば、離婚が認められる可能性があります。離婚協議は、夫婦ふたりの話し合いで進めるケースもすくなくありませんが、協議の段階から弁護士に依頼すれば、法律的な問題点を整理してもらうことができ、スムーズに進む可能性があります。
離婚協議が進まずにお悩みの際は、離婚トラブルの実績が豊富な横浜オフィスの弁護士までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています