【後編】離職票が届かないのは違法? 対処方法について弁護士が解説
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前編では、離職票の必要性から発行手続きなどを中心に説明しました。失業給付などを行うときは、ハローワークで手続きが行われます。横浜市内には中区、港北区、戸塚区、金沢区にありますので、最寄りのハローワークの窓口へ足を運んでください。
後半は、前回に引き続き、離職票が届かないときの対処方法から、記載された退職理由に納得がいかないときの対応方法について、横浜オフィスの弁護士が解説します。
4、会社から離職票が届かない理由は?
会社から離職票の交付がない場合でも、それが直ちに離職票の交付拒絶という違法行為であるとはかぎりません。以下のような理由で離職票の到着が遅れていることもあり得ますので、会社に確認してください。
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(1)会社の事務ミス
会社が作成した離職証明書にハローワークの指摘により不備が見つかったことから、離職証明書を再作成しているために離職票の発行が遅れていることが考えられます。また、単純に会社がハローワークへの手続きそのものや、社会保険労務士事務所など労務関連業務の委託先への連絡を失念していることもあり得ます。
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(2)ハローワークの繁忙期
例年、4月から5月にかけてハローワークは繁忙期となります。通常、ハローワークは窓口優先で事務処理を行っています。したがって繁忙期に離職証明書のやり取りを行うと、ハローワークから会社へ離職票の交付が遅れることがあります。
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(3)給料の締め日のタイミング
会社が離職証明書を作成するためには、事前に給与の計算が完了していることが必要です。したがって、給与の締め日のタイミングによっては会社による離職証明書の作成が1ヶ月弱遅れてしまうことがあります。
5、離職票が届かないときの対処方法について
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(1)失業給付の仮手続きを行う
繰り返しになりますが、失業給付を受けるためには離職票が必要です。しかし、初回の申請手続きは離職票がなくても可能であり、これを「仮手続き」といいます。この仮手続きにより、離職票の到着を待ってから手続きを開始するよりも早く失業給付の受給が可能となる場合があります。
仮手続きができるのは、退職した日の翌日から12日以降です。なお、仮手続きを行っても実際に失業給付を受ける際は離職票が必要であること、仮手続きを受け付けていないハローワークがあることにご注意ください。 -
(2)ハローワークに相談する
ハローワークに相談すると、担当者が会社に対して事実確認や離職証明書の提出などの督促を行います。これにより会社が離職票交付に向けた手続きに着手することが期待できます。
しかし、ハローワークは後述する労働基準監督署と異なり会社に対して罰則を適用する権限がないため、悪質な会社であればハローワークからの督促を無視する可能性があります。 -
(3)労働基準監督署に相談する
労働基準監督署とは、厚生労働省管轄の機関です。その役割は、会社や経営者が労働基準関係法令を遵守しているか監督することです。
労働基準監督署の労働基準関係法令遵守に関する監督権限は非常に強いものです。労働基準監督署長および労働基準監督官は司法警察官として労働基準関係法令の違反などが疑われる企業や経営者に対して捜査を行う権限のほか、明確に法令違反が認められ悪質と判断される会社や経営者に対し逮捕、送検、告訴などを行う権限を有しています。
もし、会社の離職票の不交付について客観的な法令違反が認められる場合は、積極的な対応が期待できます。 -
(4)弁護士に相談する
もし会社が不当に離職票の交付を拒否している場合は、労働問題全般について会社との交渉や裁判などの実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
離職票不交付にかぎらず、各種の法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として会社と交渉などを行い解決を目指した行動が期待できます。なお、労働問題は社会保険労務士も詳しいのですが、あなたの法的な代理人となる職権を持つのは弁護士だけです。
6、離職票の離職理由に納得がいかない場合は?
「離職票-2」における「離職理由」の記載内容は、失業給付の基本手当の支給期間に影響をおよぼします。たとえば、自己都合退職と会社都合退職では以下のように支給期間が大きく異なるのです。
<自己都合退職の支給期間>
•雇用保険加入期間が10年未満…90日
•同10年以上20年未満…120日
•同20年以上…150日
<会社都合退職(特定受給資格者)の支給期間>
•雇用保険加入期間が1年未満…65歳未満まで一律90日
•同1年以上5年未満の人
…30歳未満は90日、30歳以上35歳未満は120日または90日、35歳以上45歳未満は150日または90日、45歳以上60歳未満は180日、60歳以上65歳未満は150日
•同5年以上10年未満の人
…30歳未満は120日、30歳以上45歳未満は180日、45歳以上60歳未満は240日、60歳以上65歳未満は180日
•同10年以上20年未満の人
…30歳未満は180日、30歳以上35歳未満は210日、35歳以上45歳未満は240日、45歳以上60歳未満は270日、60歳以上65歳未満は270日
•20年以上の人
…30歳以上35歳未満は240日、35歳以上45歳未満は270日、45歳以上60歳未満は330日、60歳以上65歳未満は240日
ところが、会社都合退職であったのにもかかわらず離職票には自己都合退職と記載されている場合もあります。会社の単純なヒューマンエラーや退職時にトラブルがあったなどの理由によってそのような事態になることは少なくありません。
さらに悪質なケースとして、実質的な整理解雇であったのにもかかわらず自己都合退職とされるケースもあります。たとえば会社が整理解雇を行うために必要な要件の充足を怠っていたことを露見することを防ぐためなどが該当するでしょう。
事実と異なる退職理由であった場合は、離職票の本人判断欄の「異議あり」にマル印を付け会社に訂正を要求します。もし会社が不当に応じないようであれば、ハローワークや労働基準監督署、さらには弁護士に相談するとよいでしょう。
7、まとめ
失業給付の有効期限は、退職した日の翌日から原則として1年間とされています。失業給付において離職票の提出は必須です。したがって、届かない場合は早急に解決へ向けて行動を起こす必要があります。
ただ、離職票に関係する各種法令や各種制度は複雑です。特に会社との交渉は難航することも予想されます。事態の長期化を避けるためには、弁護士のような専門家に解決を委ねることが得策といえるでしょう。まずは、労働問題チームを擁し、労働問題に対応した経験が豊富なベリーベスト法律事務所 横浜オフィスの弁護士でも相談をお待ちしています。
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