【前編】会社が残業代を払わない! 違法の可能性があるケースと請求方法を解説

2019年04月11日
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【前編】会社が残業代を払わない! 違法の可能性があるケースと請求方法を解説

神奈川労働局が公表している「労働基準関係法令違反に係る公表事案」によると、平成31年3月現在、労働基準関係法に違反している企業14社が実名で公表されています。内、横浜市の事業所では違法な時間外労働を行わせたものとして平成31年1月11日に送検されたことも記載されていました。

労働に関する法令違反の中でも、特に身近なものは残業代の未払いでしょう。雇用者側、労働者側、双方に言い分はあるかもしれませんが、時間外労働を行った場合、労働者は会社に対して残業代を請求する権利があります。今回は、残業代の未払いが違法となるケースと請求方法について横浜オフィスの弁護士が解説します。



1、残業代が未払いになりやすいケースとは

  1. (1)あなたは大丈夫? 未払い残業代が発生しやすいケース一覧

    残業代を支払わない会社はさまざまな「理由」をあげて、残業代を支払う必要がないと主張します。まずは会社が残業代未払いは正当であると主張してくることが多い働き方や状況を解説します。

    ●管理職
    「管理職は残業代を請求できない」と会社側が主張することは少なくありません。そのため多くの管理職者の残業代が未払いになっているようです。しかし、労働基準法を確認すると、「管理職者」ではなく、「管理監督者」には残業代を支払う必要がないと定めています。

    労働基準法が定める「管理監督者」とは、経営者側として働きそれ相応の待遇を得ていて、出勤時間や退社時間に裁量がある立場のことを指します。つまり、課長や係長、場合によっては部長クラス、雇われ店長であっても管理監督者に該当しないケースのほうが多いと考えられるのです。

    現在、管理監督者の定義に当てはまらないのに「管理職だから」という理由で残業代が未払いになっている方は、残業代を請求できる可能性が高いでしょう。

    ●フレックスタイム制
    フレックスタイム制は残業代が支払われないという認識があるようです。しかし、週単位で法定労働時間の40時間を超えたら残業代を支払わなければなりません。フレックスタイム制を理由に残業代が支払われていない場合は、総労働時間を計算した上で法定労働時間を超過していれば残業代を請求することができます。

    ●裁量労働制
    裁量労働制が採用されている場合、「みなし時間」が定められているので、その時間より短時間しか働かなかった場合も減給されませんが、超過した場合も残業代は支払われません。

    ただし、裁量労働制が認められる職種は非常に限られています。さらに労使協定を結ぶなどの条件が規定されていますので、そもそも裁量労働制が成立していなければ、法定労働時間を超えた分は残業代を請求することができます。

    また実際の労働時間と「みなし時間」がかけ離れている場合は、労使間交渉でみなし時間をみ直してもらい超過分の残業代を支払ってもらうよう働きかける必要があります。

    ●固定残業代が含まれている場合(みなし残業代制度)
    固定残業代とはみなし残業代制度とも呼ばれ、月給の中にあらかじめ一定の残業代が含まれているという制度です。みなし残業代制度が採用されている場合、給与に含まれている時間分の残業代は請求することができません。しかし、あらかじめ規定してある残業時間を超えたら残業代を請求することができます。

    そもそも、みなし残業代制度を採用するためには、就業規則や雇用契約書などに「○○時間の残業代を含む」などと明記しなければなりません、したがって、就業規則などに記載がない場合はみなし残業代制度とはいえず、残業代を全額請求することも可能です。

    ●年俸制
    年俸制とは、給与を1年単位で決めているだけの制度で、月給制と差はありません。したがって、残業代は支払われます。契約の中で「年俸に○○時間分の残業代を含む」などのみなし残業代制度が規定されている場合は、みなし時間を超えた分の残業代は請求できます。

    ●歩合制
    歩合制は成果によって給与が支払われる仕組みです。しかし、残業代を支払わなくてよいという規定はありませんので、法定労働時間を超えて働いた分は残業代を請求することができます。

    ●変形労働時間制
    変形労働時間制とは、定めた期間内の中で労働時間を計算し、その期間内で法定労働時間を超えていなければ残業代を支払う必要がないという制度です。

    通常、労働基準法では「1日8時間、週に40時間」を超えた場合は残業代を支払わなければならないと規定します。しかし、変形労働時間制が「1ヶ月」の場合は1ヶ月の総労働時間が法定労働時間を超えていなければ、残業代を支払う必要がないと考えられるのです。ただし、超過していれば残業代を支払う義務がありますので、残業代請求が可能です。

    ●10分単位で残業代を切り捨てる
    労働基準法では、1ヶ月通算での残業時間について30分未満の切り捨てと30分以上の切り上げを認めています。しかし、1日単位では1分たりとも切り捨てることは認めていませんので、10分や15分どころか1分、5分でも残業代を切り捨てると違法行為になります。したがって、切り捨てられた残業代は請求可能です。

  2. (2)就業規則で規定されていても労働基準法に違反していれば無効

    就業規則や雇用契約書で残業代を支払わないことなどが記載されていたとしても、それが、「労働基準法」などの法律に違反していれば、会社の規定は無効になります。

    就業規則などの会社が定めたルールにとらわれず、まずは自分の残業代が支払われない状態が労働基準法で違法かどうかを確認しましょう。判断が難しいときは弁護士に相談することをおすすめします。


    後編では、残業代を支払わない会社が受ける罰則や、実際に残業代請求を行う方法について解説します。>後編はこちら

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています