相続のタイミングで遺言書を発見! 遺族がすべき手続きとは?

2018年10月29日
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相続のタイミングで遺言書を発見! 遺族がすべき手続きとは?

両親や親族が亡くなると、悲しみに暮れる間もなく葬儀が執り行われます。そして、息をつく暇もなく、相続権がある親族間で相続問題の話し合いがはじまることでしょう。

生前に遺言書などを書き残していることが、親族間でも明らかになっているケースでは、比較的スムーズに相続が行われることもあります。その一方で、急な不幸に見舞われたケースでは、そもそも遺言書が残されていなかったり、相続手続きを進める途中で遺言書が見つかったりすることもあり、混乱してしまうことがありえます。

もし、思いがけず遺言書が見つかった場合、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。親族の最期の意思ともいわれる「遺言書」が見つかったケースにおける、遺族がすべき相続手続きについて説明します。

1、相続における遺言書がもつ効力とは

最初に、故人が残していた遺言書の効力について知っておきましょう。

相続の際、遺産があるケースにおいては、民法第5編「相続」に規定されている「法定相続(ほうていそうぞく)」について気にされる方が多いかもしれません。たしかに「法定相続」とは、相続する権利がある方の範囲や順番が定められたものです。

しかし、故人の意志を文書化した「遺言書」の内容は、「もっとも優先されるべきは故人の意志である」という考えに基づき、法定相続よりも優先されることになります。つまり、親族が亡くなった時点で、最初に探さねばならないものが「遺言書」なのです。

遺産相続手続きの最中に遺言書が発見されれば、たとえ法律に従って相続手続きを進めていたとしても最初からやり直しになってしまいます。故人から生前に遺言書を預かっていなかったとしても、遺品の中などに保管されているケースが多々あります。必ず確認するようにしましょう。

ただし、法的に効力がある「遺言書」には、法律で決められた書式があります。どんな形であっても効力があるわけではありません。定められた書式で書かれた遺言書かどうかも確認しておく必要があるでしょう。誰でも作成が可能な、ただのメモ書きなどでは、遺言書として認められないというわけです。

法律で定められている形式で作成された遺言書へ記載されることによって、効力を発揮する内容は次の3点です。

●財産の分与に関すること
財産の内容、誰に何を相続させるのかなど、財産分与の要となる部分を、遺言書の内容に基づいて指定されます。不動産、預貯金をはじめ、生命保険の相続人、さらには財産の処分などの内容も該当します。

●身分に関すること
婚姻関係にない相手との子どもの認知、未成年後見人の指定など、身分の届け出を依頼する内容も効力を発揮します。ただし、「私の死をもって妻とは離婚する」など、結婚・離婚に関する指定に対しては、一切の効力はありません。

●遺言の執行に関すること
遺言書をもとに相続手続きを行う「遺言執行者」の指定ができます。

なお、相続においては「遺留分」と呼ばれる制度があります。これは遺言書に記載されていなくても、法定相続人に対して一定の割合の相続を保証する制度です。つまり、遺言書に記載されていても全財産の一部は「遺留分」として法定相続人に相続されます。「遺留分」の相続について遺言書で拒否をする記載があっても効力をもつことはありません。

2、遺言書の種類と相続に必要な手続き

民法上、遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、危急時遺言、隔絶地遺言の5種類あります。しかしながら、一般家庭で見つかる遺言書のほとんどが、「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のいずれかでしょう。

さらに、遺言書の扱いについても民法で定められています。ただ中身を見るだけでも、必要な手続きを経たうえで開封しなければ、少額の過料が課せられることもありえます。

そこで次は、メジャーといえる遺言書である、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」を発見した際、必要となる手続きと注意点を解説します。

  1. (1)自筆証書遺言

    故人がすべて自署で作成しており、日付や署名などが記載されている遺言書です。その名のとおり、自筆でなければ効力は発揮されません。

    もし故人の「自筆証書遺言」を発見した場合は、いきなり開封しないようにしてください。発見された遺言書は、未開封のまま家庭裁判所に提出します。そして、家庭裁判所から指定された日に裁判所に出向き、民法1004条に基づいた「検認(けんにん)」の立ち合いを行う必要があります。

    「検認」は、遺言書の改ざんなどのリスクを防ぐため、裁判所が行うことを民法で定めています。もし、検認が行われずに開封してしまったとしても、遺言書の内容が無効になるわけではありません。しかし、無断開封は「5万円以下の過料が課せられる」と民法第1005条に規定されています。

    つまり、開封されたとしても相続の権利を失うことはありません。逆に、あなたが勝手に開封したとしても、新たな権利を得ることもないうえ、過料が課せられる可能性があるということです。もし、未開封の「自筆証書遺言」を発見したのであれば、まずは家庭裁判所に提出しなければなりません。

  2. (2)公正証書遺言

    公正証書遺言は、故人が生前に公証人に内容を伝え、公証人が公正証書として作成し、厳重に保管してもらえる方法です。身体的な問題などで自筆での作成が難しい場合や、改ざんが難しい確実な方法で遺言書を作成したい場合に利用することができます。

    つまり、遺言書そのものが公証人役場で保管されているため、遺品の中から発見されることはありません。「生前、遺言書を作ったと聞いていたのに遺言書が見つからない」というケースでは、公正証書遺言にしている可能性もあります。まずは、近隣の公証人役場へ問い合わせて、公正証書遺言が保管されていないか確認する必要があるでしょう。

    なお、公証人とは法務大臣が任命した公務員であり、遺言書をはじめとするさまざまな公的文書を作成することができます。公証人が作成した遺言は、すでに公的な確認が済んでいる状態であるため、「自筆証書遺言」のように家庭裁判所で検認する必要はありません。しかし、公証人役場で写しをもらったら、その内容に従って相続の手続きを行ってください。

    前述したとおり、主な遺言書の他にも「秘密証書遺言」と呼ばれる遺言書もあります。遺言の内容を生前、秘密にする目的で自ら作成し、公証人に遺言書としての証明のみを受けて自らが保管する方法です。「公正証書遺言」は、その内容を公証人という第三者にも伝え、預けておくものに対し、「秘密証書遺言」は自己保管のため、紛失のリスクがあります。また、法で定められている書式が守られていないため無効となる遺言書だったというケースもあります。

    見つかった遺言書がどれにあたるのか不明であれば、いきなり開封はしないようにして、まずは弁護士などの専門家に意見を求めることをおすすめします。

3、遺言書が見つかった場合の相続手続きの手順

遺言書が見つかり、前述の内容に沿って開封したのちの手続きについて紹介します。

●ステップ1
遺言書の内容確認

  • 自筆証書遺言、秘密証書遺言が発見されたときは、家庭裁判所での「検認」手続きを行い、内容を確認する。
  • 公正証書遺言→公証人役場へ赴き、写しをもらって内容を確認する。「検認」は不要。


●ステップ2
相続財産および債務の確認

遺言書を作成した時点から、相続財産および債務に変更がないかを確認します。


●ステップ3
遺言を執行する

遺言書に「遺言執行者」が指定されている場合は、指定された方が執り行います。指定がない場合は法定相続人全員が、遺言書の執行をします。


●ステップ4
遺留分減殺請求

遺留分を侵害された方は、侵害した相手に対して「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」を行うことができます。ただし、請求する権利は、請求が可能であることを知ったときから1年までで、それを超えると時効を迎えてしまいます。また、請求できることを知らなかったとしても、相続が開始されてから10年経過してしまうと、時効を迎えてしまうので注意が必要です。


●ステップ5
所得税などの申告および納税

故人が所得税の確定申告義務があった場合に限り、所得税などの申告と納付が必要となります。期限は相続の開始を知った翌日から4ヶ月と定められています。相続そのものに影響することなので、正しく把握するためにも専門家と相談しながら進めた方がよいでしょう。


●ステップ6
相続税の申告および納付

相続がスムーズに終わり、相続税が発生する場合は、申告・納付を行います。期限は、相続の開始を知った翌日から10ヶ月以内と定められています。具体的な申告・納付方法がわからない場合は、最寄りの税務署や税理士に相談することをおすすめします。

4、まとめ

相続の場面で登場する「遺言書」の効力と、相続の大まかな流れについて紹介しました。

遺言書には有効期限はありません。そのため、定期的に遺言の内容を更新している方が亡くなったケースでは、複数枚の遺言書が見つかることがあります。その場合は、当然ながら、もっとも新しい日付のものが効力をもつことになります。

もし、遺族の間で、遺言書の内容にどうしても納得がいかないというケースがあれば、話し合いのうえで遺産分割協議書を作成するという方法もあります。もちろん、その場合は相続を行使するには全員の実印が必要です。誰かが納得していない状態で進めることはできず、状況によっては、泥沼のような相続トラブルが引き起こされてしまうこともありえます。

しかし、親族であれば今後の付き合いなども考えて円満に進めたいものです。遺言書が見つかり、遺言に従って相続をスムーズに進めたいケースはもちろん、トラブルに発展してしまいそうな場合はぜひ弁護士に相談してみましょう。

特に横浜市内での相続では、土地や不動産などの権利相続などで、難しい場面に遭遇しがちです。ベリーベスト法律事務所 横浜オフィスでは、相続問題に対応した経験が豊富な弁護士が適切なアドバイスを行います。お気軽にご相談ください。

ご注意ください

「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています